★水割りを飲んでほしくないバーテンダーと、水割りでしか飲めないお客様。
★店(バーテンダー)が長期熟成のウイスキーを売りたくないはずはありません。
- 長期熟成酒は高価です。売上があがります。
- 数十年という時間をかけて造られた味は特別です。飲んでいただくことで酒文化向上、拡大につながります。
- (栓を開けた)ウイスキーにも鮮度があります。残しておいては劣化していくので、出来れば少しでも早く鮮度の高いうちに提供したいでしょう。
★なのに、「この酒はそんな飲み方(水割り)をする酒ではありません」といって断る理由は”美味しいものを提供したい”という思いが根本なのでしょう。でも多くの日本人は体質的にウイスキーをストレートやトゥワイスアップでは飲めません。さて、このパラドックスをどう解決しましょうか?
選択肢は以下の4つあります。
- 仕方がないので水割り(氷入り)を作る。
- ストレートで飲めないのなら長期熟成物ではなく、12年熟成くらいのウイスキーで水割りを作ることをお勧めする。
- 折衷案としてトゥワイス・アップで我慢してもらう。
- 香を損なわずに飲みやすい別の方法を考える。
★ただし、本来の商品価値をお客様から頂く対価の分だけ楽しんでもらいたい、提供したいと考えるなら、ケースバイケースで(4)を考えます。(お客様のなかには「何が何でも、俺は普通の水割りが飲みたいんや!!」という方もいらっしゃるでしょうから、まずは(1)です)
★(4)『香を損なわずに飲みやすい別の方法を考える』、私のやり方はこうです。
★ウイスキー・フロートという飲み方(カクテルの一種)があります。ちょっと小さめのロック・グラスに水を入れ、その上にウイスキーを”乗せる”のです。(水よりウイスキーの方が比重が軽いので浮きます)
★写真上で琥珀色と透明の水がくっきりと分離しているのがわかると思います。実際のウイスキー・フロートはもっと水が少なく、ウイスキーの分量が多いです。サンプル写真なのでウイスキーの量をケチりました。(笑)
★ただし、このやり方ではまだダメです。一口目に飲むときに口に入ってくるウイスキーの量はストレートと同じで、感じるアルコール度数は強いのです。ただ、解決のヒントにはなります。ウイスキーが水に混ざらず、冷えないので香は削がれません。
★改善しましょう。ストレートグラスとミルク・コーヒーを飲むときに使うミルク・ピッチャーを用意します。
★ミルク・ピッチャーにウイスキーを入れて、8分目ほど水の入ったストレート・グラスの上に静かにウイスキーを垂らし、”小型のウイスキー・フロート”を作ります。このとき、フロートするウイスキーは薄く、油膜が張るような量にします。(ウイスキーの量は好みで調節できます)
~ミニ・ウイスキー・フロート~
★ウイスキーの香はそのままで、一口飲むと、口の中でちょうど普通の水割りと同じ味になります。(場合によっては小さな氷をいれてもOKです)
★お客様がこの飲み方を楽しめるのなら、一杯分のウイスキーが入ったピッチャーと水を置いておいて、2杯目以降はお客様自身に作ってもらってもいいでしょうし、”面倒だ”という方には、取り敢えず1杯目だけこの飲み方で香を楽しんでいただいた後、残りのウイスキーで普通の水割りを作って差し上げるのもいいと思います。
★もちろんこの飲み方が長期熟成ウイスキーの香を100%完璧に残せるとは思ってはいませんし、他にもっといい方法があるのかもしれません。
★ただ、、「この酒はそんな飲み方(水割り)をする酒ではありません」で終わるのは残念ですよね。根本ではお客様のことを考えて、「もったいないですよ」という気持ちがあるのに、誤解を生むような言い方はお互いが不幸になります。
★バーテンダーの仕事はマニュアルがないのですから、常に”自分で考える”ことが必要です。職業名のなかに”Tender”がついている仕事、世界中を探してもそんなにないと思いますから。
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