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2013年8月10日土曜日

納涼ハイボール

レコードやCDのジャケ買いがあるように、お酒をジャケ買いすることもあります。

でも更に突っ込んで、たまにはジャケ飲みなんてのもどうでしょう?

 暑い日には涼しげな絵の描かれたもの、例えば帆船の描かれたウイスキー、カティーサークとか。


 カティーサーク号はイギリスと中国を結ぶ、お茶(ティー)の高速輸送船でした。

 冷たいハイボールを飲みながら、帆船のラベルを見ていると暑さも忘れられるかも知れません。

カティーサークのハイボール、折角だから少し工夫しましょう。

カティーサークの原酒であるハイランドパークは少し塩のニュアンスがあります。これをぐらすの縁に塗って塩を付けます。ソルティドッグでお馴染みのスノースタイルですね。


 帆船、潮の香り、白波...涼やかさと夏場の塩分補給を兼ね備えた納涼ハイボールです。






洛陽

今日は月読の初期からの常連さんが遠くに旅に出た日です。だから閉店後、このトモダチと少しだけ飲んでいました。

 10才以上も年上で、お客さんでもあるのにトモダチというのは変ですか?
でも以前、彼が仕事仲間に僕を紹介するときに「こいつはダチやな」と言ってくれたので、だから飲むときはトモダチなのです。


僕はこの世にいなくなっても、誰かが覚えている限りその人は死んでいないという、何だったかの言葉を信じています。だからこの場で彼のことを書いているのもトモダチを友達に紹介している感じですかね? 忘れていない証に。


 僕は月読をOPENする前に、30年以上続いたジャズバーの最後の幕引き係を請け負いました。彼はその店の初代からの常連客であり、傍若無人の暴れん坊として他のお客様から一目置かれていたのです。(笑)

 多くの常連さんは自分が愛して通いつめた店の最後にやってきた、見慣れぬ若造に対して冷ややかでした。(そうでない人も勿論、たくさんいますが)
でも彼が「お前がいちばんこの店に似合ってるな」「お前が最後で良かった」と言ってくれたのは今でも僕の密やかな自慢です。

いよいよその店の幕を引き、月読に移転するとき、彼は「遠くなるしもう行かへんで! せやけど義理で一回だけは顔出したるわ」と言ってたのに、実際は何度となく多くの友人を連れて来てくれました。


 結局、彼は逆に多くの義理を僕に背負わせて、ボトルキープして飲みかけのジャックダニエルと吉田拓郎のLPレコードを遺したまま、月読に姿を見せなくなってしまいました。

きっと今夜も拓郎を聴くでしょう。
このトモダチが置いていったLPには収録されていないのですが、彼のことを思い出すとき、どうしても吉田拓郎の『洛陽』とかさなるのです。

―みやげにもらったサイコロふたつ
手のひらでふればまた振り出しに
戻る旅に陽が沈んでゆく ―

ホントに、たまには飲みに来てくださいよ、月読に。
 忘れてないからさ。

―献杯―








2013年8月8日木曜日

日傘

午後、買い物に行った帰り道。

 僕の前を日傘をさしたおばあちゃんと小学4年生くらいの孫とおぼしき少年が連れ立って歩いている。

 二人の背丈はちょうど同じくらいで、時折、日傘の骨の先が少年の頭に当たるらしく、「痛いよ、おばあちゃん」というような風情で、少年は頭に手をやる。

二人の歩みは遅く、彼らを追い越したあとで、後ろの方からおばあちゃんの声が聞こえてくる。

 「お前が大きいなったんかなぁ、私が小さあなったんかなぁ」

 孫に向って言っているような、独り言を言っているような、小さな声。

 夕立がきそうな空。






空に落ちる日

ある村で古く小さな社が台風で壊れたあとの話です。


社の建っていたあとには直径1メートル程のとても深い穴があいていました。

村人が集まり喧々諤々。

やがて警察やマスコミ、学者達もその穴に集まりましたが、どんなに偉い学者が探ってもその穴の底が何処まで続いているのか分かりませんでした。

まるで地球の中心まで届いているような、そんな深い穴です。

誰かが穴を覗き込んで言いました。

「おーい でてこーい」

返事はありません。

次にその男は小石を穴に向かて投げ入れました。

石は音もせずに穴に吸い込まれていきました。

やがて誰にも理解できないこの穴は「埋めてしまおう」ということになったのですが、そこに利権屋が現れます。

村人に立派な集会所を新しく作ることを条件に、その利権屋は村人から穴を買取ります。

そして時が過ぎ、完成した立派な集会所で村人たちの秋祭りが行われている頃、利権屋は官庁を抱き込んで『穴埋め屋』をひっそりと、しかし精力的に始めます。

その穴埋め屋のいちばんの取引先は原子力発電所でした。

「核廃棄物を処理するにはもってこいの穴ですよ!!」と。

全国の原子力発電所は核廃棄物をこぞってこの穴に捨てる契約を行いました。

最初、不安で反対していた村人もいましたが、利益配分を貰うことと、数千年は絶対に安全だということで納得しました。

こうして穴はどんどん活用されていきました。

大学で伝染病の研究に使われた動物の死骸。

引き取り手のない浮浪者の死躰。

その他、都会の汚物のすべてがこの穴に埋められていきました。

穴は捨てたいものは何でも引き受けてくれ、都会の住人に安心を与えてくれました。

都会は汚れなくなり、やがて空も海も澄んできたようです。

その澄んだ空に向って高いビルがどんどん建てられていきました。


時は流れ、ある日のこと。

建築中の高いビルの上で作業員が休憩していると、彼の頭の上で「おーい でてこーい」と聞こえてきます。

彼は空を見上げますが澄んだ青空が広がっているだけです。

気のせいかな? と思い、再びビルの立ち並ぶ都会のスカイラインを眺めて悦に入っている彼の横を小石がかすめて落ちていきました…

*―――――*―――――*―――――*―――――*

およそ40年前に発表された星新一のショートショートの中の一話、『おーい でてこーい』のあらすじです。

このプロットが元々は何処にあるのかなんて問題ではありません。重要なのは40年以上も前に”穴の結末”が既に分かっていたということです。

この物語の登場人物はすべからず皆一様に愚かです。

利権屋も、村人も、官僚も、学者も、原発、都会の住人も。

でも…

ラストシーンで作業員は欲の象徴であるビル群にみとれて、小石が落ちてきたことに気が付きません。

如何にも滑稽です。

では現実の世界ではどうか?

小石どころか、もう既に放射能が穴から落ちてきているのに未だ気づかずにいるなんて、こんな馬鹿げた話は達人・星新一をもってしても当時は想像も出来なかったでしょう。

風刺物語の登場人物を軽く凌駕して、天才の想像を絶する程に僕たちはとても、とても愚かで滑稽だ。



<カクテル・スカイダイビング>


自分は穴を利用してこなかったとは言わない。

その代償として、今度はいつか自分が空に落ちる日がくるのだろう。

でも、その時までしっかり空をみて、耳を傾けようと思う。

穴の上に再び社を建てることができるように。










2013年8月7日水曜日

朝顔のための早起き

八月過ぎてやっと朝顔が咲きました。




 水月という名の青。

 夢かウツツか、ウツツが夢か。

空蝉

★先日のこと。

朝4時から滋賀県・草津の蓮の群生地と水生植物園に車で向かう。


 途中、京都から大津に入る前にひとつ峠を越えるのですが、そこは源氏物語でも有名な逢坂の関です。

 恩讐めいた話の多い源氏物語にあって、空蝉の物語、とくにこの逢坂の関の最後は美しくて一番好きな場面です。


 ★目的地に着く。
 辺り一面の蓮に圧倒されながらも写真を撮る。
 昔は蕾の写真が多かったように思えるのですが、今は盛りの過ぎた、散りかけの華に惹かれるのです。


午後の死

歯の詰め物が外れたので、先日から歯医者に行ってます。

 今日が二回目で歯石を落として終りのはずが、ムシ歯が発覚!
お盆あけから治療開始です。

あぁ、ドリルで...
 (T ^ T)


こんな日のカクテルは「午後の死」というアブサンをシャンパンで割ったもので。

このカクテルはヘミングウェイが自殺を試みたとき、火薬を口に詰め込み、発火させようとしたのですが、あえなく失敗。火薬の余りのマズさに手元にあったシャンパンでクチを濯いだのが始まりで、その後、あの刺激が忘れられなくなって、火薬をシャンパンで割ってたそうですが、その後、一般に手に入りやすいアブサンに変わったという事です。

 因みに午後の死とは闘牛の始まる午後五時の事を指しています。
 次の歯医者の予約、五時からなんですね、コレがまた。
(ー ー;)