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2012年6月14日木曜日

異邦人

★去年、月読の壁に掛けてあった振り子の柱時計が壊れて動かなくなってしまいました。修理をお願いしたところ、2,3ヶ月かかるということで、仕方なく時計が退院してくるまで店に時計はなしで過ごすつもりでした。もっとも普通、BARには時計がないことの方が多いのですが。

★そんな中、鞆の浦に旅行に行ったとき、偶然通りがかった骨董市で格安の柱時計と出会いました。ブリキの玩具や陶器など、静かに時の止まった世界で暮らすモノ達の中で唯一、振り子を揺らしながら生きていることを主張するような異邦人の柱時計です。


★店に連れて帰ってくると、元々そこにあったかのように妙にしっくり収まったので、現在は鞆の浦出身の柱時計が月読の店内で時を刻んでいます。以前に使っていた時計は修理を終えて、今は自宅の壁で元気に働いてくれています。



★さて、鞆の浦です。実は旅行の帰りについでに立ち寄った街だったのですが、最初からここに来てゆっくり過ごせばよかったと思うくらいに素敵な街でした。


★映画「崖の上のポニョ」のモデルになった湊町で、実際に宮崎駿監督などジブリ・スタッフが長期滞在していたにもかかわらず、それを殆ど観光の宣伝材料とされていません。


★京都より古い歴史のあるこの街を、本来のあるがままの姿で暮らしながら、観光客をもてなそうとする姿勢を街ぐるみで一貫して行なっているのです。


★街には港があります。坂があって、狭い路地があって、時々、心地よい風がふいています。他に何があるというわけではないのに、何故か”すべてある”ような、とても満たされた感覚にさせてくれる場所でした。

★せかされながらの生活があり、たまの旅行さえも高速道路で時速100kmのスピードで帰路につかなければならない私もまた、ここではただの異邦人です。


★是非もう一度、ゆっくり訪れてみたいのですが中々そう簡単にもいきません。それでも鞆の浦から来てくれた柱時計の振り子が刻む音を聞くと、あの時の不思議に満たされた感覚を思い出させてくれるのです。


★月読の店内で柱時計とふたり。ゼンマイをゆっくり、ゆっくりと巻きながら、『ちょっと振り向いていただけの異邦人・・・』

        

     

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