★もう10年以上前に民話のふるさと、岩手県の遠野に行ったことがあります。
★”遠野物語”で有名なだけあって、さすがに”雰囲気”がありました。私の父方の祖母の家が京都の丹後地方にあって、田舎の風景には慣れているのですが、それとはどこかが少し違う感じです。
★そこは人の暮らしの日常のすぐ横に異界が存在しているような緊張感があって、面白半分に一歩、足を踏み入れると、もう戻って来られないような、そんな感じです。蛍光灯の光に慣らされた生活をしていて、いつの間にか闇は恐れるものだということを忘れていました。
★そんな妖しい雰囲気中、河童が住むという”カッパ淵”は観光スポット的なところで、遠野の山野の中では例外的に肩の力を抜いて楽しめる場所です。
★カッパ淵の川は浅くて底が見えているので、河童はお留守だとすぐわかるので安心でした!
★・・・河童、日本酒が好きみたいですよね。某酒造メーカーのコマーシャルの影響ですが。でも21世紀の今なら河童も洋酒を飲んでみたいと思わないでしょうかねぇ?・・・というのは、河童と会うことができたら、一杯、飲ませてあげたいお酒があるのですよ。
★ジンです。銘柄は”ヘンドリックス”といいます。スコットランドで少量生産される手作りによるジンです。その他、いろいろウンチクのあるジンですが、大事なことは2点だけです。
★ヘンドリックスはジンが嫌いな人が飲んでも満足できた実績があるほど、とてもとても美味しいジンであるということがひとつ目。本当にキレイな味です。
★もうひとつは、香りづけに”キュウリ”と”バラの花びら”が使われているということです。
★キュウリが使われているといっても、青臭い瓜の匂いがする訳ではなく、柑橘香に混じって爽やかな香です。(キュウリの嫌いな私が美味しく飲めるくらいですから間違いないですよ)
*~*ヘンドリックスの紹介レシピには、グラスのトッピングに「実物のキュウリをスライスして落とす」というようなことがよく書かれていますが、私はお勧め出来ません。お酒自体に微かなキュウリの香がついているのに、わざわざ実物のキュウリを入れて強い香りをつけてしまえば本来の香が台無しですから。そんなにキュウリの香が好きなら普通のジンにキュウリを絞って、”ジンライム”のようにして飲めばいいのです。*~*
★どうでしょう? キュウリの香が含まれているなら、河童は日本酒よりもこちらを選ぶかもしれませんね。
★こんな馬鹿なことをつかの間、考えていたのですが、遠野は今頃どうなっているのでしょうか?
震災の後、今でも妖怪は人の暮らしの横で共存しているのでしょうか?
★天災なら問題なさそうですが、放射能のような人災による環境汚染には、妖怪は人間よりも弱そうです。
★私は詳しいわけではないのですが、妖怪、好きです。妖怪そのものよりも、「もしかしたら”妖怪”というものが本当にいるんじゃないかな・・・」と思わせてくれる日本の環境、風土、景色が大好きです。遠野や東北だけではなく、妖怪の住めなくなった土地に、日本人が日本人として生きていけるでしょうか? 最近、残念なことにまた、妖怪(=日本人のアイデンティティー)を追い出す場所がひとつ増えそうです・・・
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★いつかまた遠野に旅をすることがあったら、その時は謝罪の意味も込めてカッパ淵にヘンドリックス・ジンを供えたいと思います・・・供え置くより、そこで飲むだけかもしれませんけど。
★さて、せっかく美味しいお酒があるのだから、いい気分で飲みたいですね。ヘンドリックスはそのまま飲んでも、ロックでも美味しいのですが(むしろそのほうが美味しい)、今回は”浄化”するようなカクテルで願掛けの意味を込めて。
★以前ご紹介した天然素材のベルモット、ドラン。これとヘンドリックスを使ってエバー・グリーンをイメージしたちょっと贅沢なマティーニを作ります。
★レシピは流行りのドライ・マティーニではなく、それぞれの個性を活かすため、古式に則って1:1のやさしい味の配合を採用します。余分なものは入れたくないのでビターズもなしにします。
★きっとお客様にはお出しする機会のないであろう、変則マティーニの完成。
「遠野の河童がスコットランドに移住しませんように」・・・乾杯!
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