SINCE 2004
京都の繁華街から外れた場所。
ジャズレコード、蓄音機、シーメンスのスピーカー、ビリヤード台、昭和歌謡、古書…シングルモルトをはじめとする蒸留酒とスタンダード・カクテル。
外の世界とは少しだけ時間の流れが違う場所。
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2012年9月16日日曜日
注文の仕方、あれこれ Ⅱ
その2 《 「私のイメージでカクテルを作ってください」というご注文》
☆さて、よくあるご注文のひとつに「私のイメージで!」とか「彼女をイメージして作ってください」というものがあります。主に女性からのご注文であったり、女性が女性のために(遊びながら)オーダーされます。意外なことにカップルで男性が女性のためにこの「彼女のイメージで・・・」というご注文は殆んど記憶にありません。
☆そもそもこの「彼女のイメージ・・・」なんていうオーダーはオーセンティック(正統派)なBARでは受け付けてはもらえないでしょう。月読のような気楽な普段使いのBARならおアソビの一環でお引き受けいたしますが。(笑)
☆この「彼女のイメージ・・・」注文はお客様が複数(3人以上)のときが多く、概ね場が盛り上がっています。つまりお客様にとってはBARで過ごす間のアトラクションのひとつなのですね。中には明らかに”ウケる”、”笑える”ものが作られてくるのを期待している方々もいらっしゃいますが、よほど店とそのお客様方が親しい関係にない限りは、その人のイメージを落として笑いを取るお酒をお出しするのは難しいですね。まさか『ブラッディーメアリー』とか『エル・ディアブロ』(悪魔)とか『ダーティーマザー』なんて作る訳にはいきませんから。(笑)
☆ただ逆にいえば、この「イメージ」注文が行われるときはお客様とバーテンダーとの間にそういった暗黙の了解や予定調和が出来上がっているので、実はバーテンダー側にとってそれほど難しいご注文ではないのです。『アソビ』という前提があり、その他は”一切おまかせ”なので飲み手側のアルコールの強さを考慮する必要がありません。(本来はいちばん考慮するところです)仮にご本人にとって強すぎるアルコールであったとしても、「私、こんなに強い女って思われてるの~(笑)」といった感じで済みますからね。実際は美味しく飲んでいただけるようにベスト・マッチしたアルコール度数を考慮しますが、場の雰囲気によってはわざと心持ち強めのものを作って『盛り上げ』を重視するときもあります。
☆では本題です。バーテンダーは「私(もしくは彼女)のイメージでカクテルを作ってください」というご注文に対して、どういったアプローチで考えるのかという、ある種の種明かしです。そしてこれをするのは理由があるのですが、それは最後に。
☆「私(もしくは彼女)のイメージでカクテルを作ってください」というご注文に対して、私は二つだけご本人に質問します。
「そこそこ平均程度のアルコール度数のものでも大丈夫ですか?」
「何か嫌いなお酒はありませんか?」
☆これがクリアされれば後は今日初めてお会いした方のイメージを考えなくてはいけません。さあどうしましょう?
☆まずその方の『好きな色』、『今日の特別な色』を考えます。服、バック、靴、アクセサリー、ネイルモバイル(保護用カバー)、口紅・・・などから総合的に考えて、そのお客様の『今日、もっとも相応しい色』を決めます。少なくとも暖色・寒色、柔らかい・クッキリの好みを判断します。もちろん、これはカクテルの色の参考にするのですが、使うグラスの色に反映さす場合もあります。
☆次に大まかな『性格の傾向』や『今日の気分』を考えます。これはカクテルの味の方向性という意味合いもありますが、それよりはカクテルの”ネーミング”に反映させます。お洒落なもの、かっこいいもの、可愛いもの、ユーモアのあるもの、意味深なものなど、スタンダード・カクテルの楽しみは味だけでなくその『名前』にもありますし、特にこの「イメージ」カクテルには重要な要素です。
☆ではそれを判断するのに”何処を観るか”、ですが・・・
爪の長さ、腕時計、アクセサリー、服、モバイルや鞄に付けられているストラップなどの小物、靴の種類やヒールの高さ、姿勢、あと、注文時のやり取りのときのご本人の視線の向きや躰の向きなどで判断します。(といっても、こちらの思い込みに過ぎないのですが)そして性格、趣味、嗜好、気分が判断できたらそれとリンクするようなカクテルの名前をいくつか探します。
☆あとは作るカクテルの味の方向性です。これはもっと前に仕掛けを用意しておきます。「・・・イメージでカクテルを作ってください」というご注文がでた段階で、さりげなく皆さんに『ここに(BARに)来る前に食事に行ったときの話』を聞いておきます。複数でのBAR利用はだいたい2次会的に使われることが多いので、事前に食事をされているはずなのです。例えばこういう会話をします。
「いらっしゃいませ。・・・楽しいそうですね! 今日は皆さんでお食事会ですか?」
「どんなお料理を召し上がってこられたのですか?」
「へぇ~そうですか! 美味しそうですね。やっぱり中華だと食後のデザートは杏仁豆腐ですか?」
☆その食事内容によってはその後に『喉が渇く』『甘いデザートが欲しくなる』『デザートを食べたので甘いものはいらない』『さっぱり洗い流したい』『お腹が膨れているので量は飲めない』『繊細な味がわかりにくい(濃い味の食事をした)』など、おおよそ次の欲しい味の見当をつけることができます。
☆だいたいこれで『私のためのイメージ・カクテル』の参考材料は揃います。
あとは野となれ山となれ。(笑) お気に召していただければ幸い・・・というか”ラッキー”です。
☆さて今回、こんな裏話的なことを書いたのは理由がありまして、デートをするときにBARを利用されることも多いと思います。そのときのご注文なのですが、男性がまず自分のオーダーを決めてこちらに伝え、その後、女性に「何にする?」と問いかける場面、よくあります。
☆問われた女性がどうしていいか迷っているので仕方なく男性が「じゃあ、彼女には軽いカクテルを何か・・・」とか「彼女にはお任せで!」とか。最悪なのは男性もそこから進めなくて、女性に仕方なく「彼と同じものでいいです・・・」と言わせてしまう人もいらっしゃいます。同じものって・・・ウイスキーのオン・ザ・ロックだったりします。大丈夫ですか!?
☆カップルの場合、オーダー時でもなかなかこちらが話に入っていきにくい場面も多々あります。エスコートする男性にはぜひ孤独に耐えて頑張って欲しいものです。(笑) 少なくとも女性に「同じものでいいです」とは言わせてはいけませんよ。
☆お酒の名前を知らなくても、知識がなくても、バーテンダーがヘルプに入らなくても大丈夫です!(二人の雰囲気、壊されたくないでしょ?(笑))
☆もし「彼女になにか軽いカクテルを」というのなら少しだけ言葉を付け足して、「彼女には何か軽いカクテルを、ピアスの色に合わせて柔らかいピンク色をしたものを」、なんて注文できたら二人のBARタイムが素敵な時間になると思いませんか?
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