★ある日のお客様との会話。空港と駅ではどちらが好きか?というもの。
★この時のお客様は断然空港だそうで、そこに行くとまるで自分がこれから旅行に行くような高揚感を味わうことができるのだそうです。
★私は空港の徹底された搭乗管理が好きではなく、もともと飛行機に乗るのが怖い方なので断然、”駅”派です。”旅情”という言葉がしっくりくるのも好きですね。
★何より空港には無くて駅にあるものが特に好きなのですが、それは何か分かりますか?
★それは”発つ人”と”送る人”がそこで共有する別れの時間の長さです。空港は搭乗ゲートで否応なく離されてしまいますが、駅は列車の窓ガラスを挟むだけで最後までお互いの近くにいられます。
★乗物が動き出してからも飛行機はあっという間に消えていきますが、列車はゆっくりと動き出し、別れの時間はスローモーションのように琥珀色の中で過ぎていきます。
★この列車が動き出してから見えなくなるまでの長い時間、当人たちにとっては短いであろう時間の中に言葉には出来ない幾つもの会話があります。
★行き交う人々の喧騒、車輪のきしむ音、鉄と油のにおい、消えていく赤と青の光、むせび泣く汽笛・・・駅においてのシーンは幾つもの琴線に触れる要素があり、どうしようもなく五感を擽ります。
★さて、そんな駅での場面を思い起こさせるウイスキーがあります。
グレンフィディック 18年 (シングルモルト・スコッチウイスキー)
グレンフィディックは12年のものがポピュラーなのですが、この場合は18年ものでなくてはなりません。18年もののフィディックは甘口のシェリー樽で造られていて、そのため濃い琥珀色、鉄と油の混じった甘く焦げた香がして、何より18年という長い時間を感じることが出来るので、まさに”駅”においての映画のワンシーンを観るような心地にさせてくれるからです。
★ブログ・タイトルをレイモンド・チャンドラーの小説「長いお別れ」に引っ掛けて付けたので、ご紹介するお酒はこの小説にでてくる有名なカクテルでもよかったのですが、内容が時間の”長さ”についてだったので断念しました。何故ならこの小説ではこんな有名なセリフがでてきます。
・・・「ギムレットには早すぎる」 m(_ _)m
PS. 駅での別れのシーン。いちばん好きな場面は映画ではなくてこの曲にあります。
http://www.youtube.com/watch?v=4IT_ZHGsQXw
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