路地を歩いていると、小さな公園の奥から野球のボールが転がってきた。拾い上げてもう一度公園の方を見ると、垣根越しに少年が立っていた。左手にはサイズのあってない少し大きめのグローブをつけて。ボールを投げて返すと、少年はぺこりと頭を下げて、また向こうに走っていった。誰そ彼(たそがれ)の刻。まだ「誰だ?彼は」というほど暗くはない。なのに少年の顔はよく見えなかった。それでもあの横顔は何処で見覚えがあったのだ。記憶をたどりながらまた路地を歩きだし、数歩進んだところで、ふっとそれを思い出す。あの面影は遠い昔の自分自身ではなかったか?
振り返り、公園で遊ぶ子供たちの中にグローブの少年を探したのだが、もう見つけることはできなかった。時々、狭間の季節に迷い込み、自分が自分に問いかける。誰だ彼は?と問いかける。街路樹の影が長い。もうすぐ『夜がくる』 by マークHAMAウヰスキーが飲みたくなった。
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