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2012年6月29日金曜日

What a defference a day makes  ~縁は異なもの~

★BAR月読には緑と赤のカクテルグラスがあります。このふたつのグラスはペアで”ワイン・グラス”として売っていたもので、もう26年も前に買ったものです。


★当時、大学生であり、初めてBARという場所で働き出した頃でした。商店街を歩いていて、ふっと雑貨屋の店内を覗き込んだとき、それが目にはいりました。

★不思議です。当時、自分でBARを営業しようなんて思ってはいなかったはずなのに、何故かこのグラスを見たとき、「あっ!!、いつか自分の店でこのグラスを使おう!」と衝動的に思いつき、決して当時のお小遣いでは安い買い物ではなかったのに、何の迷いもなく買ってしまいました。

★その日から自分で店をするまでの約15年間、ずっと部屋に飾ってありました。

★長い歳月の後、自分で店をするようになって、更に数年後。ある常連さんが女性のご友人を連れて店に来てくださいました。その時のご注文はマルガリータをふたつ。いつもその常連さんはマルガリータを飲まれるのです。

★それで例のグラスを使ってマルガリータを注ぎ、お二人の前にお出ししました。常連の方のお客様はすぐにグラスを持ち、マルガリータを飲まれたのですが、お連れのお客様はなかなかグラスに手を伸ばそうとはされませんでした。手よりも顔をグラスに近づけて、じーっとマルガリータを眺めているのです。

★もしかしたら何かゴミでも入っていたのかと心配になり、そのお客様に声をかけようかとした時でした。

★そのお客様がぼそっと一言。「・・・これ、私が造ったグラスや・・・」と。

★その方、以前にガラス工房で仕事をされてたことがあって、私が大学生のときに買ったふたつのグラスはその人の手造りによるものでした。(何セットかある量産品ですが)

★BARには不思議な出来事がたくさんおこります。


★BARでグラスを扱っていると、やはりよく破損します。ガラスである以上、それは避けることはできません。

★幸いにもこのふたつのグラスはまだ無事でいますが、きっといつか割れてしまうことになるのでしょう。覚悟はできているのですが、いざその時になったら、どんな気持ちになるのでしょうか。

★儚い輝きを眺めながら飲みたくなって、スコッチを一杯。

★その蒸留所はもう閉鎖していて、現存する在庫が無くなればこの世から消えてしまう運命のウイスキー。残りわずかで、お客様にお出しする分量も残っていなかった最後の一杯。

★”ローズ・バンク” 二度と戻ることない、儚く消えるシングルモルト・ウイスキーの香りです。


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