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2016年1月13日水曜日

象徴としてのサンタマリア

「この店のお勧めはなんですか?」と訊かれると困ってしまいます。

お勧めじゃないものは仕入れていませんし、こちらがお客様の嗜好を把握していないのに、まったくタイプの違う何十種類のお酒の中から選ぶのは不可能だからです。

せめて「バーボンの中でお勧めは?」とか、「デザート酒でいいのある?」という風に訊いて頂けると助かるのですが、まあ、なかなか難しいものがありますよね。

ところで、”お勧めの酒は?”という問いかけには答えに窮するのですが、”この店を象徴する酒は?”という質問があれば(まずそんな質問はないでしょうが)、それには即答することが出来ます。
それは沖縄県、伊江島で造られているラム、”サンタマリア”です。



このラムとの出会いは、沖縄に旅行に行った帰りの空港のショップでした。友人や常連のお客様への土産にしようと思ったのです。

京都に着いてから自分の店で試飲して驚きました。そしてその日からbar月読のメインラムになり、とくにダイキリなどのホワイトラムを使うカクテルには、今ではなくてはならないものとなっています。

”象徴”という意味において、それはたんに美味しかったからだけという訳ではありません。
このラムに出会ったとき、それは有名なものではなかったし、ブランドものでもなかったし、究極に完成されたものではありませんでした。おそらく京都で殆どの人が知らないであろう、国産の、それも大手企業ではない小さな蒸留所のラムを使ってメインのカクテルを作るということは、barにとってかなりのリスクを冒すということです。

ブランド、広告戦力なしで、自分の信じる感性と味覚だけで、お客様に納得して頂けるかどうか…
沖縄から帰ってきて、店で初めてこのサンタマリアでダイキリを作って飲んだとき、それまでに感じたことのない豊潤な大地の匂いがしました。遥か昔、ジェニングス・コックスがキューバのダイキリ鉱山で作って喉を潤したカクテルも、もしかしたら同じ香りがしたのではないかと想像できるような。

僕はかれこれ30年ほどbarというものに携わってきたけれど、そんな風にして何の予備知識もないお酒を自分の店の”お勧め”にしたのは初めてです。つまりそのポリシーとか”在り方”について、が、この店の”象徴”な訳です。そしてこれからもそういったものを探していきたいと思っています。
さて去年の年末、とても嬉しいことがありました。

よく、年末に”今年の10大ニュース”とか言い合うでしょう? 他のジャンルは色々と迷うことが多かったのですが、お酒についてのニュース、出来事はそれがno.1でした。
関東から大阪に出張していたお客様、わざわざブログを読んで京都まで月読に足を運んで頂きました。

数杯飲んだあと、バックバーに並んでいる酒の列を見て、「ちょっとその酒を見せて下さい‼︎」とそのお客様。

それは数量限定で発売されたサンタマリアの樽出し”T1”。

そのお客様の話によると、以前、アメリカのシアトルで(出張で)ラム専門のbarに入ったそうです。そこは在庫総数で全米no.2の300種という本数を持っていて、そこのマスターが、彼が日本人だと知るとスマホの写真を見せながら、「君はこのラムを知っているか? 私が日本に行って飲んだラムの中でいちばん美味かったラムだ!」といったらしい。

彼は知らなかったし、飲んでみたかったので注文すると、「私も是非とももう一度、飲んでみたかったので、帰国後すぐにネットを調べてみたが、既にソールドアウトだった…オーマイガー」というような返答だったらしいです。

そして「君が日本に帰ったら探してみるといい、ラムが好きなら是非とも飲んでみるべきだよ」と。
サンタマリアが遥かアメリカで、それも全米トップクラスのラム専門barで高い評価をされているのがとても嬉しかったので、このニュースが2015年の”酒に関する10大ニュース”のトップです。

生産関係者ではないのですけどね。w



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