前回の(中)において、
美味しさの定義(1)では『料理(食材)のもつ甘さ(旨味)のバランスが最も取れている状態』
と取り決めました。(#^.^#)
この甘さ(旨味)のバランスが取れている状態は点ではなく、間隔として存在します。これは個人においての嗜好の振れ幅なのですが、この甘さのバランスが取れる一定の区間を便宜上『スイート・スポット』(*1)と名付けます。(以後、”SS” と表記します)
*1 やはりこの言葉も”甘い”のです ”サワー・スポット”なんて言いませんね
そうすると次にこういった問題が現れます。
( ̄Д ̄)ノ
★2つ以上の異なる料理で尚且つ、スイート・スポットの取れたもの同士の優劣はつけられるか?
・・・という命題です。
例えば ・・・
塩をかけて甘さが完璧に引き出された老舗の豆腐
VS
秘伝の甘辛ソースをかけて旨みを最大限に体現したお好み焼き
という対決です。
「そんなもの、好みの問題やろう!!」と言ってしまえばそれまでです・・・
ここは無理やりにでもリクツで優劣をつけないと、本題のお酒についての説明が出来なくなるので、次のように考えて決着を付けます。
1 甘味の種類はひとつ(複数の食材による”異なった甘味の数”は本来なら多大に影響するはずですが、今回は話を簡略化させたいので、甘味は常に『1つだけ』とします)
2 甘味以外の味覚(酸味、塩味、苦味)&刺激という辛さをそれぞれ『1』と数え、その総数を”N”(*2)とします。
*2 小文字が使いにくいので大文字表記に・・・
わざわざ書くまでもない実に簡単な計算式ですが・・・
(T_T)
豆腐{SS+1} < ソースのお好み焼き{SS+N(N>1)}
要するに”味の成分の多い方の勝ち”ということ設定します。
★味の瞬発力と持続力
本来、Nの数は優劣ではなく味の特性だと考えています。
(-。-)y-゜゜゜
SSが取れている場合、Nが少数であるほどその食物を口に含んだ時の味は鮮烈でインパクトが強く、味覚の感度は跳ね上がります。ただし、構成する味覚の種類が少ないぶん、持続はしませんし、食べる総量も飽きが早く、少量で満足します。
逆にN数が多くなるにつれ、お互いの個性をかき消し合い、最初のインパクトは強くはありませんが、味覚構成が複雑なため、余韻が長く続き、飽きがくるのを遅くする作用があります。
例えば”瞬発力型の味”はお刺身であり、”持続力型の味”はブイヤベースで想像してみてください。
★相性の良さも問題です!
もう一点、重要なことがあります。
(;一_一)
もし二つ以上の食材を掛け合わせて調理をする場合、お互いに同じ味覚成分を持っているもの同士の方が、より相性が良く、美味しく完成します。
例えば・・・
a (甘・酸・辛)+(甘・酸)
b (甘・酸・辛)+(甘・苦)
だと、bの方がより共通する味覚の数が多いので相性が良いといえます。
これを今回、便宜上、『和合性(*3)が高い、和合性がある』と言うことにします。
(*3)本来は生物学用語ですがここでは無関係です。造語として捉えてください
★刺激は『美味しい』を凌駕する・・・ときもある・・・
料理において、辛さ(刺激)は味覚ではない、ということは有名な話ですが、Barにおいては『おいしい仕組み』を作るための『甘味』と同等なくらい重要な要素として捉えています。
(ー_ー)!!
というのは、お酒に必ず含まれているアルコール(度数)、これは他のどの味覚でもなく、”刺激”に他ならないからです。特にカクテルの選択や制作においては、アルコール度数の調整、考慮は最重要課題であって、アルコール度数の極端に弱いお酒などをベースに使う場合であっても、アルコール外の副材料で代替の刺激を補っています。例えばそれは炭酸ガスであったり、柑橘であったり、スパイスだったりします。
*ー まとめ ー*
美味しさの定義(ここからは酒類に特化します)
(1)スイート・スポットに当てる(お酒のもつ甘さ(旨味)のバランスが最も取れている状態)
(2)味の複雑性(味覚の要素が多いほど飽きがこない)
今回はお酒の評価をするための定義付けなのでより複雑な味の方を上に考えます。
(3)和合性が高い(ベースになるお酒と同じ味覚成分をふくんでいる副材料との相性)
(4)刺激(甘味に見合った酒のレゾンデートルを損なわないアルコール・バランス)
・・・ ('A`) ようやく前説が終わりました。
次回から本題に向かいます。
『おいしいの仕組みを考える Ⅳ 』は、
~作るのが最も難しいカクテルはなんだろう?~になるはず・・・です。
追伸 このブログにおける記載はあくまでも個人的主観によるものであることをご了承ください。
とんでもなく間違っている可能性も否定できませんので・・・
m(_ _)m