*ーー* 優しすぎたアクエリアス (前) *ーー*
★物事に裏と表、陰と陽があるように・・・
難しいカクテルといわれるマティーニはアルコールの刺激に慣れ、ますますそれを求めた人達が、スイートスポットから大きく外れた中に僅かな甘味(旨味)を、バーテンダーは作り出し、それを飲むお客様はそれを探し出すという、ある意味で知的で哲学的でもある、大人の王様(マティーニ)ゲームでした。
マティーニが刺激の強さを求めた人達が創り出したゲームであるなら、また逆も存在するのです。
つまり、アルコール(蒸留酒)の強さに対応できないで、より刺激の弱さを求めたカクテル。
そのカクテルの名前は『水割り』(ここではウイスキーに限定します)
★よく勘違いされていますが・・・
水割りは日本固有ではなく、もともと日本にウイスキー文化がなかった頃から欧州で飲まれていました。それは小説にも数多くみられるシーンです。
それらの小説などの状況や会話の前後からすると、水割りは決して日本人だけがアルコールに弱いから飲んでいる訳ではなく、彼等(外国人)もまた”蒸留酒の刺激が強すぎる”故に水で薄めて飲んでいたという事実です。ただ違うのはおそらくその飲酒人口における水割りを好む割合が日本人は多いということだけなようです。
★『水割り』の前に必ず押さえておかなければならないポイント・・・
A ウイスキーは樽から出した段階でアルコール度数は60度弱ほどあります。(30年以上長期熟成させた高級ウイスキーの中には樽の中で熟成中に自然に度数が50度以下に下がることもあります)
B 瓶詰めする前に加水して40度程にアルコール度数を下げます。ここで大事なのは”この度数が最も美味しいからではない”ということです。理由は当初、「ただ何となく人間が飲むならこのくらいが妥当だろう」といういい加減なものでした。
もうすでにこの時点で水割りだと言えなくもありません(笑)
C 人間の味覚ではアルコール度数40度を超えるようなものは”正確に判別できない”という事実があります。現にウイスキーを造ったりブレンドしたりしている職人たちも、ウイスキーをテイスティングするときは必ず20度に加水したものを使って行います。
D 『トゥワイスアップ』という飲み方があります。ウイスキーを2倍に加水して薄め、約20度のアルコール度数に落とします。テイスティング・グラスもしくはノージング・グラスと呼ばれる小さいワイングラスのようなものを使います。トゥワイスアップは香、味を確かめるのに最も優れた飲み方とされていますが、これはウイスキーのポテンシャルがアルコール度数、20度くらい(下回ることはない)が最も本領を発揮できることが解っているからです。
E トゥワイスアップに氷は入れません。”冷える”ということは香が立つのを妨げるからです。
F トゥワイスアップは水割りの一種ですが、ここでは氷の入った、ウイスキーの同量以上に加水されたものを『水割り』と呼び、トゥワイスアップとは区別します。
G ここでは例外的な話ですが、ウイスキーによっては20度まで落とすと美味しくなくなるものも存在します。水を一滴だけ垂らすのがベストなものや、ストレートで味わうのが最も美味しく感じるものもあります。それらを含めた上でウイスキーの加水量は詰まるところウイスキーと同量以下が良いと定義されています。これはこのブログで勝手に作っている”美味しさの定義”とは違い、世界共通のものなのです。
★理不尽なレシピ・・・
さて大問題です。トゥワイスアップがウイスキーの味を楽しむ最も優れた配合なら、そのアルコール度数の刺激に耐えられない(美味しく感じない)人たちの水割りのレシピは加水をどんな分量にしても最初からもうすでに”美味しくない”ことが約束されていることになります。
こうなってくると水割りはただ単にストレートやトゥワイスアップ、もしくはオンザロックが強すぎて飲めないから、この方がマシというだけになってしまいます。
次回、問題を解決していきます。
ちょっと余談ですがBで加水された水や元々の仕込み水。これを使って水割り(トゥワイスアップ
を含む)を作ると美味しいとされています。
これは美味しさの定義③の和合性に当てはまります。
水に含まれるミネラル分が同じだから相性が良いのですね。
実際、大きな酒屋さんに行くと、スコットランドの水が売られていることもあります。
ただ一般的ではないので、家庭で水割りを作る場合、より軟水を使う方が美味しくできると思っていれば間違いない筈です。(稀に硬水で仕込まれるウイスキーも存在します)
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