★バーにおいてバーテンダーが最もよく使う道具といえば、間違いなく『バー・スプーン』です。仮に一日中シェーカーに触らないことがあったとしても、バースプーンに触らない日はないでしょう。当然、バーテンダーにとって最も愛着のある小道具のひとつですが、このバー・スプーンの使い方だけでそのバーテンダーの力量がわかるとさえ云われています。
★遠く夜景を見て、街の灯ひとつひとつにそれぞれの人生や生活があるのだと感じるように、店のドアを開け、そこで時間を過ごし、またドアの向こうに帰っていくお客様を見ていると同じように感じることがあります。
★それぞれの物語のワン・シーンを例えばバーで過ごすわけです。人によってその場面はクライマックスであったり、CMタイムのようにちょっと一息いれる時間であったりと様々ですが。
★月読のような小さな町外れのバーであっても、10年近くこの地に根を張り、何人もの過ぎゆくお客様のワン・シーンを見ていれば、その人生やドラマが複雑に絡み合い、重なり合って街全体の物語を形成しているのがよくわかってきます。
★それはあたかも街という大きなミキシング・グラスに注がれた何人もの人生という酒を、空の上から見えない誰かにバー・スプーンでグルグルと掻き混ぜられているかのようです。
★出来上がったカクテルはやがて飲み干され、氷も溶けてカラになり、それでもまた酒は注がれ、バー・スプーンが音もなくまわされる、終わることのないこの繰り返しです。
★ただ、注がれる酒は甘いだけではすぐに飽きてしまうし、苦いだけでは飲めたものではありません。そう思うとこの見えない誰かが創った『街物語』というカクテルは実によく出来ていて、そのバー・スプーン捌きからこの謎のバーテンダーは凄腕なのだと思うわけです。
★この曲を聞きながら、今日はぼんやりとそんなことを考えていました。
http://www.youtube.com/watch?v=QWBVJVSO0sQ
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