「スピリッツって、なんですか?」
barをやっていると、たびたび受ける質問です。
「美味しんぼ…とかが連載されてる漫画雑誌です」(まだやってるのか?)…とは答えてはいません。
もちろん、お酒、アルコールのお話です。
お酒には大きく分けて、2種類あります。
醸造酒と蒸留酒です。
醸造酒というのは、原材料をバクテリアの力を借りて、発酵させて造る種類のお酒のことです。たとえば、お米を使って日本酒、葡萄を使ってワインといった具合に。これらのお酒は人工的な手法を使って、アルコール度数を上げることはされません。(アルコール添加された日本酒などは除く)
さて、思い出してみて下さい。
アルコール度数が40%の日本酒のラベルをみたことがありますか? アルコール度数が50%のワインを飲んだことがあるでしょうか?
絶対にないはずです。
なぜなら、そんなものはこの世に存在しないからです。
超簡単に説明します。
日本酒もワインも原料の米や葡萄を液化して、それをバクテリアがアルコールとガスに分解して造られます。そして発酵がどんどん進むとアルコール度数も上がっていきます。
さて、ここで問題です。
仮にアルコール40度のワインを造ろうとしたとします。発酵をどんどん進行させていきます。
でも、アルコール度数40度のワインは絶対にできません。なぜなら、発酵の途中で”バクテリアが自分で造ったアルコールに自分自身が滅菌消毒されて、20%(正確な数字は忘れた)くらいの地点で全滅するから”です。
つまり自然の力だけで造れるアルコール度数の限界はかなり低いところにあって、焼酎やウイスキー、ジン、ウオッカなどの40度を超える高アルコール度数のお酒は、人工的にしか造れません。
人工的にアルコール度数をあげる方法を、『蒸留』といい、”蒸留機”を使って、できた高アルコール度数のお酒の総称を『蒸留酒』といいます。簡単にいうと、醸造酒を蒸留機を使って、人工的に水とアルコールに分離させて、度数を高めていく方法です。
”蒸留”は中世の錬金術の実験過程で、偶然に発見されたともいわれていますが、不老不死の霊薬を作っていて、偶然にできた蒸留酒。それを飲んだ中世の錬金術師たちは、もちろん、それまでに醸造酒しか飲んだことがないから、高アルコールによって急速に酔いが回り、心臓がバクバク波打ち、それこそ本当にスピリッツ=魂、命の元と考えたのかも知れません。
さて、この人工的にアルコール度数を高めた蒸留酒のことを、一般的にスピリッツといいます。
とくに樽で熟成していない、透明の蒸留酒(ジン、ホワイトラム、ウオッカ、テキーラ・ブランコ)のことを、ホワイトスピリッツといい、概ね、《スピリッツ=ホワイトスピリッツ》のことを指していう場合が多いです。
先日、『共謀罪』が衆院を通過しました。
その前後のニュースで幾つかの醜聞も明るみに出ました。でも大手メディアは豆粒ほどの報道でお茶を濁し、知らん顔。世間は相変わらず静かで、支持率は高いまま。声を出すのはいつもと同じ人々。
そんな折、お客様から久しぶりに「スピリッツって何ですか?」と聞かれ、上記の説明をしていたのですが、途中からボンヤリと別のことも同時に考えていました。
『安倍一味が”自らの作った共謀罪で、自分自身がいちばん最初に滅菌されるべき”ではないのか? バクテリアは低アルコールでも消滅するけど、安倍一味は反支持率40%くらいでは滅菌されないし、なんとか”蒸留”できないものか…』などなど。
もちろん、接客中にこんなことは声には出してはいませんが。ただ少し”スピリッツ”の話には続きがあります。
「スピリッツといえば、イーグルスのホテルカリフォルニアという曲が有名ですが、ご存知ですか?」
そこに”スピリッツ”という歌詞が、ダブルミーニングで使われています。(ただ書いた本人は否定しているらしいですが…上記にもあるように、ワインはスピリッツじゃないし)
So I called up the Captain,
“Please bring me my wine”
He said,
”We haven’t had that spirit here Since nineteen sixty-nine”
いわく、
「ワインを持ってきてくれないか」
「あいにく、そのような”スピリッツ”は1969年以降、当ホテルにはご用意がございません」
* ホテルのバーにスピリッツがないことと、69年以降、ロック界が商業主義に陥り、魂を失ったことを二重に含ませています。
まあ、当人が言ってるのだから、”違う”のでしょうが(くどいようですが、ワインはスピリッツじゃないし)、あまりにも有名なこの解釈、このままの方が好きですけどね、カッコイイし。
さて「スピリッツって何ですか?」
2012年以降、日本の多くのマスメディアが失くしたものが、それです。
But…
Welcome to the bar tsukuyomi.
幾つものスピリッツを取り揃えて、お待ちしております。