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2012年10月12日金曜日

月読・今昔物語Ⅲ


★月読を作って頂いた大工さんは70歳をこえる長崎県、五島列島出身の方でもとは船乗りだったそうです。息子さんお二人も大工を継いでおられて親子3人で工事に携わっていただきました。

★この大工さん(オヤジさん)、釘を1本も使わずに家を建てられる技術をもった数少ない腕前の持ち主だそうで、本来は月読のような小規模の、それも安く値切り倒したような工事をする方ではないと私の友人の工務店社長(月読工事監督)が何度も言っていましたが、たまたま手が空いていたらしく引き受けていただきました。

★月読の床板は大工さん達に来ていただく前に自分で剥がしておきました。(経費節減対策の一貫です)


★この剥がした床板や垂れ壁に使われていた材木は100年近く前に使われていた材料だけあって良質のもので、しかもほどよく使い込んだ風合いがあったのでそのまま店の腰板やカウンターの垂直部分に使われています。


★先程、ご紹介した『釘なし』の仕事も出来る大工さん、こんな廃材を再利用する仕事は初めてだったにもかかわらず楽しんで作っていただきまして、フシを揃えて模様を作ったり①、長い年月の間にできた日焼け跡で柄を作ったり②して、店に望外のアクセントをつけてくださいました。


①(写真上)入口横の腰板。4つのフシでアールが描かれています。




②(写真上)入口正面。 日焼け跡をレンガ模様に見立てて。





★入口付近、遠景。



★こうして出来上がったBar月読ですがちょっと面白いエピソードがあります。

★月読を開店するにあたってアドレスを知っている方に案内状を送らせて頂いたのですが、オープン当日にある年配の女性から電話がありました。

「もしもし、お久しぶり。開店おめでとうございます」

「ああ、〇×△さん、お久しぶりです。おかげさまで・・・ありがとうございます」

お互いにひとしきりの挨拶を終えたあと、その方が、

「そこ、昔、私が50年間住んでいた家なのよー!!」と。

★聞けば彼女の祖父母からのお住まいだったらしく、家業としておもちゃ屋さんをこの場所でされていたそうです。その後、彼女の代になって別の家に引っ越され、その新しい家の近くでおもちゃ屋さんも継続されていました。(新しい方のお店は何度か伺ったことがありました)

★そして一旦、この建物は印刷会社になり、今では1,2階がセパレートになり2階にBar月読があります。私は印刷会社後の荒れた建物しか見ていないので、往時の賑やかだったであろうおもちゃ屋さんの姿は知りません。でもきっとお小遣いを握りしめて子供達が集まる夢のような場所だったのでしょう。


★これからも”縁”というものを感じつつ、この場所に携わっていただいた方々の想いを大切にして、この場所と建物を大事に使わさせていただこうと思っています。





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