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2013年5月17日金曜日

綱渡り


★Bar月読の窓から月が見えたので写真に撮る。

電線が絡み、校舎のグランドにネットが貼られていて、まるで三日月がサーカス小屋で綱渡りをしているかのよう。

ミヒャエル・エンデの短編を思い出す。


『綱渡りフェリックス・フリーゲンバイルのバラード』

フェリックス・フリーゲンバイルという名の綱渡りがいた。
 彼を誰もが認めていて、でも彼にとっては金も讃美も欲しいものではなかった。
 彼には技だけが総てだった。

芸の学校に入ると すぐに誰にも負けなくなった。
 1年が過ぎ、先生よりも上手くなった。
 先生は言った。
 「さようなら天才、私が教えることはもうないのだ」

そして彼は街に出た。
 彼が綱を渡ればどこでも喝采が響き渡ったが、彼は師を探し求め続けた。
 でも彼以上に上手に綱渡りをする人は誰もいなかった。

やがて彼は綱の代わりに針金を張り、それをどんどん細くしていった。
 数年後、彼は塔から塔へと張られた髪毛の上で舞い踊り、嵐の中でも渡って行った。

そして最後には信じられない事が起こったのだ。

なんとある日、彼は塔と塔の間に何も張らずに、無の上で空中を舞い渡った。



人々が見守る中、一陣の風が吹くと彼は空の彼方に連れ去られた。
 風が彼を何処に連れていったのか、誰も知らない。

ある時、天文学者が望遠鏡で宇宙を覗いていたときにそれを見た。

「幻ではないさ、宇宙を星から星へと踊るように渡っていく、かの綱渡りがそこに居たんだよ」と。



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