SINCE 2004
京都の繁華街から外れた場所。
ジャズレコード、蓄音機、シーメンスのスピーカー、ビリヤード台、昭和歌謡、古書…シングルモルトをはじめとする蒸留酒とスタンダード・カクテル。
外の世界とは少しだけ時間の流れが違う場所。
詳しくはオフィシャルサイトをご覧下さい
2013年5月17日金曜日
綱渡り
★Bar月読の窓から月が見えたので写真に撮る。
電線が絡み、校舎のグランドにネットが貼られていて、まるで三日月がサーカス小屋で綱渡りをしているかのよう。
ミヒャエル・エンデの短編を思い出す。
『綱渡りフェリックス・フリーゲンバイルのバラード』
フェリックス・フリーゲンバイルという名の綱渡りがいた。
彼を誰もが認めていて、でも彼にとっては金も讃美も欲しいものではなかった。
彼には技だけが総てだった。
芸の学校に入ると すぐに誰にも負けなくなった。
1年が過ぎ、先生よりも上手くなった。
先生は言った。
「さようなら天才、私が教えることはもうないのだ」
そして彼は街に出た。
彼が綱を渡ればどこでも喝采が響き渡ったが、彼は師を探し求め続けた。
でも彼以上に上手に綱渡りをする人は誰もいなかった。
やがて彼は綱の代わりに針金を張り、それをどんどん細くしていった。
数年後、彼は塔から塔へと張られた髪毛の上で舞い踊り、嵐の中でも渡って行った。
そして最後には信じられない事が起こったのだ。
なんとある日、彼は塔と塔の間に何も張らずに、無の上で空中を舞い渡った。
人々が見守る中、一陣の風が吹くと彼は空の彼方に連れ去られた。
風が彼を何処に連れていったのか、誰も知らない。
ある時、天文学者が望遠鏡で宇宙を覗いていたときにそれを見た。
「幻ではないさ、宇宙を星から星へと踊るように渡っていく、かの綱渡りがそこに居たんだよ」と。
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