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2013年5月27日月曜日

モヒートの弱点

★5月も後半になりましたが、すでに夏のような暑さが続いている京都です。夏になるとよくオーダーされるカクテルにモヒートがありますが、実はいちばんの飲み頃(旬)は5月くらいの時期なのです。

理由はこの季節のミントにあります。葉が柔らかく香り高いのでモヒートの材料にするにはベストのタイミングです。これが夏になると日差しが強すぎて葉が固くなってしまい香りもやや落ちてしまいます。


もっとも市販されているものを使うと年中を通してそんなに違いは感じませんが、農薬を使って育てたミントの葉をすり潰して飲むのは嫌なので月読では家庭菜園のミントを使っています。そのためよく品切れになるので困りものですが…



さてモヒートってどんなカクテルなのでしょうか?

語源はスペイン語の『濡れる』から来ているそうです。確かに暑い日にグラスの周りに霜が付いたモヒートで喉を潤すのは生き返るような心地よさです。じっくり時間をかけて飲むというより、風呂上がりのビールみたいにゴクゴクと一気に飲み干してしまいたいカクテルですから”喉を潤す”とか”グラスの冷気による霜”といった見た目にピッタリの名前ですね。


次にレシピです。

モヒートは作る人や店によってレシピが多様多彩なカクテルのひとつなのですが、基本的には次の通りです。

1 ラム 45ml
2 ライム 半分を絞ったもの
3 砂糖 小匙2、3杯
4 ミントの葉

ミントの葉をすり潰すし、他のものを混ぜ、その後ソーダで割る



以上が基本的なモヒートのレシピですが、この配合はある有名なカクテルととても似ています。さてそれは?



このレシピの雛形でもっとも有名なカクテルはジンフィズです。

1 ジン 45ml
2 レモン 15ml
3 砂糖 小匙2、3杯

以上をシェークしてソーダで満たす。

これがジンフィズのレシピですが、そっくりでしょう?
ベースの酒をジンからラムに変えて、レモンをライムにして、ミントを加えるだけです。簡単に言えばミントを入れたラムフィズがモヒートなのです。


ただこの些細なレシピの変化は実に上手く出来ています。

まずベースの酒がラムに変わるのは海賊が伝え、キューバで発展したカクテルなので当然ですね。ではレモンがライムに変わるのは何故か?

それはミントの葉をすり潰し、爽やかな香りをモヒートにのせるのはこのカクテルの美味しさの生命線です。ただ香りをしっかり付けたいがためにミントの葉を強くゴリゴリとすり潰すとアクが出て不味くなってしまいます。”やさしく仄かに”が基本です。

そうするとレモンではダメなのです。この辺のことは以前このブログ『美味しいを考える』で書いたことがあるのですが、レモンの特性のひとつに『匂い(臭い)を消す』というのがあります。よって仄かなミントの香りを活かすには同じ柑橘でもレモンよりライムの方が適しているのですね。


ただデメリットがあります。
レモンと砂糖の組み合わせは黄金配合のひとつで旨みの強烈なインパクトを生み出し、それがジンフィズの人気を支えている大きな理由のひとつなのですが、レモンがライムに変わることによってそれがモヒートには含まれません。

具体的にはカクテルにおいて旨味のインパクトが減るということは”美味しく飲める時間”の長さが短くなります。少しでも氷が解けると全体のバランスが崩れやすく、ジンフィズよりも遥かに早くシャバシャバした水っぽいカクテルになるので、どうしても短時間で本当に風呂上がりのビールのようにさっと飲んでしまうことがモヒートを美味しく飲む条件となってしまうのです。

多くの人にとって日本のバーは食事後の2次会的に使われます。冷房も効いています。その状況下ではなかなかモヒートを早く飲む(最後まで美味しく飲む)ことは難しくなってしまいますね。


そんな理由もあって、月読では去年はモヒートをフローズン・スタイルにして提供していたのですが、今年は伊江島産のサンタマリア(クリスタル)というラムに出会いました。


このラム、コクとサトウキビの香りが素晴らしく強いので、モヒートを作っても他のラムで作るよりも美味しく飲める時間がはるかに長く、レモンを使わないデメリットを殆んど感じさせません。、

更に使う砂糖を沖縄産の黒糖にしてアクセントを付けることで、より長くモヒートの美味しさを楽しんで頂くことが出来るようになりました。ミントの葉の関係上、一日に数杯しか作れませんがオーガニックミントの『サンタマリア・黒糖モヒート』、機会があればぜひお試しください。




*** あくまでも個人的な意見・感想であることをご了承下さい ***




2013年5月19日日曜日

営業時間変更のお知らせ

★本日、5月19日(日曜日)は慶事のため、Bar月読の営業開始時刻を19時からとさせて頂きます。

ご迷惑をおかけ致しますがご了承下さい。

m(_ _)m 店主

2013年5月17日金曜日

綱渡り


★Bar月読の窓から月が見えたので写真に撮る。

電線が絡み、校舎のグランドにネットが貼られていて、まるで三日月がサーカス小屋で綱渡りをしているかのよう。

ミヒャエル・エンデの短編を思い出す。


『綱渡りフェリックス・フリーゲンバイルのバラード』

フェリックス・フリーゲンバイルという名の綱渡りがいた。
 彼を誰もが認めていて、でも彼にとっては金も讃美も欲しいものではなかった。
 彼には技だけが総てだった。

芸の学校に入ると すぐに誰にも負けなくなった。
 1年が過ぎ、先生よりも上手くなった。
 先生は言った。
 「さようなら天才、私が教えることはもうないのだ」

そして彼は街に出た。
 彼が綱を渡ればどこでも喝采が響き渡ったが、彼は師を探し求め続けた。
 でも彼以上に上手に綱渡りをする人は誰もいなかった。

やがて彼は綱の代わりに針金を張り、それをどんどん細くしていった。
 数年後、彼は塔から塔へと張られた髪毛の上で舞い踊り、嵐の中でも渡って行った。

そして最後には信じられない事が起こったのだ。

なんとある日、彼は塔と塔の間に何も張らずに、無の上で空中を舞い渡った。



人々が見守る中、一陣の風が吹くと彼は空の彼方に連れ去られた。
 風が彼を何処に連れていったのか、誰も知らない。

ある時、天文学者が望遠鏡で宇宙を覗いていたときにそれを見た。

「幻ではないさ、宇宙を星から星へと踊るように渡っていく、かの綱渡りがそこに居たんだよ」と。



2013年5月16日木曜日

ガリレオ

★福山雅治のドラマ、ガリレオが人気だそうですが残念ながら月読の営業中なので観ることは出来ません。
 
それとはまったく無関係ないのですが、シングルモルト・ウイスキーのアードベッグのシリーズで『アードベッグ・ガリレオ』が入荷しました。
 

去年の秋にリリースされたのですが限定品のため今後徐々に品薄となり値が価値以上に高くなるのは目に見えているので、月読アイテムとしてはやや高級品になるのですが、店用と星好きの自分用保存版として今のうちに思いきって2本購入。
 
一応、もっともらしくこのガリレオの特徴をいうと、本来、アードベッグはバーボン樽で熟成さすのが常ですが、今回限りでワイン樽熟成のものとブレンドされています。潮の香いっぱいだったアードベッグのスタンダードに比べて、熟れたフルーツのニュアンスが強く感じられます。
 
まあ、アードベッグの限定品シリーズは好き嫌いはあれ、完成度は常に満足いくものなので問題はそこではなく、今回は”ジャケット”です。(笑)
 

ロケット、宇宙遊泳する犬(アードベッグ蒸留所の看板犬です)、星や宇宙から見た地球とかの絵が描かれているウイスキーです。星とウイスキー、好きなものが二つ、合体して存在するなんて…
 
ああ、見てるだけで飲まずに楽しい!! 
 (通販アレルギーが無くなるかも)


もし、このウイスキーを飲んでフラフラに酔っ払ったとしても、このセリフを言えば誰にも文句は言われないだろう?!
「それでも地球は回っている!!」と。



 

2013年5月10日金曜日

新月のカクテル


今夜は新月、月のない夜です。
 とはいえ、街に住んでいて明かりの全くない漆黒の闇など望むべくもなく、夜の中に居て月がない
ということに気づく人がいったい何人いるのだろう。

闇が恋人たちの味方だったのはもう遥か彼方の日々。


人に見られることのない暗闇の中で交わされる逢瀬。
 麝香と熟れた赤い果実の味。
 暗闇の中のキスはとてもつよく酔うのだけれど、口当たりは少しだけ甘く刹那い。


<カクテル★キス・イン・ザ・ダーク>

ジン(ハーブ香の蒸留酒)
 ベルモット(ハーブ白ワイン)
 チェリーブランデー(サクランボリキュール)

源氏物語でも読みながら新月の夜に如何ですか。




2013年5月6日月曜日

やわらかな夜

5月6日...ゴールデンウイークも最終日です。


まだ帰路の途中の方もいらっしゃるのでしょうね。
休日を満喫した方も、そうでない方も取り敢えずは皆さま、お疲れさまでした。

それから休日を遠くから月読に来てくださった方々、本当にありがとうございました。


連休最後の夜は明日からいつもの仕事に向かう気持ちの準備を整えなくてはなりませんね。そのためにはゆっくり寛いで落ち着いた”やわらかな夜”をお過ごしください。



こんな日の夜にはあまり強いお酒は必要なく、ミルクティーに胡桃のリキュール(ブランディーやウイスキーでもOK)を少しだけ落として香りをつけ、読みかけの小説や絵本を読みながらリラックスするのがいいですね。


あと、手元には疲れを取るために甘いクッキーなどを置いて。


BGMには『やわらかな夜』、がいいかな?(笑)

では、連休最後の夜、素敵な時間をお過ごしください。







2013年5月5日日曜日

5月の海のウイスキー




スコットランド・ジュラ島のウイスキー『ジュラ』
 ここで造られるモルトは殆んどピートを焚くことがないので穏やかな味わい。そのため主にシェリーの樽で熟成されその香りが付加されるのです。
 個性よりも飲みやすさを重視したシングルモルトといえます。


ところが仕入先で薦められたこのボトラーズブランド(本来の蒸留所から樽を買付け、独自の樽に移し変えて販売する業者の総称)の『G&Mコニサーズチョイス・ジュラ』にはオフィシャルにはない強い個性が現れています。

朝の海。金色の砂浜の光が目に飛び込んできて心地よく眩しい感じが第一のインパクト。
 その後、僅かに苦味のある柑橘、グレープフルーツとジンジャーティー、ライ麦パンの味。
 次にコーヒーの仄かな苦味と生クリームを添えられたアップルパイのデザートへと続きます。


明るい海辺の朝の朝食。シングルモルトでこのような陽の光を想起させるものは珍しく、実際、産地であるジュラ島は蒸留所のある他の島の中でも最も人口が少なく、岩肌が剥き出しになった荒涼とした場所であり、おおよそウイスキーの味というものは産地のイメージと直結しやすいのに、この思いがけない光景は樽と熟成の魔法だとしか思えません。


重厚で複雑な味のウイスキーは多くありますが、軽やかなのに複雑なものはとても珍しく、新緑の季節に相応しいウイスキーです。