☆BARを使い慣れていないお客さまにとって、よく戸惑われることのひとつに殆どのBARにはメニューが置いてないことが挙げられます。
☆どうしてかというと、そこにいるバーテンダー自身が”メニュー”だからです。分かりにくいですか? わかりませんよね。もう少し詳しくご説明いたします。
☆そもそもバーテンダーの仕事は大きく3つに分けられます。
- 接客(サービス)~お客様が店内で快適に過ごせる時間、環境を提供する
- 調理 ~カクテルや水割りをつくったり、ワインやビールを美味しくグラスに注ぐ
- 案内 ~お酒の紹介、仲介(生産者からお客様へ)、説明をする
☆例えば月読でつくれるカクテルをメニューに全部あげれば、たぶん200種類では済まなくなります。カクテルの名前だけ見てすべての味の分かる人は普通、いません。最初から最後まで目を通すのも大変です。
☆たとえレシピが書いてあったとしても『ドランビュイ』『ベネディクティン』『アンゴスチュラ・ビターズ』なんて書いてあってもなんのことだかさっぱり分かりませんよね?
☆ウイスキー類についても同じです。メニューには銘柄と値段くらいしか情報がないので、飲んだことの無いウイスキーが辛口なのか甘いのか?香りの強さ、樽の種類など、その日に飲みたいお酒に適合するものを自分ではわかりません。
☆バーテンダーに聞けば済むことですが、皮肉にもメニューがあるということが逆に「尋ねる」という行為を妨げる要因になってしまいます。
☆結果、分からないまま「なんとなくこのカクテルの名前、聞いたことがあるなあ・・・」くらいの理由でアルコール度数のとても強いマティーニなんかをあまりお酒を飲めない人が注文してしまうことが多くなってしまいます。
☆その挙句、お客様は最後まで飲めなかったり、美味しくなかったり・・・で、もうその店に行かなくなります。こうなると美味しく飲めなかったお客様も、二度と来てもらえなくなる店にとっても不幸です。
☆メニューがあるということは『値段がひと目でわかる』という利点があるものの、お客様とバーテンダーとの会話、それも『お酒の案内』というBARでの大きな楽しみのひとつをなくしてしまう可能性が大きくなるのです。(メニューがあって尚、案内もできるというのが理想ですがそれには複数のスタッフが必要になります)
☆それに自分が口にする飲食物の情報を知るということは、それをより美味しく感じさす一因になります。料理だってそうでしょう? 産地や調理方法、素材など知ったほうが美味しく感じた経験は誰にでも思い当たるはずです。
☆さて、お客様から「こんなお酒を飲みたい、こんな味を探している」とサジェスチョンがあるとき、”作る技術”と同様にバーテンダーのセンスや力量が問われます。お客様との会話からベスト・マッチのお酒を提供できるかどうか?! 結果はすべてバーテンダーの責任です。
☆お酒をあまり知らないお客様、知識なんて必要ありません。そのためのガイドブックがバーテンダーです。結果として美味しく飲めなければ、それは店の責任でありバーテンダーの敗北ですから。(笑)
☆バーテンダーを困らすような注文をすることはBARにおいての醍醐味のひとつかもしれません。 もしその店にメニューがあったとしてもそれは閉じたままで、ちょっと意地悪なオーダーを楽しんでみませんか?(笑) お酒の知識がゼロであったとしても、メニューなしに自分の好みを伝えて注文することはとても楽しいことなのです。なぜならどんなに知識豊富なバーテンダーとでも対等の勝負、駆け引きが出来るからで、しかも美味しく飲めて当たり前、決してお客様が負けることのない勝負なのですから。
0 件のコメント:
コメントを投稿