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2013年1月31日木曜日

『おいしい』の仕組みを考える Ⅲ

☆美味しさの定義(後)

前回の(中)において、

美味しさの定義(1)では『料理(食材)のもつ甘さ(旨味)のバランスが最も取れている状態』

と取り決めました。(#^.^#)

この甘さ(旨味)のバランスが取れている状態は点ではなく、間隔として存在します。これは個人においての嗜好の振れ幅なのですが、この甘さのバランスが取れる一定の区間を便宜上『スイート・スポット』(*1)と名付けます。(以後、”SS” と表記します)

*1 やはりこの言葉も”甘い”のです ”サワー・スポット”なんて言いませんね


そうすると次にこういった問題が現れます。
( ̄Д ̄)ノ

★2つ以上の異なる料理で尚且つ、スイート・スポットの取れたもの同士の優劣はつけられるか?

・・・という命題です。

例えば ・・・

塩をかけて甘さが完璧に引き出された老舗の豆腐
    VS
秘伝の甘辛ソースをかけて旨みを最大限に体現したお好み焼き

という対決です。

「そんなもの、好みの問題やろう!!」と言ってしまえばそれまでです・・・

ここは無理やりにでもリクツで優劣をつけないと、本題のお酒についての説明が出来なくなるので、次のように考えて決着を付けます。

1 甘味の種類はひとつ(複数の食材による”異なった甘味の数”は本来なら多大に影響するはずですが、今回は話を簡略化させたいので、甘味は常に『1つだけ』とします)

2 甘味以外の味覚(酸味、塩味、苦味)&刺激という辛さをそれぞれ『1』と数え、その総数を”N”(*2)とします。

*2 小文字が使いにくいので大文字表記に・・・


わざわざ書くまでもない実に簡単な計算式ですが・・・
(T_T)

豆腐{SS+1}  ソースのお好み焼き{SS+N(N>1)}

要するに”味の成分の多い方の勝ち”ということ設定します。



★味の瞬発力と持続力

本来、Nの数は優劣ではなく味の特性だと考えています。
(-。-)y-゜゜゜

SSが取れている場合、Nが少数であるほどその食物を口に含んだ時の味は鮮烈でインパクトが強く、味覚の感度は跳ね上がります。ただし、構成する味覚の種類が少ないぶん、持続はしませんし、食べる総量も飽きが早く、少量で満足します。

逆にN数が多くなるにつれ、お互いの個性をかき消し合い、最初のインパクトは強くはありませんが、味覚構成が複雑なため、余韻が長く続き、飽きがくるのを遅くする作用があります。

例えば”瞬発力型の味”はお刺身であり、”持続力型の味”はブイヤベースで想像してみてください。



★相性の良さも問題です!

もう一点、重要なことがあります。
(;一_一)

もし二つ以上の食材を掛け合わせて調理をする場合、お互いに同じ味覚成分を持っているもの同士の方が、より相性が良く、美味しく完成します。

例えば・・・

a (甘・酸・辛)+(甘・酸)

b (甘・酸・辛)+(甘・苦)

だと、bの方がより共通する味覚の数が多いので相性が良いといえます。

これを今回、便宜上、『和合性(*3)が高い、和合性がある』と言うことにします。

(*3)本来は生物学用語ですがここでは無関係です。造語として捉えてください



★刺激は『美味しい』を凌駕する・・・ときもある・・・

料理において、辛さ(刺激)は味覚ではない、ということは有名な話ですが、Barにおいては『おいしい仕組み』を作るための『甘味』と同等なくらい重要な要素として捉えています。
(ー_ー)!!

というのは、お酒に必ず含まれているアルコール(度数)、これは他のどの味覚でもなく、”刺激”に他ならないからです。特にカクテルの選択や制作においては、アルコール度数の調整、考慮は最重要課題であって、アルコール度数の極端に弱いお酒などをベースに使う場合であっても、アルコール外の副材料で代替の刺激を補っています。例えばそれは炭酸ガスであったり、柑橘であったり、スパイスだったりします。



*ー まとめ ー*

美味しさの定義(ここからは酒類に特化します)

(1)スイート・スポットに当てる(お酒のもつ甘さ(旨味)のバランスが最も取れている状態)

(2)味の複雑性(味覚の要素が多いほど飽きがこない)

今回はお酒の評価をするための定義付けなのでより複雑な味の方を上に考えます。


(3)和合性が高い(ベースになるお酒と同じ味覚成分をふくんでいる副材料との相性)

(4)刺激(甘味に見合った酒のレゾンデートルを損なわないアルコール・バランス)




・・・ ('A`) ようやく前説が終わりました。

次回から本題に向かいます。


『おいしいの仕組みを考える Ⅳ 』は、

~作るのが最も難しいカクテルはなんだろう?~になるはず・・・です。



追伸 このブログにおける記載はあくまでも個人的主観によるものであることをご了承ください。

とんでもなく間違っている可能性も否定できませんので・・・

        m(_ _)m








2013年1月29日火曜日

『おいしい』の仕組みを考える Ⅱ

☆美味しさの定義(中)

こんな途中から何ですが、今回の内容は全て個人的見解によるもので、なんら客観性や正当性が証明されている訳ではないことを明記しておきますので、宜しくご了承の程、お願い致します。
m(_ _)m

では前回の話に戻ります。

作る人が違う、食材も違う、調理方法も違う。それでも”ある条件を満たし、ある状態になっている”=『美味しい』となる共通定義を設定しようと思います。

こういう場合、よりシンプルな要素の方が分かりやすい筈なので、”美味しい定義”には甘味、酸味、塩味、苦味、旨味、それから辛さ(刺激)を使って、前説の美味しさの定義付けだけでなく、本編のお酒に関する謎解きもしていきたいと思います。ただ”旨味”だけは殆んどないものとして捉えています。というのは、”よくわからない”と言うことと、メインはお酒の話であって、特に蒸留酒において”旨味”は無視して差し支えないと思うからです。(*1)よって『甘味(旨味)』的な概念で捉えて頂くと助かります。

(*1 ラフロイグやラガヴーリンには確かに旨味を感じますが・・・)



★”いい塩梅”とは言うけれど・・・

さて、どこぞのスーパーで鮭の切り身をひと切れ、買ってきます。

焼いて食べるとしますね。
使っていい調味料は塩だけというルールにして、何人かで『焼き鮭を美味しく料理する』というゲームをしたとします。

あまりに焼き方が下手すぎて身がボロボロになるような例外は別とすれば、焼きあがる鮭のパターンは大別して3通りだけになります。即ち、

1 塩が足りなくて味気ない鮭

2 塩加減がちょうどよい、美味しい鮭

3 塩が多すぎて塩辛い鮭

・・・この3通りです。

はい、言いたいことはわかりますよ、② の美味しい鮭の塩加減は個人の好みによって千差万別であり、すべての人に共通して②の状態になっていることはありえない、ということですよね?

その通りです。ただここで言いたいのは、たとえそれが何人いて、すべての人の味覚に個人差があるとしても、”必ずそれぞれにこの3パターンが存在して、それぞれに違う味付けだとしても、必ず何処かに②の状態が存在する”という事実です。

そしてその状態が”美味しい”のはずなのですが、ちょっとお待ちを!!

だからといって、”塩加減”が”美味しい”を決める訳ではないと思っています。何故なら塩を使わない食材、調理法もあり、とくにスイーツ系のものに説明がつかなくなってしまうからです。苺に塩をかけても美味しくはならないですから。


★(殆んど全ての)食材が内包している”美味しい”もの

・・・それは甘味(旨味)です。

例を挙げましょう。

ご飯、豆腐、水、これらが美味しい時、「甘くて美味しい」といいます。
特に水は『甘露』という言葉もありますね。

甘辛い、甘酸っぱい、甘塩っぱいという言葉はよく使いますが、苦酸っぱいとか、塩苦い、苦酸っぱいとは言いません。(もしあったとしても極めて少数)

アルコール度数が96度もあるスピリタスというウオッカでさえ、それを美味しいと飲む人は決まって「甘い」といいます。

味を褒めるのに使う言葉はこれ程に『甘味』が多く、つまり味のベースは常に甘味が主導権を握っているとは言えないでしょうか?

どんな料理でさえ、口の中で噛み続けると最後は必ず甘くなります!!
\(^o^)/



★甘いほど美味しい訳ではない・・・
  (ー_ー)!!

ただ、誤解されては困るのですが『甘い(より甘い程)』=『美味しい』と言う訳ではありません。そうなると羊羹の方がポテトチップスより美味しい・・・ということになりかねませんから。

1、食材には甘さ(旨味)が内包されている、もしくは既に露出している。いづれにせよ、『甘さ』をもっている。(ここでいう『甘さ』は旨味でもあるのですが専門家でない一般人が話すときは『甘味』=『旨味』で簡略化したほうが分かりやすいので、以後、その前提で『甘味』に旨味が含まれていることとします。

2、その食材を調理する目的は内包された、もしくは露出した”甘さ”を『引き出す』 『抑える』 『加える』 『薄める』などして、”もっともバランスの取れた甘さ(旨味)加減にコントロールする”ことにあります。(勿論、料理の目的はそれだけではありませんが)

3、千差万別する個人の味覚に対して、『最もバランス良く甘さ加減がコントロールされた状態』、これが”美味しい”ということです。そのバランスは個々に違うはずですが、より多くの支持を得たバランス点が『一般的に美味しい』ということになります。
(^。^)


羊羹は甘さを砂糖を”加えて”や”塩”で抑えたりしながら甘さを適度な状態にコントロールしているし、ポテトチップスは塩加減においてポテトや油などが内包する甘さを”引き出して”コントロールしています。


”焼き鮭”でも同じことです。
(^。^)y-.。o○

1 塩が足りなくて味気ない鮭
(塩の働きが少なすぎて、肉に内包されている甘さが引き出しきれていない状態)

2 塩加減がちょうどよい、美味しい鮭
(塩が過不足無く、ちょうど肉に内包されている甘さを全部引き出しきった状態)

3 塩が多すぎて塩辛い鮭
(塩が多すぎて、肉の甘さを引き出しきったあとも、余分に働いている状態)



よって美味しさの定義(1)は『料理(食材)のもつ甘さ(旨味)のバランスが最も取れている状態』とします。

異論、反論、山ほどあると思います。
・・・が、ここは黙ってグっと飲み込んで頂きたい。
m(_ _)m

これは本題(お酒の話)に移る前の前提条件なので、「取り敢えず今回だけは、そーゆー事にしといてやろう」という、温かい気持ちで宜しくお願いします。
(T_T)

あと・・・ですね、ご察しのいい方はお気づきだと思いますが、美味しさの定義(1)があるということは(2)もあります。
「まだ続くのかよ・・・」と。しかも前説が・・・
m(_ _)m

スイマセン。次の(2)で終わります。これを終えないことには本題の話に移れないもので・・・
(もう人に読んでもらうためではなく、自分のための”自由研究ノート”みたいになっていますが)


では次回、

『塩をかけて甘さを完璧に引き出した豆腐』
    VS
『秘伝の甘辛ソースをかけて旨みを最大限に引き出したお好み焼き』

この2者ともに100%のポテンシャルを引き出された異なる料理に対して、定義上、美味しさの優劣をつけることが出来るのか?! ・・・という内容です。






2013年1月28日月曜日

『おいしい』の仕組みを考える Ⅰ

☆美味しさの定義(前)

Barでのオーダーとかメニューとか、あとは・・・そう、カクテルブックとかその他諸々のお酒に関する本など。
一見するとごく普通でも、よく見るとちょっと不思議で興味深い幾つかの疑問があります。

その疑問というのは本を読んでも、ネットで検索しても答えは出てきません。どうもこれは自分で考えるしかなさそうだと思い、以前からそれをブログでまとめてみたいと考えていました。つまり今回、ここで書いていく内容は”正しい”かどうか分かりません。(笑) ただ個人的にはとても興味深いことであり、でも、もしかしたらとても馬鹿馬鹿しい話なのかもしれませんが・・・
(-_-;)

もしお時間がありましたら与太話にお付き合いください。

さて、その幾つかの疑問なのですが、その詳細は後に個別に挙げて行こうと思っていますが、どうもその疑問を解く鍵は”美味しさってなんだろう?”ということをまず定義付けしないといけないことに気がつきました。よって今回は前説としてそのことを取り決めたいと思います。



★技術とか”腕前”のことではなく、”好み”とも違う『おいしさ』の定義


例えばよく流行っている2軒のラーメン屋さんがあるとしますね。

一軒はアッサリ味の『来来軒』

もう一軒はこってりスープの『豚骨亭』

Aさんは来来軒が美味しいと言い、Bさんは豚骨亭が好きだと言います。
これは”好み”の話であって”美味しさ”の話ではありませんよね。
(ー_ー)!!

では100人集めて来来軒と豚骨亭の2軒を食べ比べてアンケートを取るとします。
その結果、来来軒が65票、豚骨亭が35票になりました。
よって来来軒が”美味しい”かというと、そういうことでもありません。これはあくまでも2軒の間の多数決勝負です。ある狭い条件下での”どちらがより好まれるか”という比較でしかありません。
Y(>_<、)Y

今度は調理人を考えます。アンケート勝負に勝った来来軒の調理人、周さん(仮称)。彼は長年かかって編み出した秘密のスパイスを混ぜ合わせ、2週間煮込んだ必殺のスープを使ってラーメンを作ります。これが”美味しさ”なのでしょうか?

いいえ、ここで使いたい”美味しさ”とは違います。これは職人のキャリアやテクニックの話であって”誰が”とか、”どんな方法(技術)”でということではないのです。
(・へ・)


来来軒と豚骨亭は数あるラーメン店の中で長年多くの人の支持を集めてきました。つまり2軒とも”美味しい”のです。人により好みはあるでしょうし、両店の技術や使用する食材は違うでしょうけど、それでも多くの人に支持されるということは両方共に美味しいのです。まずこれが大前提です。
ヽ(*´∀`)ノ

では、作る人が違って、使う食材も違う、調理方法も違う。なのに両方とも”美味しい”ラーメンが出来るということは、つまり食材が”ある条件を満たし、ある状態になっていれば”、それが『美味しいこと』、といえるはずです。


☆今回はお酒ではなくラーメンの話になってしまいましたが、次回も美味しさの定義の続きで、今度も酒ではなく鮭の話になりそうです・・・
(#゚Д゚)y-~~





2013年1月24日木曜日

戦う獅子と動かざる鶏

★唐突ですが”強い酒”といわれて何を思い出しますか?

ジン?

ウオッカ?  それともテキーラ?

アルコール度数が96度もあることで有名なポーランド産のウオッカ、『スピリタス』。
このお酒もすっかり有名になってしまいましたが、今回はアルコール度数の強さの話ではありません。



★林檎を原料にしたブランデー、カルバドスという種類のお酒があります。昨今、Barでも人気のあるお酒ですし、お菓子やケーキの香りづけにも使われたりしますので知っている方も多いことでしょう。

そのカルバドスに『クールドリオン』という銘柄があります。

この『クールドリオン』が語られるとき、絶対に避けては通れない話題があります。

それはこのフランス語のネーミングを英語に直すと『ライオンハート』になるからです。

「獅子の心ですよ・・・・つまり強いお酒なんです!」

と、本当はこういう展開でブログに紹介しようかと思っていたのですが、新聞のニュースをみていると、「ちょっと待てよ!!」と心にブレーキ。


★『クールドリオン』は本来、イギリス国王リチャード一世のニックネーム”ライオンハート・キング”(獅子心王)から来ており、それは彼が王位の間、政治活動よりも十字軍の遠征、イスラム軍との戦争に明け暮れた事からの由来です。もちろん、その名の通り彼は勇猛果敢な王様だったようですが・・・

でも・・・でもなんだかなあ・・・
こんな由来で付いた『ライオンハート』をもとに”強い酒”、”勇ましい酒”と紹介してもいいのだろうか? 

取り敢えずは一旦、リセット。

そういえば、『ライオンハート』は酒なんかの名前よりも、もっと有名なものがあるじゃないかっ!

そう、SMAPの歌っていたあの歌です。

ブログネタ、他に思いつかないし、あの歌を引っ張り出してきて、無理やり『クールドリオン』にこじつけようかと画策、歌詞とかその背景の意味を調べました。

ところが!!

う~ん・・・ちょっと違うぞ、これは・・・

皆さんは知っているのでしょうかね、あの歌の歌詞の意味するところ。

『ライオンハート』ってなんか”勇ましく、それでいて優しい”みたいな意味で歌われてるのかと思いきや・・・

*ーー* かい摘んで引用 *ーー*

オス・ライオンは何にも仕事をしませんぜっ!!

子供の世話も一切しません

狩りをするのも、食事を作るのも育児もみんなメス・ライオンさ

オスはなんにもしないんだけど、でも嫁ライオンに身の危険がせまったら生命を賭けて戦うぜ!!

それがオス・ライオンの生まれてきた訳、使命なのさ

子供ライオンよりメス・ライオンが大事さ、オス・ライオンのいちばん大切なのはメス・ライオンだよ、ららら~♪ 


・・・・とこんな風にいたるところで『ライオンハート』の意味が書かれてあり(最初、冗談だと思って信じられなかったので幾つか検索しました)、ファンだから当然なのかもしれないけれど、「なんて素敵な歌詞♥」的な言葉で大絶賛の嵐。

本当にそれでいいのか? 雌ライオン。



個人的にはどちらの『ライオンハート』の意味にもがっかりしたので、いつか違うカタチで何か思いついたら、『クールドリオン』はちゃんとご紹介することにしましょう。




★ところで、『ライオンハート』の対義語っていえば『チキンハート』(臆病者)ですよね。

このトリについて思い出したことがあるので、『クールドリオン』には関係ないけれど書き留めておこうと思います。

先日、相撲取りの大鵬氏が亡くなりましたが、ニュースを見たとき、何故か(歳のせい?)双葉山と間違えました。その双葉山の有名なエピソードです。

69連勝までしていた横綱の双葉山。大記録70連勝がかかった土俵でかなり格下の相手に負けてしまいます。

ところが双葉山は普段通りに一礼して土俵を去り、彼の友人に電報を打ちました。

「我、未だ木鶏(モッケイ)たりえず」と。


この木鶏の意味は中国の故事から来ています。

闘鶏という、鶏同士を争わして遊ぶゲームがあるのですが、或ところにその軍鶏を育てるのが上手い、名人トレーナがいました。

闘鶏好きの王様が彼に自分の鶏をあずけ、暫くしてからトレーナーに強くなったか尋ねます。

すると敏腕トレーナーは答えます。

「まだまだこの鶏は虚勢を張って威嚇してばかりいます」と。


また暫くして王様は尋ねます。

するとトレーナー氏は答えます。

「まだダメですね。相手の動きが気になってしかたありません」


そしてまた暫く過ぎて王様が尋ねます。

するとトレーナーはこう答えました。

「もう大丈夫です。あなたの鶏はどんな相手を前にしても心動かされることなく、まるで木鶏のようです。この鶏に挑もうとする鶏たちは見ただけで恐れをなして逃げ出してゆくでしょう」

この故事から、強さとは”力”や”技”など身体能力だけではなく、威嚇したり、虚勢を張ってるうちはまだまだニセモノ、木鶏のように動じない心を持ちなさいという教えです。




★この頃、ニュースをみていると嫌でも目につきます。

リチャード一世のようになりたい、どこかの国の総理大臣、

威嚇、虚勢の大好きな元・都知事、

相手の動きが気になって仕方なく、コケコケと鳴きまくるどこかの市長とか。






★木鶏。正式には『木鶏に似たり』というそうです。

本当に強いものは木で出来た鶏の如し。

強さを外に表さず、敵意を見せることはない。

敵意無き者には敵もまた無く、困難苦難を乗り越える最良の方法である・・・ということです。



さて、『ライオンハート』と『チキンハート』、
強いのはどちらでしょう?








2013年1月17日木曜日

甘い誘惑

★一般的には女性に多いようですが、ストレス解消に買い物をするという方がいらっしゃいます。その気持ち、よくわかります。酒屋さんに仕入れに行って、お酒を選んでいるときはとても楽しいので。しかも”仕入”は仕事ですから大義名分、後ろめたさなく買い物が出来るのです!(笑)

★先日、酒屋さんに行ったとき、新しいコーヒーリキュールが入荷しているのを見つけました。その存在はネットなどで知っていたのですが、月読にはもうすでにエスプレッソのリキュールがあるので「2種類もコーヒーリキュールは要らないなあ・・・」と深く考えずにスルーしていました。

★ところがそのコーヒーリキュールの説明書きには「テキーラをベースに使ってアルコール度数は35%.、今までにないドライな味・辛口です!!」と書かれていました。

いままで、何も混ぜずにロックやストレートで飲んで美味しい、甘さ控えめで豊かなコーヒー豆の香がするリキュールがあればいいのになあと思っていたので、俄然、興味を持ちました。



パトロン XO カフェ テキーラ コーヒーリキュール
 
★即断即決、すぐにゲット。これが出来るのが社長兼社員の楽しいところです。ただこのコーヒーリキュール、もともと高級テキーラメーカーが造っているので、お値段はちょっと高め・・・
「まあ、美味しかったらいいかっ」。と店に帰って早速、試飲タイム。グラスに注いで、まずは一口、そのままストレートで飲んでみる。(美味しいリキュールはそのまま飲んでも美味しいのです)

あっ・・・・まーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!

練乳のような甘さの後、ようやくコーヒーの香や味を感じて、そのあと35%というリキュールではかなり高めのアルコール度数のパンチが口に広がってきます。

えっ・・・ (゜∀。)

信じられなかったのでもう一度飲んでみる。

ううっ、あっ・・・・まーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!
(T_T)

酒屋さんが書き間違えたのかと思ってネットで調べてみると、やはりどのショップもコピーには「かつてないドライなコーヒーリキュール」「辛口のコーヒーリキュール」等々、書かれています。

さてはこの人達、メーカーの受け売りで、実際に自分では飲んでないな!?
(--〆)

★カルーアミルクに代表されるようなコーヒーリキュールのミルク割りカクテルは、そもそもアルコールに弱い人が注文することが多いのでこんな度数のリキュールは使いにくいし・・・

どうしようか、コレ。(・へ・)
一般的な日本人の味覚としては”甘すぎる”だけで、”お酒の出来”としてはA級なリキュールなのですけどねえ・・・

・・・ストレス、増えた・・・ (;一_一)

こんな日も、たまにはあります。







2013年1月15日火曜日

Barに来る親子の謎

★昨日は成人式でした。
おめでたい!! いや、自分がハタチになった訳ではありませんけどね・・・。でもBarにとって成人式はとってもいい日なのです。何故ならお酒を飲む人口の増える日ですから。

まあ、僕自身は二十歳になる前から飲んでましたし(もう時効)、成人式も出席せずに友達とマージャンしてましたから、あまり人前で成人式の話をできないのですが。



★さて有難いことに、月読には親子連れでご来店くださる方が結構いらっしゃいます。これはとても嬉しいことで、”自分の親や子供、あるいは祖父母を連れてきて紹介できる店”というのはこれ以上ない『信用の証』ですからね!!

月読において自慢できる数少ない事柄のひとつです。
・・・他に思いつかないのが悲しい。 (T_T)




★今年の成人式の日もお客様(女性)が二十歳を迎えた娘さんを連れて月読に来てくださいました。この方は以前から何度も「娘が二十歳になったらここに連れてきたい」と言って頂いていましたが本当に実現する日を迎えてとても嬉しそうでした。

★ところで親子連れでBarに飲みに来るお客様のパターンで、この日みたいに『母娘』というケースはすごく稀なのです。『父・息子』『父・娘』『母・息子』『息子・祖父母』のケースはよくあるのですが、『母・娘』では3組みしか覚えがありません。(当社比較です)

これはどうしてなんだろうと、他のお客様方と「あーでもない、こーでもない」と、その日の中心的話題にしていました。

・・・どうなんでしょうね、理由。

一応の結論は出たのですが、その前に成人式に飲むウイスキーを選んでみました。カクテルは色々とありそうなので、ここは敢えてウイスキーに限定です。

グレンファークラス


シングルモルト・スコッチ・ウイスキーです。
これを選んだ理由は次の3点からです。

まず、グレンファークラスの名前、『緑の草の生い茂る渓谷』という意味から。瑞々しく生命感にあふれる感じが二十歳の門出にピッタリです。

次にこのウイスキーは100以上あるスコットランドの蒸留所の中でも、この規模では珍しく家族経営で成り立っている稀有な蒸留所であること。成人式を祝うのはやはり家族間で、ですよね。

最後は味です。シングルモルトは個性的な強い香り(ピート香)があって、一般的には”飲みにくい”お酒なのです。でもこのグレンファークラスはシェリー樽で寝かされているので香、味ともに甘みがあり、ウイスキーの初心者にも美味しく飲むことが出来るでしょう。

それと追加でもう一点。グレンファークラスは熟成年数(12年とか15年とか・・・)を他のシングル・モルトと比較すると、かなり安価な設定になっています。もちろん味の評価も込みです。つまりお得感抜群のウイスキーなのです。



★さあ、先程の疑問ですが・・・

正解かどうか分かりませんが、こんな答えに落ち着きました。

”Barで話をする”ということで重要なポイントは『お酒』というツールを介するその役割です。

それは『お酒を飲む』=『酔う』→『心が開く』→『話が弾む』という行程にあって、普段ではできないような精神的な近距離コミュニケーションを交わすことが目的であり、楽しみなのですね。

このお酒の役割は普段からあまり感情を表に出さないように生活している男性にとってはかなり有効な手段です。

ところが多くの場合、『母・娘』の関係上ではお酒を介さなくても、日常から既に”心が開いた状態”でコミュニケーションが行われているので、わざわざBarにいってお酒の力に頼る必要がないのではないか?! というのが一応の結論です。

女性だけだとお酒なんか飲むよりも、ケーキとか美味しいものを食べに行った方が断然、盛り上がる、というように・・・

さて、真相はどうなのでしょう?

ともあれ、成人した皆様、おめでとうございます!!
おおっぴらにバンバンお酒を飲む生活を楽しんでください。
m(_ _)m




2013年1月3日木曜日

ナウシカが大人になっても飲まない酒

あけましておめでとうございます。
本年も宜しくお願いいたします。

★去年の年末に大掃除をしたときに窓を洗いました。月読の構造的な特徴としては民家の2階ですからBarには珍しく窓があるのです。ただ京都の厳しい気候、冬は底冷え、夏は猛暑、梅雨は不快指数100%で冷暖房は欠かせません。ですから営業中に窓を開けることは滅多になく、あるとすれば春の夜くらいでしょうか。えっ、秋ですか?! 秋はダメなんです。温暖化の影響でまだ蚊がブンブン飛んでいるし、蛾も多いですから。

★せっかく大きな窓があるのですから、もっと開けっ放しで営業したいのですが中々そうもいきません。さてまあ、そんなこともあってか時々、夜行性の虫について思うことがあります。まったく専門知識なく考えているので”検討違いも甚だしい”ってことがあるかもしれませんが、そこはまあお許しください。


★営業中、窓を開けていると虫が店内に入ってきます。蚊はともかく、他の夜行性の虫(主に蛾ですが例えばカナブンなんかも)は店の照明につられて入ってきます。そこで思うのですが「どうして夜行性の虫は光に集まるのだろう?」。そんなに光が好きなら、昼間の太陽の下で行動すればいいじゃないか?

★たぶん、これは昼は天敵(鳥とか)が多く、夜に行動するほうが生き残りやすかったから、そういった特性が備わったのだと思います。では、どうして光に集まる習性があるのか? 昼に活動していた頃の太陽が懐かしいから? うーん、たぶん何かしら集まる場所を特定する習性を身に付けたほうが仲間と巡り会う確率が上がるから、つまり繁殖率があがるので種族保存の本能がら身についた特性なのだと思っているのですが・・・違うかな? ”光に集まる”の他に”音、鳴き声”(コオロギとか)、”自ら光を放つ”(蛍)、あと、具体例は知らないけれど”匂い”なんかもあるのかもしれませんね。

★さて、ここまではなんとなく分かります。(間違っているかもしれないけれど) でも僕がとても疑問に思うのはこの次からなのです。


★少し整理します。多くの夜行性の虫が光に集まるという特性をもちます。ある種の特性は生存率を上げるために環境に適応して備わってきたもののはずです。先程、”繁殖のために出会う率が高くなるので光を目標にしている”といいましたが、それが違っていても、”光に集まる習性”は何らかの意味をもって備わった習性には違いないはずですよね。

★僕がもっとも不思議に思うのはここなのです。もし、人間が夜に光を灯すことをしなければ、もともと彼等(夜行性の虫)はいったい何の光に集まっていたのだろう?ということです。

★人がいなければ夜に明かりはありません。人が明かりを灯すようになってから、その環境に順応して備わった特性とも思えません。そんな浅い歴史で習性が身につくとはとうてい思えませんから。

★だとすると、もしかしたら”光に集まる”という習性は環境に応じて得る特性ではなく、もっと根源的な生物全般の本能なのかもしれませんね。(誰か知っている方がいらっしゃったら教えてください)

★そう考えると、人が夜な夜なネオン街に繰り出す習性も分かる・・・かも?(笑)





★ではここで虫に関係するお酒をご紹介します。



~グサノ・ロホ~
メキシコのお酒でメスカルです。まあテキーラの一種と思ってもらったいいです。
『赤い虫』という意味で、テキーラやメスカルの原料となる竜舌蘭の葉っぱに住んでいる虫です。写真の瓶底にいらっしゃるのがお分かりになるでしょうか?
因みにこんな話をしておきながら僕は虫が苦手ですので、敢えてアップでは虫の写真を写しておりません。(笑)
このビンに沈められた可哀想なグサノロホくん、食べると幸運になるそうです。あと、竜舌蘭の葉っぱに付いたこの虫のオシッコ、それを乾燥させて作った塩を舐めて飲むテキーラが一番おいしいとか、いろいろ怪しい伝説があります。




~スコーピオ~
読んで字のごとく、サソリの入ったウオッカです。
名前は毒虫系?ですが、ウオッカとしては一般のものよりアルコール度数が低めで身体にやさしいウオッカです。(笑)
これまた瓶底にサソリが沈んでいますが、毒はなく食用のサソリです。ベルギーに食用サソリの養殖場があるらしく、無菌ということですので安心してお飲みください。
特に変わった香りがするわけでもなく、普通のウオッカとして使えます。
お勧めのカクテルとしては『キス・オブ・ファイヤー』のウオッカに使うと洒落が効いていていいかと思います。





★さて最後にもう一度、夜行性の虫の話に戻ります。

人がまだ夜に明かりをともしていなかった時代。夜に一番明るかったのはきっと満月です。

満月の晩、羽を拡げた虫たちが一斉に天頂に輝く月明かりに向かって森から飛んでいく図を想像すると、虫が苦手でもちょっとだけ幻想的な気分になります。







2013年1月1日火曜日

夜空のムコウ

★大晦日と元日。結婚してからは休むようになりましたが、以前のBar月読は火曜定休以外はとくに休日を設けてはいませんでした。

★大晦日の営業パターンとしてはずっと暇で、その後、真夜中辺りから混み始め、午前3時頃はまだワイワイやっているという状況になることが多いのです。本来の閉店時間は午前1時。年末だからまあいいか・・・と。


★お客様がいつもよりも楽しそうに見える大晦日の夜。営業が終わって、大掃除が終わって、棚卸が終わって家に帰る道すがら。身が切れるような京都の冬の明け方です。自分だけが大晦日でもない、元日でもない、その狭間の不思議な空間にいるような感覚です。そんな気持ちでトボトボ歩いていると羨ましさとか、ちょっとした寂しさとか、なんかそんな風なものを感じるのです。
「あ~、オレって頑張ってるよなぁ・・・」なんてナルシスト的に呟いたりしながら。


★そんな時、歩き続けていると大通りの歩道を一人でホウキを持って掃除をしている人に出会ったりします。冷たい風に背中を丸めながら、街路樹の落ち葉とか昨日の喧騒の中、誰かが散らかしていった紙屑を一箇所に集めて掃除をされている人。まだ日も昇っていない暗く寒い朝のこんな時間・・・元旦なのに。街の至るところに、こんな人たちが沢山いらっしゃるのでしょうね。

★その集められたゴミの脇を、ポケットに両手を突っこんだまま足早に通り過ぎようとすると、ホウキを持ったその人は手を止めてこう言うのです。
「ああ。ゴメンナサイ(通行の邪魔をして)」って。


★邪魔なのはこちらの方で・・・さっきまでの自分の気分を省みて、なんかとっても申し訳ない気になって、なんか言わなければいけないコトバがあるはずなのに、喉の奥の方でモゾモゾしていて中々探し出せないのです。

★結局、歩くスピードは落ちることはなく、軽く会釈をして「いいえ」と言うのが精一杯。通り過ぎたあと、後ろの方からまたホウキを掃く音が聞こえてきます・・・穏やかな音、清浄なる音。誰も知らない夜の音。


★日が昇り、新しい生活が動き出し、いい一年になりますように。 

・・・マダマダ シュギョウ ガ タリマセン


http://www.youtube.com/watch?v=-B9F_FQObL4
(夜空のムコウ スガシカオ)