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2014年11月17日月曜日

白の境界

カクテル ホワイトレディ

このカクテルの誕生については諸説あって確かではない。

とくにどういった理由でこの名前がついたのかも。

人は大人になるにつれて何かしら汚れずにはいられない。時に濁り水を啜り、泥の中を這いずり回る。どんなに嫌であろうと避けては通れない事もある。この時、濁りに染まってしまうのか、それでも自分のカラーを保ち続けていけるのか?

汚れないことが強さではない、汚れ染まっても耐えられる、あるいは平然としていられる事が強さでもない。なにがあろうと決して染まらずにはじき返し、自分の色を保ち続ける事が強さなのではないだろうか。

ホワイトレディの香りをコトバで説明するのは難しい。
例えば初恋であるとか、古いアルバムを開いて懐かしい写真を見つけたような、胸がキュッと締め付けられて、少し心地よくもあり、哀しくもあるようなそんな想いのする香りのカクテルだ。

ホワイトレディに合わす曲は井上陽水の”いつのまにか少女は”がいい。この曲は大ヒットした訳ではないのだけれど、少女が大人になる瞬間をギリギリのところで写し撮った名曲で、ホワイトレディと共に”凛とした哀しさ”を内包している。

もしまだホワイトレディを飲んだ事がない人もこの曲を聴くと香りのイメージが湧くのではないだろうか。



いつの間にか少女は   井上陽水







2014年11月7日金曜日

林檎の香るバーボン


80年代から90年代にかけてのbarシーンを知っている人からすると、最近はあまりバーボンを飲む人口が減ったなという印象は否めない。

ただし、当時に比べてプレミアムなバーボン、つまり少数生産であったり、高品質で上品な、比較的高価な銘柄は随分と多くなった。もちろんそれらは昔からあるスタンダードなバーボンよりも味、品質ともに優れているのだけれど…。

最近、僕個人の好みとしては少々変化があって、昔ながらのスタンダード・バーボンに回帰している。ただしなんでもOKという訳ではなく、ワイルドターキーという銘柄にのみについて。

これは長期熟成の12年物ではなく、もっともスタンダードな8年物に限る。
その理由はオンザロックにして、少し氷が溶け出した頃合いに、ふっとグラスの中から林檎の香りがするから。

50度以上ある強い酒に似合わず、このアップル香を発する不似合いなバランス感にどこか危うい魅力を感じてしまうのだ。林檎の香りに合わすため、最近、ワイルドターキーのオンザロックにシナモンスティックを入れて飲んでいるのだけど、これがとてもいい。


ところで、この酒と合わせて聴くBGMはなんといってもキャノンボール・アダレイのサムシン・エルス、A面の一曲目 ”オータムリーフ”が相応しい。

秋のタイトルでありながら、冬のようでもあり、夏の夜道のようでもある。トラディショナルでありながら攻撃的でもあり、孤高でありながら決して淋しくはない。マイルスデイビスの妖しい魅力とこの酒の危ういバランスが妙にしっくり、心地よい。約5分間、ちょっと変わった秋にトリップする。

ちなみに僕はジャズに詳しい訳ではないのだけれど、このサムシン・エルスに入っているオータムリーフの演奏が全ての知っているジャスの中でいちばん好きだ。ジャズに詳しい人からすると多分、「けっ!」って嘲笑されそうなほど有名どころの曲ではあるのだけどね。(サッカーで言うところの本田、野球で言うところのダルビッシュみたいなものか?)

ただ以前、ジャズバーにいて、あれこれあった結果、自宅にジャスのレコードが1500枚以上ある。
全部聴いたけど、”自分好みの”という感覚で言うと、この曲以上に凄いと思える演奏にはまだ出会えてはいない。


今でもこの曲を聴くとその演奏の後半部分で頬っぺたの後ろの方が痺れるくらい、ヤられてしまう。
ただ、そんな曲に合わす酒がまさかスタンダードのワイルドターキーになるとは今まで想像だにしなかったけど、まあ、所詮そんなものなんだろうな。
マイルスデイビスならなんと言うだろうか?