「ねえ、知ってる? タンカレーの瓶はロンドンの消火栓の形なんだって!」
手に持ったジンライムのグラスを眺めながら、気を取り直したように彼女が再び話しはじめた。
「…ああ、そうだね。けっこう有名な話だよ、それ」
僕は素っ気なく答え、そしていつもと同じように少しだけそれを後悔する。
僕の目の前にあるグラスは、もうほとんど飲み干されていて、彼女の手の中には氷が半分溶けて水割りになったジンライムが、カラカラと何かの死骸のような音をたてている。
「…でもさ、消火栓を真似たなら、どうしてタンカレーの瓶は緑色なの? どうせならちゃんと赤にすればよかったんじゃない?」
彼女はまるでタンカレージンの担当責任者が僕であるかのように、僕の目をまっすぐに見据えながらそう問い詰めてきた。もしこれがチェスのゲームだったら、そのあとに「チェックメイト」が聞こえたはずだ。
「それはね、酔っぱらいが間違って消火栓の中身を飲んでしまわないためなんだよ、きっと」
僕は彼女の目を見ずにそう答えた。
シングルプレイのつもりが、いつか気づけばロングバージョン
似たもの同士のボサノヴァ、ちょっとヘヴィめなラヴソング
タンカレーの”ロングバージョン”、『タンカレーラングプール』。そのままでライムと生姜の風味が特徴。瓶もノーマルのタンカレーより少しだけ大き目です。
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