ホームページ

〜Bar月読ホームページ〜
http://bartsukuyomi.wix.com/home

2012年6月30日土曜日

てるてる坊主のウイスキー

★シングルモルト・ウイスキーに”花と動物シリーズ”というものがあります。ラベルに蒸留所の周りに生息している動植物の絵が描かれている、小粋なウイスキーのシリーズものです。
(詳しい説明を書くと、かなり”マニア”な内容になってしまうので、知りたい方は”花と動物シリーズ”を検索してみてください)

★このシリーズ、いろんな意味で賛否両論あるのですが、個人的にはラベルの絵が好きでよく仕入れています。


★本日、月読にご夫婦でお越しいただいたのは関東からのお客様です。BAR月読は何故か関東からのお客様にご贔屓が多く、このご夫婦も年に2回は京都観光とあわせてよくご利用していただいております。

★今日はお二人で7、8杯ほど飲まれたのですが、そのうちの一杯が”花と動物シリーズ”のベンリネスという銘柄のウイスキーでした。

★明日、関東にお帰りになるそうですが、日中はまだ京都観光なのでしょう。 ベンリネスにのラベルに描かれているのは「ベンリネス山に生息する黒雷鳥」です。古来、日本では雷鳥は雷を祓い、嵐を鎮める鳥として崇められてきたそうです。


★京都はまだ梅雨の真っ只中。どうか雷鳥の霊力で、おしどり夫婦が帰路につくまで雨雲を振り払ってあげて欲しいものです。

★お気をつけてお帰りください。遠くからありがとうございました。

2012年6月29日金曜日

What a defference a day makes  ~縁は異なもの~

★BAR月読には緑と赤のカクテルグラスがあります。このふたつのグラスはペアで”ワイン・グラス”として売っていたもので、もう26年も前に買ったものです。


★当時、大学生であり、初めてBARという場所で働き出した頃でした。商店街を歩いていて、ふっと雑貨屋の店内を覗き込んだとき、それが目にはいりました。

★不思議です。当時、自分でBARを営業しようなんて思ってはいなかったはずなのに、何故かこのグラスを見たとき、「あっ!!、いつか自分の店でこのグラスを使おう!」と衝動的に思いつき、決して当時のお小遣いでは安い買い物ではなかったのに、何の迷いもなく買ってしまいました。

★その日から自分で店をするまでの約15年間、ずっと部屋に飾ってありました。

★長い歳月の後、自分で店をするようになって、更に数年後。ある常連さんが女性のご友人を連れて店に来てくださいました。その時のご注文はマルガリータをふたつ。いつもその常連さんはマルガリータを飲まれるのです。

★それで例のグラスを使ってマルガリータを注ぎ、お二人の前にお出ししました。常連の方のお客様はすぐにグラスを持ち、マルガリータを飲まれたのですが、お連れのお客様はなかなかグラスに手を伸ばそうとはされませんでした。手よりも顔をグラスに近づけて、じーっとマルガリータを眺めているのです。

★もしかしたら何かゴミでも入っていたのかと心配になり、そのお客様に声をかけようかとした時でした。

★そのお客様がぼそっと一言。「・・・これ、私が造ったグラスや・・・」と。

★その方、以前にガラス工房で仕事をされてたことがあって、私が大学生のときに買ったふたつのグラスはその人の手造りによるものでした。(何セットかある量産品ですが)

★BARには不思議な出来事がたくさんおこります。


★BARでグラスを扱っていると、やはりよく破損します。ガラスである以上、それは避けることはできません。

★幸いにもこのふたつのグラスはまだ無事でいますが、きっといつか割れてしまうことになるのでしょう。覚悟はできているのですが、いざその時になったら、どんな気持ちになるのでしょうか。

★儚い輝きを眺めながら飲みたくなって、スコッチを一杯。

★その蒸留所はもう閉鎖していて、現存する在庫が無くなればこの世から消えてしまう運命のウイスキー。残りわずかで、お客様にお出しする分量も残っていなかった最後の一杯。

★”ローズ・バンク” 二度と戻ることない、儚く消えるシングルモルト・ウイスキーの香りです。


2012年6月27日水曜日

卒業写真の法則 ~モテる人たちの共通点~

♪ 悲し~ことが~あると~♫
♫ 開く~皮の~表紙~~♪ 卒業~写真のあのひとは~♪

★と、いうことで今回は”卒業写真について”ですが、悲しいことがあった訳ではありません。今日は休日で、どちらかというと楽しく過ごしました。

★さて、小、中、高、卒業するたびに一冊ふえる卒業写真。
卒業して新しい環境になって、新しい友達ができると、お互いの卒業した学校の卒業写真を見せ合います。でもって男子はカワイイ女の子を探して、どの子が好みのタイプか言い合います。別に選んだからといって自分が選ばれる可能性など微塵もないのに・・・悲しい習性ですが男子は必ずコレ、やります。


★この時、ちょっと面白い共通点・・・というか、法則みたいなものが発覚します。
他校出身の友達が選んだ違う学校の卒業写真に写っているカワイイ子と、実際にその学校でモテていた女の子とは何故か不思議と一致しないのです。どうしてでしょうか? 授業サボってそんなクダラナイことを考えてる間にもっと勉強してれば、今頃は違う暮らしをしていたのかもしれませんが・・・

★で、いろいろ考えたのですが、たぶん他校の男の子が写真に見ているのは客観的(?)な造形美なのだと思います。つまり、目鼻立ちが整っているとか、そういうことです。でも、実際にその世界の生活の中で人気があってモテてた女の子が”造形的にキレイな子”だけではないということは、モテる理由は造形美ではないところにあるはずです。

★ではその理由はなんでしょう? 
「性格がいいからじゃないの?」という方もいるでしょう。確かに”性格がいい”とか”優しいから”という要素もまわりから人気がでる要因のひとつに違いないでしょうが、性格がよくて優しい人が必ずクラスで男子に人気があったかというと、すべてがそうではない気がします。もっと”モテていた女の子”すべてに共通する要因があるはずです。

★よくよく考えるに、モテていた女の子は”よく笑う子”だった気がします。
”よく笑う”とか、ふつうに過しているときでも”微笑んでいるように見える”表情の女の子です。
ということは、普段から意識して笑顔になることを心がけると、何かが変わるような気がしませんか? (責任は持てませんけど)


★すこし”モテる”から離れます。
BARなんていう職業に就いていると、多くの人と出会います。多くの人と出会うと、”幸せな人”にも出会う回数は増えてきます。ここでいう”幸せ”とは裕福であるということとはまったく違います。普遍的な幸せとでもいえばいいのでしょうか・・・言葉では説明できませんが、とにかく幸せに生きている人達です。

★その幸せに生きている人達の共通点もまた”よく笑っている”ことがそうだと思います。
「幸せだから、笑っていられるのでしょう?」という方がいるかもしれません。
・・・そうかもしれませんね。でも、もしかしたらそうじゃないかもしれません。
コツというのは案外簡単な場所に転がっていたりするものです。
”笑うこと”程度の簡単なことで幸せになったり、モテたりできるのなら、試してみる価値があると思いませんか? 諺にも「笑う門には福来る」っていいますしね。それにあなた自身も”よく笑っている人”、のこと、好きじゃないですか?

★では”飲めば誰もが笑顔で過ごせるお酒”をご紹介します。
・・・って、そんなものありませんよ。残念ながら。
(T▽T)

きっとBARなんかに行って夜更しして飲むよりも、美味しいものを食べて、ぐっすり眠るほうが表情も冴えるから、お肌ツヤツヤで日々笑って過ごせるかもしれません。(笑)

・・・嘘です。BARに行って、程よい量のお酒を飲んで、どーぞ楽しく過ごしてください。
_(_^_)_ 

2012年6月25日月曜日

もし僕らのコトバがカクテルであったなら

★BARでの仕事の段取りは次の5つがあります。
  1. 開店準備
  2. 営業
  3. 閉店・片付け
  4. 明日の準備
★そして5番目が”いつか来る日のための準備”です。たとえば、明日は必要ないかもしれないけれど、いつかお客様から注文されるかもしれないカクテルの準備(研究)とかです。

★今回は私流の5番目の内容をお見せいたします。

★準備・研究対象はカクテル、”コスモポリタン”です。某人気TVの影響で一躍、有名カクテルの仲間入りを果たしました。


~コスモポリタン・レシピ~(幾つかバリエーションがありますが最も一般的なものを掲載)
  • ウオッカ 30ml
  • ホワイト・キュラソー 10ml
  • ライム 10ml
  • クランベリー・ジュース 10ml
~名前の意味~
  1. 世界的視野と行動力とをもつ人。世界人。国際人。
  2. コスモポリタニズムを信じる人。世界主義者。
  3. 定住しないで、世界を放浪する人。
***ちょっと補足***
月読ブログでは本来、なるべくレシピなどの掲載は省略することを心がけております。これはお客様側に実用性のない知識は不必要であり、もっとお酒を感覚的に楽しんでいただきたいとの思いがあるからです。 また、ブログ内容を”検索”することで得た、自分の血肉となっていない知識をコピーするように綴るよりも、自分の言葉でBARやお酒の楽しさをお伝えしたいと思っているのですが、今回は内容上、どうしても必要だったので、「コスモポリタンの意味」は検索して得たものをそのまま写させて頂きました。


★実はもうすでにコスモポリタンは自分なりに上記のレシピをアレンジして使っていました。(コスモポリタンなどの新興カクテルは厳密なレシピが存在しないことが多く、店や本によって様々です)

~アレンジ版・コスモポリタン・レシピ~


  • ウオッカ 20ml
  • ホワイト・キュラソー 10ml
  • ライム 5ml
  • クランベリー・ジュース(濃度の高いペースト状のもの) 25ml

  • ★アレンジした理由は、ショート・カクテルのアルコール度数が日本人の体質には不向きなので、なるべくアルコール含有量をへらし、ペースト状のクランベリーを使うことでジャムのような少しトロ味のある一風変わった飲みやすいカクテルにするのが目的です。

    ★さて、ここからは私の勝手な個人的解釈です。おそらくどの検索エンジンにかけても出てはこないと思います。したがって確かめようがなく、もしかしたら全然的外れの内容かもしれないことをお断りしておきます。

    ★コスモポリタンというカクテルの誕生は比較的新しいはずなのですが、諸説あって定かではありません。ただアメリカ生まれなのは確かなようです。

    ★そのことを踏まえて考えるに、私はこのカクテルが好きになれません。それはこのカクテルをこう解釈しているからです。

    (A)名前の意味(1)(2)に「世界的視野と行動力とをもつ人。世界人。世界主義者」とありますが、これはアメリカという国とアメリカ人の”世界での有り様”を象徴。グローバルスタンダードを掲げるアメリカの立ち位置を垣間見るように思います。

    (B)レシピの隠喩が象徴するもの。
    • ウオッカ=ロシア『資本主義の席巻、敵対勢力の崩壊』
    • クランベリー=アメリカ南部(好んでよく食べられる)=黒人『人種差別』
    • ライム=メキシコ『領地拡大・制圧』
    • ホワイト・キュラソー=白人
    ★以上のことから、このカクテルの作者の意図を推測すると『アメリカのアメリカによる、アメリカのための世界』と考えてしまいます・・・勘ぐりすぎの妄想でしょうか?

    ★まあ、そういう勝手な解釈をしているのでこのカクテルはあまりいい印象は持っていないのですが、ご注文はよくいただきます。確かに味は美味しいですしね。


    ★で、当初の準備・研究にもどります。今回、以前アレンジしたカクテルを更に踏み込んで、フレッシュ・クランベリーの実を使いまして、レシピを以下のように変えて作ってみました。
    • ウオッカ 20ml
    • ライム 15ml
    • ホワイト・キュラソー 15ml
    • フレッシュ・クランベリーの実 6個
    • ガム・シロップ(クランベリージュースの甘味の代用) 5ml
    ★以上をミキサーでミックスして、さらにシェークして飲んでみたところ・・・
    ・・・見事に・・・失敗。

    ★ちょっとアルコールが立ち過ぎるし、残念ながらこの試みの核である生のクランベリーの皮は、口の中でガサガサしすぎでした。

    ☆ーーー☆ーーー☆

    ★村上春樹氏は”もし僕らのことばがウィスキーであったなら ”というスコットランドとアイルランドのウイスキーにまつわる紀行文を書いています。

    ★もし、言葉がウイスキーであったなら・・・”あったなら”の次は・・・?

    ★雄弁なだけがコトバではなく、声高に叫ぶことがコトバでもない。物静かにたゆたう者のコトバを聞くことができたなら、物言えぬ者のコトバに耳を傾けられたなら、もし僕らの言葉がウイスキーであったなら、きっと熟成されて、穏やかで優しい言葉を”感じとれる”ことでしょう。

    ★今回は失敗に終わりましたが、また懲りずにコスモポリタンのアレンジに挑戦してみようかと思っています。コスモポリタンの尊大な言葉を、もう少し優しいコトバで語らせることができるように。それまでは月読でのコスモポリタンの意味は(3)の『定住しないで、世界を放浪する人』にしておきます。

    2012年6月24日日曜日

    助演男優賞、受賞カクテル


    ★少し前までは男の子が憧れるスポーツは今みたいにサッカーではなく野球でした。そして子供の頃はどんなに下手でも、やっぱり憧れるのですよ。”エース”や”4番バター”とかに。それはそれは頑張って練習しましたよ、一生懸命、ヒーローになることを夢見て。(笑)

    ★でもね、大人になるにつれ、いつしか殆どの少年は知るのです。たとえどんなに上手くなったとしても、自分は決して”エース”や”4番バッター”のタイプではないのだと。

    ★世の中には”玉拾い”だとか”審判”、”スコアラー”、”グランド整備員”とか、選手以外にも無数のポジションがあり、それぞれに大事な役割を担っていて、それが欠けると全体に支障をきたします。だからそれぞれのエキスパートは時に大きく賞賛されることもありますよ。

    ★でもですね、やっぱり主役格のポジションは脚光を浴びるし、派手で目立ってカッコイイのですよ。それをサポートするポジションは地味で目立たなくて忘れられることも多いし、評価さえしてもらえないこともよくあるし・・・って、こんなこと言ってると人間、小さいですか?(笑)

    ★社会のなかで”エース”とか”4番バッター”と、その他のポジションを分けるのは、もしかしたら”器の大きさ”かもしれません・・・ん? 自分の器の小ささをカミングアウトしてどうする?! いやいや、そんなことを言いたい訳ではなくて・・・

    ★たとえば映画で助演男優賞とかがあって、”主役を喰う”ような演技でキラリと眩しい光を放つ人もいるじゃないですか。だから主役以外のポジションに就いていても、そんな風に誇りをもって生きていきたいな、と、そういうことなのです。

    ★さて、BARにおいて主役は”酒”です。これは間違いないでしょう。ではエキストラはジュース類、果物、オツマミなど、たくさんありますが、その中で助演男優賞を選ぶとしたなら何でしょう?

    ★私が審査委員長だとしたら必ずこれを選びます。


    ~Bruce Cost(作者の人名) Ginger Ale ~
    ”生”生姜をそのまま無濾過で使い(ビンを立てると、すぐに底に生姜の繊維やカケラが沈殿します)、砂糖も天然材料を使用した、無香料のジンジャーエールです。

    ★ジンジャーエールを使ったカクテルはいくつかありますが、この”Bruce Cost ジンジャーエール”(以下BCGA)を使って作ると、まさに主役である”酒”を凌ぐ助演男優賞ものの働きをしてくれます!

    ★とりわけBCGAのいちばんの優れた特徴は”ジンジャービア”に酷似している点で、これはモスコミュールを作るのに最適なキャスティングです。


    ★では、BAR月読主催のモスコミュールを”演じる”にあたりまして、主役のウオッカは演技力もあり素質も抜群の”パーフェクト・ウオッカ”に出演依頼をいたします。芸名までも主役にピッタリですし。


    ★モスコミュールという名前は”モスクワの騾馬(ロバと馬の混血)”という意味で、ウオッカを使いアルコールが強い(後ろ脚のキックが強い)ことからのネーミングだとされていますが、私は違うと思っています。アメリカ側からみての、モスクワ=従順でノロマな家畜の隠喩だと解釈しています。

    ★一見、爽やかで人の良さそうな顔をしながら、懐でナイフを握っているようなしたたかなこの演目(カクテル)。やはり見どころ(味の決めて)は主役を喰うジンジャーエールの演技力なのです。

    ★鮮烈な生姜の香と刺激は日々のルーティン・ワークで疲れた心に、忘れていた少年少女の頃の情熱を思い出させてくれるかもしれません。・・・渋い脇役、かなりいいですよ。

    2012年6月21日木曜日

    河童は洋酒を飲むだろうか?

    ★もう10年以上前に民話のふるさと、岩手県の遠野に行ったことがあります。


    ★”遠野物語”で有名なだけあって、さすがに”雰囲気”がありました。私の父方の祖母の家が京都の丹後地方にあって、田舎の風景には慣れているのですが、それとはどこかが少し違う感じです。


    ★そこは人の暮らしの日常のすぐ横に異界が存在しているような緊張感があって、面白半分に一歩、足を踏み入れると、もう戻って来られないような、そんな感じです。蛍光灯の光に慣らされた生活をしていて、いつの間にか闇は恐れるものだということを忘れていました。


    ★そんな妖しい雰囲気中、河童が住むという”カッパ淵”は観光スポット的なところで、遠野の山野の中では例外的に肩の力を抜いて楽しめる場所です。

    ★カッパ淵の川は浅くて底が見えているので、河童はお留守だとすぐわかるので安心でした!


    ★・・・河童、日本酒が好きみたいですよね。某酒造メーカーのコマーシャルの影響ですが。でも21世紀の今なら河童も洋酒を飲んでみたいと思わないでしょうかねぇ?・・・というのは、河童と会うことができたら、一杯、飲ませてあげたいお酒があるのですよ。


    ★ジンです。銘柄は”ヘンドリックス”といいます。スコットランドで少量生産される手作りによるジンです。その他、いろいろウンチクのあるジンですが、大事なことは2点だけです。

    ★ヘンドリックスはジンが嫌いな人が飲んでも満足できた実績があるほど、とてもとても美味しいジンであるということがひとつ目。本当にキレイな味です。

    ★もうひとつは、香りづけに”キュウリ”と”バラの花びら”が使われているということです。


    ★キュウリが使われているといっても、青臭い瓜の匂いがする訳ではなく、柑橘香に混じって爽やかな香です。(キュウリの嫌いな私が美味しく飲めるくらいですから間違いないですよ)

    *~*ヘンドリックスの紹介レシピには、グラスのトッピングに「実物のキュウリをスライスして落とす」というようなことがよく書かれていますが、私はお勧め出来ません。お酒自体に微かなキュウリの香がついているのに、わざわざ実物のキュウリを入れて強い香りをつけてしまえば本来の香が台無しですから。そんなにキュウリの香が好きなら普通のジンにキュウリを絞って、”ジンライム”のようにして飲めばいいのです。*~*


    ★どうでしょう? キュウリの香が含まれているなら、河童は日本酒よりもこちらを選ぶかもしれませんね。

    ★こんな馬鹿なことをつかの間、考えていたのですが、遠野は今頃どうなっているのでしょうか?
    震災の後、今でも妖怪は人の暮らしの横で共存しているのでしょうか?

    ★天災なら問題なさそうですが、放射能のような人災による環境汚染には、妖怪は人間よりも弱そうです。

    ★私は詳しいわけではないのですが、妖怪、好きです。妖怪そのものよりも、「もしかしたら”妖怪”というものが本当にいるんじゃないかな・・・」と思わせてくれる日本の環境、風土、景色が大好きです。遠野や東北だけではなく、妖怪の住めなくなった土地に、日本人が日本人として生きていけるでしょうか? 最近、残念なことにまた、妖怪(=日本人のアイデンティティー)を追い出す場所がひとつ増えそうです・・・

    *ーーーーー*ーーーーー*

    ★いつかまた遠野に旅をすることがあったら、その時は謝罪の意味も込めてカッパ淵にヘンドリックス・ジンを供えたいと思います・・・供え置くより、そこで飲むだけかもしれませんけど。

    ★さて、せっかく美味しいお酒があるのだから、いい気分で飲みたいですね。ヘンドリックスはそのまま飲んでも、ロックでも美味しいのですが(むしろそのほうが美味しい)、今回は”浄化”するようなカクテルで願掛けの意味を込めて。

    ★以前ご紹介した天然素材のベルモット、ドラン。これとヘンドリックスを使ってエバー・グリーンをイメージしたちょっと贅沢なマティーニを作ります。


    ★レシピは流行りのドライ・マティーニではなく、それぞれの個性を活かすため、古式に則って1:1のやさしい味の配合を採用します。余分なものは入れたくないのでビターズもなしにします。


    ★きっとお客様にはお出しする機会のないであろう、変則マティーニの完成。
    「遠野の河童がスコットランドに移住しませんように」・・・乾杯!

    2012年6月19日火曜日

    えっ?! ”チャージ料”って、なんでやねん! ヽ(`Д´)ノ


    ★バーに行きます。席に座ると”チャージ料”なるものを取られることが多々あります。500円であったり、1000円であったり。高いところでは2000円を超える店もあったりします。
    (;゚Д゚)!

    ★ヽ(`Д´)ノ 「ピーナツひと皿、勝手に出てきて1000円ってなにー?!」 と・・・お気持ちは分かります。

    ★「ピーナツは要りませんから!」と断っても、ピーナツは出なくなりますが、チャージ料がなくなることはありません。チャージはピーナツ代ではないのです。チャーム(つき出し)はあくまでもサービスであって、チャージ=ピーナツとは違います。



    ★(^。^) ”バーテンダー”という漫画があります。テレビドラマにもなっていたのでご存知の方も多いかと思います。その第一巻にこんなシーンが出てきます。


    ★チャージ料に文句を言う、場に似合わない若い男性客に、「ナッツの値段じゃないわよ アンタみたいな怪しい客を追っ払うため!」と、常連さんの女の子が言う行があるのですが、これ以降、チャージ料については触れられていません。つまりこれが作者のチャージ料に対する理解と解釈してよさそうです。

    ★店がチャージ料を設定して、それを支払うのが負担に思うお客様を入れなくする。お客様を寄り分け、店を一定のお客様のカラーに染める・・・こういう意味でチャージ料を取っている店、実際に知っています。だから、そういう手段としてのチャージ料という理解でも間違ってはいないのでしょう。

    (@_@;)・・・


    ★でも私の思うチャージ料の考え方は違います。
    (ー_ー)!!

    ★お客様から冗談交じりにこんなことをいわれる事があります。
    (ノ∀`) 「いいなぁ、バーテンダーは。原価1000円ちょっとのボトルを買ってきて、一杯、700~1000円とかの値段で売ってるんやろ?(笑) ボロ儲けやな!」・・・と、こんな感じに。(苦笑)

    Y(>_<、)Y

    ★少し計算してみますね。(分かりやすい数字に略して、又、他に原価が掛からないようにウイスキーをストレートで飲むと仮定します)

    ☆一本、1400円のウイスキーを買ってきて、店でお客様に20杯を売るとします。一杯あたりの売値を700円としたら、700×20=14000円の売上になります。

    ☆売上から原価の1400円を引くと12600円が純利益で、原価率は10%です。
    (´∀`*) おおぉー、すごく儲かっていそうだ! 先程のお客様がいう通り、ボロい商売じゃないか!
    ・・・って、そんな訳ないです。
    (T▽T) 

    ★原価率 10%・・・ちょっと待ってください。
    (゜∀。) 確かに税務署に申告するいわゆる”原価”は上記の通りですが、店が一杯あたりのお酒の値段を設定するときには、原価だけで考える訳にはいかないのです。他にもお金がかかっていますから。

    ★たとえばカウンターが10席のBARを仮定しましょう。使うお金は以下の通り。
    家賃、月10万円
    保証金 200万円
    内装工事費 250万円
    空調設備、業務設備費、消耗品費(冷蔵庫、テーブル、椅子、グラス、壁絵など)200万円
    光熱費、月3万円
    人件費。ここでは自分の給料。社会保証もないので取り敢えず月30万円

    ★さて、この店で上記の費用の回収を考慮に入れて、”角ハイボール”の一杯あたりの値段をザックリと設定してみましょうか。(月読に角はありません。念のため)
    (^。^)y-.。o○

    ★1日あたり、店にお客様が一回転の10人は最低でも来てもらい、休日はなしと想定します。あと、工事費などの回収予定計画は実際の減価償却にもとずいたものではなく、一般的に”このくらいで回収できないと店は成り立たない”といわれる年月を更に計算しやすい月日に変えて計算します。
    • サントリー角 1200円/20杯=60円
    • 氷 20円
    • ソーダー 50円
    • 家賃 333円
    • 保証金、(5年回収) 109円
    • 内装工事 136円
    • 設備費 109円
    • 光熱費 100円
    • 人件費 1000円
    ★合計1917円。
    ((((;゚Д゚)))) ・・・えっ!!
    さて、角ハイボールが一杯につき、2000円近い値段の店にあなたは飲みにいきますか?(笑) でも本来、このくらいのお値段を頂かないと上記のお客様がいうような”ボロ儲け”には程遠いのですよ。

    ★・・・とはいえ、突っ込みどころ満載の計算なので実際にはここまで高くはならないと思いますが、一軒の店で一杯のお酒を飲むということは、酒屋さんでお酒を買ってきた分の原価だけでなく、回収が必要な”設備費用”が含まれていることを理解していただければ十分です・・・というか、こんなのは周知のことですよね。

    (-。-)y-゜゜゜

    でも本題はここからです。


    ★もう、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、この回収される”設備費用”は一杯のお酒の料金に含まれると、とても不公平なことになるのです。すべてのお客様が1杯しか飲まなければ問題はありませんが、たとえば3杯飲まれたとしたら重複して設備費用を3回も支払うことになりますよね。

    ★お酒の原価は飲んだ数にかかわらず公平ですが、家賃や内装費、使っている椅子やグラスや空調について支払う代金は一回でいいはずです。それなのに飲めば飲むほど、そのお客様が負担して損をしていくのは割にあいません。

    \(^o^)/
    ★そこでチャージ料です! 
    一杯あたりの”設備費用”をかなり安く設定した値段にして、別途、チャージ料をお一人様から一回づつ設備費用として頂くことにすれば、公平に、しかも一杯あたりの値段を下げてお客様に提供できるのではないでしょうか。

    ★これが私の考えるチャージ料の意味です。
    (ー_ー)!!

    ・・・因みにBAR月読ではチャージ料を300円、頂いております。
    _(_^_)_ ご理解くださいませ。


    ☆~加筆~☆

    ★UP後、2、3の質問を受けましたのでお答えします。

    Q1 「”設備費用”は他の商売でもあるのに、チャージ料は聞いたことありませんが・・・」

    (Ans) ★そもそも”チャージ”の概念はその店の売り物に”時間と空間”が含まれる業種に限ります。そこに費用がかかっているからこそ、”現物”以外に”設備費用”を頂く訳です。たとえば電気屋さんに癒されに行く人はいないですし、そんな少数派がいても、それは商品という”現物”を見て楽しむことだと思います。
    ★物販業と飲食業では店の”空間”にかける費用(考慮)の割合が全く違います。仮にもの凄く店内内装を凝りに凝って設計した電気屋さんがあったとしても、その費用を家電の売値に反影するわけにはいきません。なぜならテレビを買うお客様は、他店とのテレビという現物の値段比較で判断するからです。「あそこの電気屋、ちょっと高い(値段が)けど、内装が素敵だからよく買いに行くねん!」という人はいません。
    ★あと、電気屋さんにテレビを買いに行って、「おかわりでテレビ2コ追加ね!」っていう人はいません。物販業ではお客様が購買個数を増やすほど、店の利益は比例してあがります。これは基本概念がお客様一人に対して1商品なのだからだと思います。”設備費用”回収は個々の商品に含んだほうが実際的でお客様に対してもメリットがあり、また受ける印象もいいでしょう。

    Q2 「では、大きなレストランなどでは”サービス料”をとられますが、一般的な街のレストランではチャージ料なんてないですよ?」

    (Ans) ★レストランは”食事”をしに行くところです。あらかじめコースが決まっていたり、”客単価”のバラつきが少ないので、”設備費用”は個々の料理に含めていても、お客様への不公平が出にくいのです。であるならば、わざわざ悪印象の”チャージ料”に分けて頂かない方がよいのです。
    ★お客様の注文数にバラつきのある”居酒屋”などは”つき出し+チャージ料”のある店が多いですよね。


    2012年6月17日日曜日

    乙女座宮

    ★6月半ば。春の星座、乙女座が夏の星座に追われて、少し西に傾いています。

    ★乙女座は暗い星が多いので線をつなぐのは難しいのですが、一等星の”スピカ”という星はすぐに見つけられます。北斗七星の柄の部分の曲線を伸ばしていけば、最初に当たる明るい星が牛飼い座のアークトゥルス、更に伸ばしていけばスピカにたどり着きます。

    ★スピカは和名で”真珠星”と呼ばれ、その名の如く白色に輝いています。

    ★誕生石というのがありますが、もし誕生酒というものがあるのなら、乙女座生まれの人のカクテルはきっと”ホワイト・レディー”でしょうね。蒸暑い梅雨の季節、ジンとレモンの風味が涼やかにしてくれます。

    ブラック・レイン

    ★梅雨だから仕方がないのだけれど、まるで集中豪雨のように降る雨。
    「出来れば火曜日(月読定休日)にまとめて降ってくれ~」と空を睨みつけても、まあ、無理な相談ですね。

    ★真夜中、暗い空から降ってくる雨をみていたら、ふっと映画『ブラックレイン』を思い出しました。
    ・・・あれは確か大学生の頃に付き合っていた彼女にフラれる前、最後に一緒に観た映画だ・・・な。
    !!  おおっ、遠くから雨音に交じってブルースが聞こえてくるぞ。

    ★カクテル”ブラック・レイン”は好きではないので、故・松田優作が好きだったバーボン、”オールド・クロウ”でも飲んで思い出に浸るとしましょう。(笑)


    ★松田優作の演じた鳴海昌平が3部作の最後、『処刑遊戯』で飲んでいたオールド・クロウはストレートだったかロックだったかが思い出せない・・・

    2012年6月16日土曜日

    Love Me Tender

    ~BARでよくある迷宮事件~ (後編)

    ★水割りを飲んでほしくないバーテンダーと、水割りでしか飲めないお客様。

    ★店(バーテンダー)が長期熟成のウイスキーを売りたくないはずはありません。
    • 長期熟成酒は高価です。売上があがります。
    • 数十年という時間をかけて造られた味は特別です。飲んでいただくことで酒文化向上、拡大につながります。
    • (栓を開けた)ウイスキーにも鮮度があります。残しておいては劣化していくので、出来れば少しでも早く鮮度の高いうちに提供したいでしょう。

    ★なのに、「この酒はそんな飲み方(水割り)をする酒ではありません」といって断る理由は”美味しいものを提供したい”という思いが根本なのでしょう。でも多くの日本人は体質的にウイスキーをストレートやトゥワイスアップでは飲めません。さて、このパラドックスをどう解決しましょうか?
    選択肢は以下の4つあります。
    1. 仕方がないので水割り(氷入り)を作る。
    2. ストレートで飲めないのなら長期熟成物ではなく、12年熟成くらいのウイスキーで水割りを作ることをお勧めする。
    3. 折衷案としてトゥワイス・アップで我慢してもらう。
    4. 香を損なわずに飲みやすい別の方法を考える。
    ★たぶん、いちばん正解に近いのは(1)でしょう。ウーロン茶やジュース割りなど、無茶な注文でない限り、自分の飲みたいものを選択する権利はお客様にあります。まずはこれが基本原則。

    ★ただし、本来の商品価値をお客様から頂く対価の分だけ楽しんでもらいたい、提供したいと考えるなら、ケースバイケースで(4)を考えます。(お客様のなかには「何が何でも、俺は普通の水割りが飲みたいんや!!」という方もいらっしゃるでしょうから、まずは(1)です)

    ★(4)『香を損なわずに飲みやすい別の方法を考える』、私のやり方はこうです。


    ★ウイスキー・フロートという飲み方(カクテルの一種)があります。ちょっと小さめのロック・グラスに水を入れ、その上にウイスキーを”乗せる”のです。(水よりウイスキーの方が比重が軽いので浮きます)

    ★写真上で琥珀色と透明の水がくっきりと分離しているのがわかると思います。実際のウイスキー・フロートはもっと水が少なく、ウイスキーの分量が多いです。サンプル写真なのでウイスキーの量をケチりました。(笑)

    ★ただし、このやり方ではまだダメです。一口目に飲むときに口に入ってくるウイスキーの量はストレートと同じで、感じるアルコール度数は強いのです。ただ、解決のヒントにはなります。ウイスキーが水に混ざらず、冷えないので香は削がれません。

    ★改善しましょう。ストレートグラスとミルク・コーヒーを飲むときに使うミルク・ピッチャーを用意します。



    ★ミルク・ピッチャーにウイスキーを入れて、8分目ほど水の入ったストレート・グラスの上に静かにウイスキーを垂らし、”小型のウイスキー・フロート”を作ります。このとき、フロートするウイスキーは薄く、油膜が張るような量にします。(ウイスキーの量は好みで調節できます)


    ~ミニ・ウイスキー・フロート~

    ★ウイスキーの香はそのままで、一口飲むと、口の中でちょうど普通の水割りと同じ味になります。(場合によっては小さな氷をいれてもOKです)

    ★お客様がこの飲み方を楽しめるのなら、一杯分のウイスキーが入ったピッチャーと水を置いておいて、2杯目以降はお客様自身に作ってもらってもいいでしょうし、”面倒だ”という方には、取り敢えず1杯目だけこの飲み方で香を楽しんでいただいた後、残りのウイスキーで普通の水割りを作って差し上げるのもいいと思います。

    ★もちろんこの飲み方が長期熟成ウイスキーの香を100%完璧に残せるとは思ってはいませんし、他にもっといい方法があるのかもしれません。

    ★ただ、、「この酒はそんな飲み方(水割り)をする酒ではありません」で終わるのは残念ですよね。根本ではお客様のことを考えて、「もったいないですよ」という気持ちがあるのに、誤解を生むような言い方はお互いが不幸になります。

    ★バーテンダーの仕事はマニュアルがないのですから、常に”自分で考える”ことが必要です。職業名のなかに”Tender”がついている仕事、世界中を探してもそんなにないと思いますから。

    2012年6月15日金曜日

    BARの片道切符

    ~BARでよくある迷宮事件~ (前編)

    ★お客様からこんな話をたまに聞くことがあります。
    「BARに飲みに行って、グレンリベットの30年もの(*1)の水割り(*2)を頼んだら、バーテンダーに『この酒はそんな飲み方をする酒ではありません!』と言われた」と。
    つまり”ストレート”か”トゥワイス・アップ”(*3)で飲めということですね・・・

    (*1)長期熟成の高級ウイスキー(銘柄はグレンリベットである必要はありません)
    (*2)ここでいう水割りはウイスキーと水を1対2,3で割った普通の氷入り水割り
    (*3)トゥワイス・アップ(常温水をウイスキーと1対1で割ります。氷は入れない。ウイスキーを飲むのにいちばん適した飲み方とされています。ストレートで飲むよりは飲みやすいが、通常の水割りに慣れていると濃く感じます。


    ★このパターンの話を憤慨しながらいう人もいれば、恥ずかしそうにいう人もいらっしゃいます。こういった話の場合、断られたお客様の方も、断った店の方も両方が不幸になってしまい、得るものがありません。

    ★”怒ったお客様”も”恥をかいた”と思ったお客様も、もうその店に足を運ばない可能性がありますし、断られたお客様自身も、これから”珍しいお酒”や”ちょっと高級なお酒”を飲んでみようと思わなくなってしまう可能性があります。


    ★「そんな飲み方をする酒ではありません」といったバーテンダーの気持ちが解らない訳ではありません。長期熟成ウイスキーなどは氷を入れたグラスで飲むと大事な香が削がれてしまうからです。だからそのバーテンダーの”言ってること”は正しいのです。たぶん言い換えれば「高い対価を支払ってまで、飲む価値のなくなったものを注文するのは勿体ないですよ」ということでしょうね。

    ★ではどうすればいいのでしょう? 日本人の殆どは体質的にストレートで飲めないのです。ウーロン茶やジュースで割ってくれと注文されたなら話は別ですが、飲みたくても飲めない人にストレートのウイスキーを勧めるのは酷です。ストレートで飲めない人が長期熟成ウイスキーを本来の美味しさを損なわずに飲む方法、ないですかね?


    ★選択肢は次の4つです。
    1. 仕方がないので水割り(氷入り)を作る。
    2. ストレートで飲めないのならグレンリベット30年ではなく、12年のグレンリベットで水割りを作ることをお勧めする。
    3. 折衷案としてトゥワイス・アップで我慢してもらう。
    4. 香を損なわずに飲みやすい別の方法を考える。
    さて、この事件、どう解決するかね? ワトソンくん!

    2012年6月14日木曜日

    異邦人

    ★去年、月読の壁に掛けてあった振り子の柱時計が壊れて動かなくなってしまいました。修理をお願いしたところ、2,3ヶ月かかるということで、仕方なく時計が退院してくるまで店に時計はなしで過ごすつもりでした。もっとも普通、BARには時計がないことの方が多いのですが。

    ★そんな中、鞆の浦に旅行に行ったとき、偶然通りがかった骨董市で格安の柱時計と出会いました。ブリキの玩具や陶器など、静かに時の止まった世界で暮らすモノ達の中で唯一、振り子を揺らしながら生きていることを主張するような異邦人の柱時計です。


    ★店に連れて帰ってくると、元々そこにあったかのように妙にしっくり収まったので、現在は鞆の浦出身の柱時計が月読の店内で時を刻んでいます。以前に使っていた時計は修理を終えて、今は自宅の壁で元気に働いてくれています。



    ★さて、鞆の浦です。実は旅行の帰りについでに立ち寄った街だったのですが、最初からここに来てゆっくり過ごせばよかったと思うくらいに素敵な街でした。


    ★映画「崖の上のポニョ」のモデルになった湊町で、実際に宮崎駿監督などジブリ・スタッフが長期滞在していたにもかかわらず、それを殆ど観光の宣伝材料とされていません。


    ★京都より古い歴史のあるこの街を、本来のあるがままの姿で暮らしながら、観光客をもてなそうとする姿勢を街ぐるみで一貫して行なっているのです。


    ★街には港があります。坂があって、狭い路地があって、時々、心地よい風がふいています。他に何があるというわけではないのに、何故か”すべてある”ような、とても満たされた感覚にさせてくれる場所でした。

    ★せかされながらの生活があり、たまの旅行さえも高速道路で時速100kmのスピードで帰路につかなければならない私もまた、ここではただの異邦人です。


    ★是非もう一度、ゆっくり訪れてみたいのですが中々そう簡単にもいきません。それでも鞆の浦から来てくれた柱時計の振り子が刻む音を聞くと、あの時の不思議に満たされた感覚を思い出させてくれるのです。


    ★月読の店内で柱時計とふたり。ゼンマイをゆっくり、ゆっくりと巻きながら、『ちょっと振り向いていただけの異邦人・・・』

            

         

    2012年6月13日水曜日

    望月の欠けたることもなしと思へば

    ★BAR月読の店内は、いつの間にか”月”のグッズでいっぱいになっていることに気がつきました。新月の夜でも、雨の日でも月読店内で月を観ない日はありません。

    ★映画”太陽がいっぱい”では、ラストシーンでアランドロンが「太陽がいっぱいだ」とつぶやいた後、刑事がやってきて悲劇的な結末を暗示させて終わるのですが、「月がいっぱいだ」だと、反対にハッピー・エンドになるのではないかと勝手に思い込んでいます。

    ★月グッズは自分で買ったものもあるのですが、ほとんどはお客様からの贈り物です。月グッズ以外でも頂いたものは数知れずあり、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。

    ★ここでは月読店内のいくつかの”月”をご紹介いたします。

    ☆月のペパー・ウエイトです。雲間から顔を出した満月のモチーフに作家さんのセンスの良さを感じます。


    ☆スズで造られた三日月のトレーです。お客様のお会計時に使わせていただいております。


    ☆三日月柄の暖簾。階段下の入口用にいただいたのですが、現在は洗面所の仕切り口に掛かっています。

    ☆”森の月の香り”のお香です。1,2本使ったのですが、もったいないのであとは使わずにパッケージごと柱に飾っています。


    ☆壁に掛けられた月のライトです。リモコンで三日月から満月まで、12段階に明かりを調節できるのですが、”消灯”していても電池を消費してしまい(さすが海外製(T▽T))、2日くらいで電池切れを起こしてしまうので、現在はずっと新月のままです。



    ☆結婚時のお祝いに頂いた三日月をモチーフにしたブリザーブド・フラワーです。逆方向の三日月と二対で頂きましたが、片方は自宅にあります。


    ☆陰暦のカレンダー。洗面台横に貼っています。


    ☆三日月のピンズ。写真はバカラのショット・グラスに乗せて飾っていますが、営業中は胸に付けています。


    ★まだまだ月グッズはあるのですが、ご来店の際にいくつかの月を見つけるのを楽しんで頂きたいと思いますので、今回はこの辺で終わりにいたします。