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2013年3月31日日曜日

夜桜のメロディー


★毎年そうなのですが・・・

何故か夜桜を見ているとマイルス・デイビスのトランペットが聴きたくなるのです。

夜桜はその美しさより、妖しさの方が勝るからでしょうか?



今夜はマイファニーヴァレンタインを聴きながら、闇に咲く花を眺めて一杯。

窓の向こうの桜の下には何が埋まっているのだろう?


2013年3月28日木曜日

スプリングフィーリング

★「春の別れが残酷なのは、その感傷に浸るまもなく、すぐ次のドラマが始まるからだ…」

以前、こんな意味のセリフがある本を読んだことがあるのですが、誰だったか思い出せない。


確かに3月は卒業式や転勤など別れの月で、もう4月には新しい場所、新しい環境でそれぞれの生活が始まります。

4月は旅立ちの季節ですね。


そういえば学生時代、好きだった女の子が卒業したり、クラス替えで違うクラスに別れたりで、環境や距離が離れて、相手の周りが見えないから余計に不安になったりで胸を痛めたこともあったなあ…と、ちょっと思い出したりなんかして。




★この春、Bar月読でも何人かのお客様が新しい場所に旅立って行かれました。

遠く海を渡って国境を越えていった人。

東京に転勤した人。

結婚して引っ越した人。

卒業して地元に帰っていった人。


今年も何人か見送りました。




お元気で、幸せでいてください。

ここに立ち寄ってくれてありがとう。

ここを好きになってくれて、本当にありがとうございました。

またいつかお会いできる日を楽しみにしています。



<カクテル スプリングフィーリング>


ジンの刹那な香りとハーブリキュールの新しい生命の香り、それからちょっとだけ痛く、それでも何か期待しそうなレモンの香りを織り混ぜて、春の風を感じるカクテル。






2013年3月23日土曜日

最後の選択


『猿の手』という物語があります。

**―――**―――**―――**―――**
 「猿の手」(「ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典」より引用 最終更新 2012年11月9日 (金) 23:05 )

「猿の手」(さるのて、原題: The Monkey's Paw)はイギリスの小説家W・W・ジェイコブズによる短編小説である。怪奇小説として知られる。

この物語は「みっつの願い事を叶えてくれる」伝統的なお伽話です。

老いたホワイト夫妻とその息子ハーバートは、インドの行者が作った猿の手のミイラを、知り合いのモリス曹長からもらい受けた。

モリス曹長が言うには、その猿の手には魔力が宿っていて、持ち主の望みを3つだけ叶える力があるらしい。だがそれは、「定められた運命を無理に変えようとすれば災いが伴う」との教訓を示すためのものだ、自分も悩まされたからと、曹長はホワイト家に渡すのを渋ったが、ホワイト氏は半ば強引に受け取る。

息子が冗談半分に、家のローンの残りを払うのに200ポンドが欲しいと言うので、ホワイト氏はそれを願ったが、結局その時は何も起こらなかった。

その翌日、一人息子のハーバートが勤務先の工場で機械に挟まれて死んだと知らせが届く。会社は賠償を認めないが、日頃の勤労の報酬として金一封を夫妻に支払った。その金額は200ポンド……。

老夫婦は息子の死を嘆き悲しんだ。そしてある夜、どうしても諦めきれない妻は夫に、猿の手で死んだ息子を生き返らせてくれるようにと懇願する。

ホワイト氏は息子の凄惨な死体を見ていたので、懸命に妻をなだめるが、彼女は半狂乱になって訴える。夫は断り切れず、二つ目の願いをかけた。

しばしの後、夫妻は家のドアを何者かがノックする音に気付く。夫人は息子が帰ってきたのだと、狂喜して迎え入れようとしたが、その結果を想像して恐怖したホワイト氏は猿の手に最後の願いをかける。「息子を墓に戻せ」。激しいノックの音は突然途絶えた。

結局、平凡な日常にささやかな抵抗を試みたホワイト夫妻は、大きな代償を払って元の日常に戻った。

**―――**―――**―――**―――**



 興味のある方は『猿の手』で検索してみてください。全訳されたものが出ています。とても短い小説で、数分で読み終えます




原発関連のニュースを見るたびにこの物語を思い出します。

ひとつ目の願いは私たちが願いました。
 何も知らずにただ願いました。

ふたつ目の願いは政治家やメディア、その他、原発の利権を享受し続けたいもの達が願いました。

…願い事はあとひとつ、残されています。



2013年3月22日金曜日

春の音


☆日中はポカポカ暖かく、春めいてきました。

さて、こんな季節に相応しいカクテルはというと…

ジンフィズでしょうか。

爽やかだけれどコクもあり、
 クラシックだけれど軽やかで楽しげ。

おそらくロング・ドリンク(簡単にいうと氷の入ったカクテルです)の中でも最も完成されたカクテルのひとつです。

”フィズ”って炭酸のはじける音を表した言葉だそうですが、日本人の耳の感覚なら「シュワ、シュワ、シュワー」とかですよね。

「フィズ フィズー」とは聞こえないけど、飲んでみると体感できるような気もします。

たとえ実際には聞こえなくても、春の足音が感じられるこの季節みたいに。


2013年3月21日木曜日

墓場でダバダ

先日、お彼岸ということでBar月読の定休日にお墓参りに行ってきました。


お墓は小高い山の中腹にあり、山を挟んで後側は海です。

春の陽気に恵まれていい天気でした。





お参りをすませ、しばらくその場所から遠くの景色を眺める。




穏やかな田園風景で、時たまローカル鉄道の汽笛とカタン、コトンという線路の上を行く電車の音が聞こえてきます。



陽の光の中でぼんやりと思う。

そう遠くないであろういつか(大きな時の流れの中においての尺度として)、自分もココに入るのだなあ。

もし、千の風にならないとして、ココに居るとしたなら、季節によって移り変わるこの景色を眺めながら日がな過ごすのだろうか。


海もあるし、電車は走ってるし、鳥や虫の鳴き声も聞こえて、季節の花も多く咲いてるし、何より星が綺麗に見えるだろうし、それも悪くはないなあ…

でも、夜はちょっと退屈かも。見たところBarはなさそうだし。

いっそのこと、ここで月読の続きでもするかな。

でもここではお客さんは少ないだろうなあ。

いや、それは今でもそうか… それより嫌なのはオバケがお客で来たら怖いな。

あっ、そもそも自分がユーレイか…



なんて、どーでもいいことを考えながら、のたりのたりと春の午後。



このレールの向こうは何処まで続いているのだろう。








春の丘陵


☆スコットランドの南西にキンタイアという、細長く小さな半島があります。
 昔、このキンタイア半島はウイスキー造りのメッカで、キャンベルタウン・モルトと総称され、全盛期には30もの蒸留所が稼働していました。

ところがアメリカの禁酒法時代、アメリカに近かった地の利を活かして、キャンベルタウンは粗悪なウイスキーを売り続け、一儲けします。
 やがて禁酒法が撤廃されるとこの地域のウイスキーは見向きもされなくなります。現在、残っている蒸留所はわずかに2つ。

目先の利益に惑わされず、麦から自家生産にこだわり品質を守り続けてきた蒸留所だけが残りました。

粗悪なものは淘汰され、真当なものが評価される、そんな世の中であって欲しいものです。

”春の丘陵”という名前のシングルモルト・ウイスキー
 『スプリング・バンク』 

春の訪れを感じる季節にお勧めです。


2013年3月19日火曜日

桜、咲く?


春になると始まる、お花見狂想曲。

でも冬の桜は其処に在るのに誰にも見えない。

咲くのは素晴らしかろう、散るのも美しかろう。

でもそれだけではないはずで、絵画や音楽、他のすべての仕事たち。美しいものにはたとえ見えなくても必ず在る冬の刻。

見えないものを視る目が欲しい。

早春の桜を飲む。

<カクテル チェリーブロッサム>


2013年3月18日月曜日

営業時間変更のお知らせ

*** 営業時間変更のお知らせ ***

2013・3/24(日曜日)は18時より『世界の田舎に泊まろう! in KYOTO  河原啓一郎 トークライブ (ボランティアをしながら世界を旅をする看護師の青年、河原啓一郎さんを支援するトークライブイベント)をBar月読で開催致します。

http://sekainoinakanitomaro.blogspot.jp/

そのため一般の営業時間を21時半からとさせて頂きます。
ご迷惑をおかけ致しますが宜しくご了承下さい。

なお、このイベントの参加費は1000円で全てが支援金に渡されます。
Bar月読も場所の提供と当日売上の利益分ご協力させて頂きます。

もし宜しければご参加下さい。

尚、友人の料理店、『うまいもんや いっしょう』 『割烹 たいら』 『フレンチレストラン ラドール』(50音順)より当日にフードの無償提供を頂きました。

ご協力、多謝。

こちらも売上を提供させて頂きます。




世界でいちばん遠い場所




☆カクテル『アラウンドザワールド』

(ジン ミント パイナップルジュース)


本来の意味は世界一周。

でもこのカクテルを作るとき、ちょっと違った意味を考えてしまいます。

今いる場所からどの方角に向かって世界一周をしたとしても、必ず最後にはまた同じ景色。

今いる場所が、自分の背中が、実は世界で一番遠い場所。

自分の背中を見ることが出来ないように、”自分探し”なんてしたって見つかりはしない。

何処へ行こうと、自分が在るのはそこからいちばん遠い場所。

メーテルリンクの青い鳥がそうであったように、幸せはいつだって自分から”最も遠くて近い場所”に在る。

ふと、そんなことを思うカクテル。

2013年3月17日日曜日

春なのに


春3月。

 お別れの季節です。

ファーストキスの味を例えて、よくレモンの味とか言いますが、サヨナラのキスはどんな味がするのでしょうか。


<カクテル ラスト・キッス>

ホワイトラム (サトウキビの蒸留酒) 45ml

 ブランデー (熟成させた葡萄の蒸留酒)10ml

 レモン果汁 5ml

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

甘い想い出が3/4

 大人の分別が1/6

 最後に切なさをティースプーン1杯分。

ちょっとだけファーストキスの味を残して、辛口のキス。



2013年3月16日土曜日

雪国へ


~ ご報告 ~

先日のBar月読 震災復興支援営業での売上金、61000円を送金させていただきました。

振込先は仙台に住む友人の紹介で、その活動に賛同してのものです。



カクテル 雪国

東北のカクテルコンテストで山形県のバーテンダーが考案されたカクテルです。



ふるさとの景色をグラスに描いた美しいカクテルです。



2013年3月15日金曜日

ブルーマンデー


☆先日、ご来店して頂いたお客様のお一人。
 僕がBarという仕事に携わってから、最も古く親交のある方のうちのお一人です。

まだ僕が学生でアルバイトだった当時、よくこのカクテルを注文して頂きました。

殆んど知名度のないこのカクテル。Bar月読にはメニュー書きもないので、お客様から注文を頂くことも今まで一度もなかったはずです。

昨日、最後の一杯が「おまかせ」だったので久しぶりに作りました。

『ブルーマンデー』

あれから27年の歳月が過ぎたのか・・・
 夢のように永い時間。

確かに”憂鬱な月曜日”も数多くあったけど、それでも過ぎ去ってみれば幸せな時間への良きスパイスだったんだと今はそう思えます。

27年前、自分はどんな味のカクテルを作っていたのだろうか?
 レシピが同じでもたぶん、きっと今とは違う味なのだろう。


2013年3月14日木曜日

春暁


★Bar月読にて、3月12日(火)に行いました東北復興支援営業に多数ご来店いただきましてありがとうございました。

おかげ様をもちまして6万円をこえる売上になりましたので、後日これを全額募金させて頂きます。

募金先の内容は追ってフェイスブック、ブログ、ホームページ、Bar月読店内にてお知らせ致します。

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カクテル 春暁(しゅんぎょう)

桜の花(塩漬け)をグラスに沈めた、見た目に最も美しいカクテルです。

暁 ーあかつきー

 今は夜明けとか太陽が昇ってくる直前の東の空が白み始めた頃、もしくは物事が実現した時のことを意味します。

 ところが昔、平安の頃は夜中の次の節で”夜が最も深い時間帯を指す言葉だったそうです。

コトバとしては後者、昔の方が趣が深いような気もしますが、でも今は前者であること、そうなっていくことを願います。

2013年3月12日火曜日

『おいしい』の仕組みを考える 終


☆美味しい定義の理想的なレシピ

最後にスタンダードカクテルの中から、もっとも『美味しい定義』に見合ったカクテルをロングドリンク、ショートドリンクから各1種類、ご紹介します。





<スプモーニ>

カンパリ、グレープフルーツ、トニックウォーターの組み合わせ

それぞれに苦味、甘味を持ち、カンパリの弱いアルコール分とトニックに含まれる炭酸の刺激が絶妙に和合。

グレープフルーツのフレッシュな香、炭酸の弾ける音。

完璧な組み合わせの優しいカクテルです。







<マルガリータ>

テキーラ、コアントロー(=オレンジ果皮リキュール)、ライム(またはレモン)

現在のレシピではライムの方がよく使われますが、ここではレモンレシピを採用します。

テキーラ、コアントロー、柑橘にそれぞれ苦味があり、コアントローの甘さ、レモン果汁の酸味、テキーラのアルコール刺激、オレンジ、レモンの風味、あと、Ⅸのページで述べたレモンと甘味の抜群の相性の良さ、それに加えてグラスの縁に付けられた塩。

甘味 酸味 塩味 苦味 うま味、そしてアルコール刺激による辛味を含めて、すべての味の要素を合わせ持つ完璧なレシピのカクテルです。







☆カクテルを考えたり、作ったりするのは恋人を探すのに似ています。

相性の良さ、共通の要素、お互いを高め、引き立る。
でも中々そんな相手は見つからないし、つくれない。

繊細で美しいのだけれど、、ちょっとしたミスや手抜きですぐに壊れてしまうことも。

だからこそ上手くいったときは最高に嬉しいのですけどね。



といったところで、長く続いたこのシリーズを終わりにしたいと思います。


2013年3月11日月曜日

臨時開店のお知らせ

シングルモルト・ウイスキー
 『スキャパ』
 
スコットランドの北端にあるオークニー島の蒸留所で作られています。
 ブレンデッド・ウイスキー、バランタインの根幹モルト(主要原材料)でもありますが、島で造られているだけあって少し塩の味がします。
 
今は遠く離れた人もふるさとの海を思い出すようなウイスキーです。
 
スキャパの意味は諸説ありますが、古代バイキングの言葉で「牡蠣の床岩」とか「船の入江」とか云われています。
 
日本でいえば三陸のような場所でしょうか。


 
*――*――*――*――*――*
 
明日、3月12日は火曜日で本来Bar月読は定休日ですが、19時~24時の間、臨時”開店”いたします。
 その売上の全額を東日本震災に関する何らかの活動(*)に寄付させて頂きます
 
(*『何らかの活動』=自分で店をするようになって10年余り。ポツリポツリとたま~に休日開店をやってきましたが(告知したり、しなかったり)、ここ2年は東日本震災への赤十字に送っていました。ただ今回から思うところあって別のルートに変更する予定で、現段階でまだ未定です。現在、現地で暮らしている友人に依頼してメディア情報でなく、現場で最も有効かつ迅速に利用してもらえる先を検討してもらっています)
 
といったことで明日、お近くにおこしで「ちょっと一杯飲みたいなー」と思いでしたらお立ち寄りくださいませ。
 m(_ _)m
 
***
 募金活動ではないのでお客様に寄付金を募るものではありません。従来のままの営業です。
 
営利活動ではないからといって、本来の商品より価値の下がったものを提供するわけではありません。従来通りのBar月読で、出来る限りのものをお出し致します。(ただボトルキープだけはお断りさせて頂きます)
 
本日が3月11日ですがそれに合わせた訳ではなく、たまたま明日は奥サマがお出かけであり、こちらも確定申告が終わって心に余裕があるので明日の火曜日になりました。
 

2013年3月8日金曜日

『おいしい』の仕組みを考える Ⅸ

☆オーダーの少ないカクテル、ありそうで無いカクテル

*―――* 太陽の果実と月の果実*―――*


ジントニック

おそらくはBarで最もよく飲まれるカクテルのひとつです。
でも、どうしてジンなのでしょう?
同じスピリッツにウオッカ、ラム、テキーラとあるのに、その中でもダントツにジントニックの人気は群を抜いています。


答えは簡単。同じ条件下であるひとつだけが抜きん出ている場合、それは『おいしい』からに他ならないのです。もちろん好みはありましょうが、それでも多くの人の総意としてジントニックが他のスピリッツで作る”~トニック”より美味しいと判断した結果の大差なのです。

ここにも『おいしい』の定義は当てはまります。
ジンは他のスピリッツに比べて、香の複雑さがあり、(使っているハーブの種類が多い。ウオッカは0、ラムはサトウキビの香、テキーラは竜舌蘭に由来する香。それに比べてジンはジェニパー、コリアンダー、レモン、ジンジャーなどなど多種)トニックウォーターの苦味、甘味、炭酸の刺激とよく和合するのです。


ジンの次に相性がいいのはテキーラで、ラムはサトウキビの甘い香とトニックの甘さがそれぞれ異質なので、合わさったときにアンバランスな甘さを感じてしまいます。

ジントニックの次に人気があるのはウオッカトニックですが、これは味、香がプレーンに近い分、スイートスポットが小さく、作り手の腕がより要求されます。



ジンライム

これもジントニックと同様に、たまにウオッカライムの注文があるくらいで、ラムライムやテキーラライムなんてオーダーはありません。カクテルブックにもジントニックやジンライムは載っていても他のものは記載されていません。

ところがジンライムが他のスピリッツよりも群を抜いて美味しいかというと、そうではありません。ここが重要なポイントですが、トニックウォーターと違って、ライムはどのスピリッツとも相性がよく、1+1を2+αにしてくれます。


ライムという果実はBarの中でも特によく使われる柑橘ですが、最も蒸留酒に程良く混ざり、甘さ、酸味、苦味のバランス具合がちょうどいいので、まるで月のように相手に合わせて、味の役割を様々に変え、相手の(お酒の)長所を引き出してくれます。



さて、ここで問題です。カクテルに(レシピ本なんかでも)ジンライムはあってもジンレモンが無いのは何故でしょう?

おそらくBarで「ジンレモンください!!」と注文したらバーテンダーは躊躇なく作ってくれると思います。でも、カクテルの本には載っていないし、バーテンダー自らが率先して作ることはありません。

何故か? 美味しくないからです。レモンそのものの味が好きな人は別ですが、スピリッツにレモンを混ぜると1+1は2に満たなくなってしまうのです。

バーテンダーは知っていて作らないのか?

バーテンダーが率先してジンレモンを作らないのはそれが美味しくないと知っているからですが、『何故、美味しくないか?』については経験則的、感覚的に解っているという理由が多数なのではないでしょうか?

この”『おいしい』の仕組みを考える”をまとめるにあたって、いちばん大事だったところはここで、”何となく解っている正しいこと”を”ちゃんと理由を解って理解している”に変えることはとても重要だと思うのです

さて、ジンレモン。どうして美味しくないか分かりますか?
とても簡単な答えです。そしてお酒に詳しくなくても分かる理由です。


レモンの特性

生牡蠣にレモンを搾ります。
何故か? 生臭さを消すためです。

レモンの強い酸味は香を消すのですね。これはお酒の最も大事な要素をなくしてしまうことなのです。だからジンレモンを作るとレモンの香に支配されて、ジンの複雑で繊細な香がなくなってしまうから美味しくはならないのです。

レモン果汁の使い道のひとつは少量だけ、香ではなく、味としての酸味をアクセントに加えるレシピがカクテルにも多くみられます。多く使うと香において危険なのです。例えるなら紫外線のようなものでしょうか。

ただ、レモンの最も優れた特性は他にあります。
それは多量の糖質と混ざると素晴らしく美味しい味に変化するというところです。
(蜂蜜レモンを考えてもらうといいと思います。)


この特性を利用したカクテルのレシピは数多く存在します。

ジンフィス(ジン+レモン+砂糖+ソーダ)

ホワイトレディー(ジン+コアントロー+レモン)

マルガリータ(テキーラ+コアントロー+レモン)

XYZ(ラム+コアントロー+レモン)

バラライカ(ウオッカ+コアントロー+レモン)

サイドカー(ブランデー+コアントロー+レモン)

*コアントローはオレンジ果皮のリキュールでかなり甘口。このスピリッツ+コアントロー、レモンというレシピはカクテルにおいての黄金配合です。


その他、
ニコラシカ(ブランデー+レモンスライス+砂糖)

ウイスキーサワー(ウイスキー+レモン+砂糖)


この強く濃い甘さに対しては、スピリッツに万能であったライムでは太刀打ち出来ないのです。

太陽には太陽の、月には月の相応しい空があるということでしょうか。