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2012年8月13日月曜日

祈りのカクテル

★チャップリンの映画で『どの作品がいちばん好きか?』を問われると迷ってしまいますが、『どの作品がいちばん印象深いか?』を問われると、それは『独裁者』です、と即答できます。

★チャップリンはこの映画でヒトラーへの批判をするのですが、それはヒトラーの”後”ではありません。ヒトラー全盛の同時期に作っています。

★それまでチャップリンはサイレント・ムービーにこだわっていました。トーキーが主流になっていてもです。でも『独裁者』最後のシーンで演説を入れたいがために自らのポリシーを捨ててまでこの映画の制作に向かいます。

★この映画をきっかけに(諸説ありますが)母国を追放されてしまいます。



★当時も、たぶん今でも、この映画に対する人の見方は様々で、批判的な見解があるのも知っています。

★でも偏見なく普通に観れば、彼がどんな想いを込めてこの映画を作ったかなんて想像に難くありません。

★チャップリンのこの映画を思うとき、タロットカードの頂点のカード『ザ・ワールド』をさしおいて、最後のナンバーに『フール(道化者)』がトリを飾っている理由がよく分かる気がします。



★さて、彼の名前のついたカクテルがあります。


~ チャーリー・チャップリン ~

スロージン
アプリコット・リキュール
レモン(稀にライムのレシピあり)

以上をシェークして氷を入れたロック・グラスまたはカクテル・グラスに注ぎます。
(店によりスタイルが違います)

★アルコール度数も弱く、甘酸っぱく濃厚な味ですが後口は爽やかなカクテルですので女性に多く好まれます。


★このカクテル、私にとっては”喜劇王”や”有名俳優”のイメージではなく
チャップリン=独裁者=『平和の祈り』のカクテルとして存在していて、かなり思い入れの強いカクテルのひとつです。

★月読で作る”チャーリー・チャップリン”では、レモンではなくライムを使用するのも、緑色の入ったグラスを使うのも、”祈り”の気持ちをレシピに含ませたい思いからです。


★少し『独裁者』に戻ります。

『独裁者』ではちょっと間抜けな床屋のチャーリー(独裁者のヒンケルと瓜二つの設定でチャップリンの二役)が映画の最後で間違われて独裁者と入れ替わり、大観衆の前で『民衆を服従さす演説』をしなければならない羽目になってしまいます。

★私がこの映画で最も印象に残るのは勿論、このラストシーンの演説なのですが実はもうひとつあります。それはこの映画はチャップリンの二役とされていますが実際は違います。『床屋のチャーリー』と『独裁者ヒンケル』そしてチャップリン自身の『チャーリー・チャップリン』が最後の演説で登場するので、彼は実質三役なのです。

★最後の演説、床屋のチャーリーにできる訳ないのです。それは前半からの床屋のチャーリーを観ていれば簡単に分かります。

★とことが間抜けな床屋のチャーリーは演説のシーン、顔(表情)が見事に変わります。それは床屋のチャーリーでも独裁者ヒンケルでもなく、紛れもないチャーリー・チャップリンその人なのです。

★普通ありえないでしょ? 自分の素の演説(ヒトラーの批判)を6分程するために丸々映画を一本撮るなんて!


★YouTubeでもラストの演説は観ることができますが、字幕の部分を書き写しました。(字幕では『Fight』を『戦え!』としていましたが、私には違和感があったので『立ち上がれ!』に差し替えてあります。)


~ チャーリーの演説 ~
(大軍の兵士の前で)

悪いが私は皇帝になりたくない。
支配するよりも人々を助けたい

ユダヤ人も黒人も白人も お互いに助け合わなくてはならない

他人の幸せを願い、憎みあってはならない

地球にはすべての人を包む豊かさがある
人生は自由で楽しいはずなのに
貧欲が心を支配し、憎悪をもたらし悲劇と流血を招いた

スピードも役にたたず、機械は貧富の差をひろげた
知識を得た人は優しさをなくし、心の通わない思想で人間性が失われた

知識より大切なのは思いやりと優しさ
それがなければ機械と同じだ

航空機やラジオで人々が近づき
それで世界をひとつにできる

私の声が世界中に伝わり失意の人々にも届くだろう
彼らはこの歪んだ支配体制の犠牲者である

人々よ、希望を捨てるな
貧欲が招いた不幸も、人として生きる不安も
独裁者の死と共に消え去る

そして民衆は政権を取り戻す

兵士よ 良心を失うな!
独裁者に惑わされるな!

君たちは支配され、まるで家畜のように扱われている

彼らの言葉を信じるな

彼らには血も涙もない

君たちは機械ではなく人間なのだ

人を愛する心を持て
愛があれば憎しみは生まれない

『神の国は汝らのなかにある』
聖書の言葉だ

君の中にも 私の中にもその力がある
全てを創造する力は君たちの中にあるのだ

自由で希望に満ちた世界を作ろう
民主主義の名のもとに団結しようではないか

新しい世界のために立ち上がろう
雇用や福祉が充実した社会を作ろう

独裁者たちも同じ約束をした。
だが口先だけで約束を守らなかった

約束を果たすために立ち上がろう

世界を解放し、国境をなくし、貧困や憎しみを消し去るのだ
良心のために立ち上がろう

科学の進歩が人々を幸福に導くように
兵士よ 民主主義のために団結しよう

*―――*―――*―――*―――*


ハンナ(彼の恋人)、聞こえるかい?
顔をあげるんだ

太陽が顔を出し 明るく照らし始めた

新しい世界の始まりだ

人々が憎しみや貧欲や暴力を乗り越えた

見上げてごらん
人々の魂には翼があったんだ

やっと飛び始めた
虹に向かって飛んでいる

希望の光に向かって
すべての人の輝く未来に向かって

さあ、見上げてごらん・・・



★ヒトラー亡き後も演説はまだ終わってはいません。








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