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2012年12月31日月曜日

美しき天然

★先週、12月25日のクリスマスは珍しく火曜日で店が定休日だったので夫婦で出かけてきました。行先はクリスマスディナー・・・ではなくてライブです。

『ふちがみとふなと』さんの。

★『ふちがみとふなと』さんは私たちが4年前に結婚したときに披露宴で演奏して頂いたユニットですから、クリスマスに聴きに行くにはピッタリでした。



★4年前、披露宴での演奏を依頼した時、渕上さんから「何か聴きたい曲はないですか?」と聞いていただいたので、お言葉に甘えて1曲だけリクエストをさせてもらいました。

★その曲は『美しき天然』。(ふちがみとふなとさんのアルバムにカバー曲として収録されています)


この綺麗な歌、昔から大好きなのですが、調べてみると作曲した田中穂積さんという方は長崎県、佐世保の九十九島の風景に想いを馳せてつくられたようです。月読を造って頂いた大工さんも長崎の船乗り出身だったし、このブログを書いている今日の大晦日が偶然にも田中穂積さんの命日でした。なにかしらご縁を感じます。


★さてこの曲、自然の美しさを謡っているのですが、欠かせないのは”色”です。僕はもともと色が好きで今の仕事を始めたわけですが(もし違う仕事だったら花屋とか宝石のカッティングの仕事とかに憧れがあります・・・)、『美しき天然』を聴いて思い浮かんでくる色たちはとてつもなく綺麗でいつも圧倒されてしまいます。実際の景色とか絵とか、視覚によってもたらされる色の美しさはよく感じることがあっても、聴覚からの色でここまで感動的なものは他に思いつかないですね。


★ただ今年の最後にこの曲を聴いてみて思うのは、色の美しさではなく”強さ”です。

★人にはそれぞれもって生まれた、そして育んできた色があります。”個性”という言葉だけでは言い表せないもっと多くのものを含む色です。

★当然、それぞれが持つその色は大切にするべきもののはずなのですが、世の中はそれを別の色に染めて(汚濁という意味で)しまおうとする歪んだ力がいっぱいあります。


★もし、汚濁に染まらないでいようとするのなら、たとえある場面で泥を被ったとしても(社会ではそういう場面が往々にしてありますね)、後にその泥を弾き飛ばすだけの強さが必要です。色が綺麗であるためには強さをあわせ持つことが不可欠なのです。


★どうしてこんなことを年度末に考えているかというと、今年を振り返ってみて特に思うことは、マスメディアやプロパガンダによって随分と汚濁色に染められてしまったなあと思うからです。”(誰かによって)染められない強さ”、持ちたいですね。

★美しい色を見ていると、本当の強さというものを考えさせられます。今、見るべき色が身近にない時でも、この歌を聴けばそれを忘れずにいられるような気がするのです。

日本に、世界に、人の心に、美しき天然が残りますように。

http://www.youtube.com/watch?v=FQ-moleGtLc  =土居裕子 - 美しき天然


2012・12・31 




2012年12月25日火曜日

年末年始、営業の御案内

★年末は12月30日(日曜日)まで営業致します。

★年始は1月3日(木曜日)から通常営業させていただきます。

ご了承の程、よろしくお願いいたします。 m(_ _)m 

2012年12月19日水曜日

見えざる遺産

★イーグルスの名曲、ホテルカリフォルニアを聞いたことがありますか? 哀愁漂うリフレインはまさに日本人の琴線に触れるようで、「洋楽のベスト10」なんかを集計すると1977年の楽曲であるにもかかわらず現在でも常に上位にランクインするほどの人気です。

★この曲の歌詞の中で、心の迷宮であるホテルカリフォルニアに迷い込んだ主人公が落ち着きを取り戻そうとホテルの支給に”酒”を頼むのですが「1969年以来、ここにはスピリッツはありません」と言われてしまいます。まあ、ここんとこの詳しい意味は書くとかなり長くなってしまいますので興味のある方はググッて頂くとして、私にある男性のお客様が「ホテルカリフォルニアの歌詞には”スピリッツ”という言葉が出てくるんだけど、”酒”という意味と”魂”という意味をダブらせて歌っているんだよ」と教えてくれたのは25年程前、私がまだバーテンダーのアルバイトだった頃です。



★最近、知人が悩んでいる案件があります。その彼女は仙台出身ですが現在は京都在住で仕事をしています。数年前にご両親が亡くなって、その住まわれていた家が空家になっていたらしいのですが、誰も住むことがなくなったその家は朽ち始めてきました。そして親戚会議の結果、取り壊して土地を売る事が決定しました。

★さてその彼女、楽しい思い出がいっぱいの家が失くなってしまうことが現実となり考えました。自分が京都の仕事を辞めて、仙台に帰ってその家で暮らせば”家”を残せるではないか、と。庭に植わっている柿の木も、小さな頃に落書きをした台所の柱も、父が日曜大工で作った棚も、自分が今の暮らしを犠牲にすれば残すことが出来るじゃないかと。いつも両親がいたリビング・ルーム。居心地がいいので兄弟が集まり、親戚が集まり、友人たちがいっぱい集まってきたあの部屋は何とか残したいのだ、と言います。


★けれど、彼女のその迷いはどちらかを選択する前に、ご兄弟の意思決定で既に売り払われてしまいました。そうなるとますます迷い、後悔するのが人の常です。「もっと早く決めて仙台に戻っていれば良かったのか・・・なあ・・・」と。

★でも、違うと思うのです。亡くなったご両親は今の生活を犠牲にして帰ってくることを望むでしょうか?(仕事だって探さなければならないし) 決して喜んではくれないはずです。

★場所や建物はいつかは無くなります。どんなに大事に使っていたとしても必ず使えなくなる日がやってきます。大事なのは皆が集まってきていた部屋を残すことではなく、そんな部屋を創ることが出来たご両親のスピリッツを受け継ぎ、遺すことなのです。

★イーグルスのホテルカリフォルニアは過去に執着し、後悔や失望から逃れられなくなり、未来が描けなくなった心の迷宮を歌っています。そこから抜け出すにはそのホテルのバーでは置かなくなった”スピリッツ”(魂)が必要なのですが、それは誰かが与えてくれるものではなく自分で探さねばなりません。

でも建物と違ってスピリッツは見つけにくいのです。
・・・何故なら蒸留酒も魂も透明ですからね。


 ★「大切なものは目に見えないんだよ」と言ったのは砂漠のキツネでしたが、見えないものを見定める”目”を持つことはなかなか難しいですね。だからこそ、それぞれが見えるものを見えない人に教え合うことが出来れば理想的なのですけれど。




★さて月読にはバーとしては珍しいのですが焼酎を置いています。これは決して焼酎ブームに感化された訳ではなく、日本の蒸留酒、つまりスピリッツとしてジンやウオッカと同等に扱っています。ただし粗悪で安く売れるものを置くことはなく、そういった意味では他国のどんなスピリッツよりも厳正にそのスピリッツ(魂)を吟味して揃えています。

★その中でも特に、今回ご紹介する種子島の『安納』はそういった”魂”を持ち合わせた、世界に出しても恥ずかしくないスピリッツなのです。


1、種子島の安納地区でしか栽培されない原材料

2、最も甘くて美味い安納芋を契約農家に依頼

3、仕込水は、世界赤十字社で高水準と評価された超軟水種子島甲山水を使用

4、黒麹菌を使い、一次仕込みも二次仕込みも昔ながらの製法である、かめ壷を使用




ワイン、日本酒、ウイスキーやカクテルもいいですが、たまには透明なスピリッツを飲んでみるのもいいものです。

透明なグラスのその向こうに何かを見つけることが出来るかも知れません。

BGMにはもちろん、ホテルカリフォルニア(http://www.youtube.com/watch?v=dUkxzkmJMzI)を聞きながら。








2012年12月17日月曜日

クリスマスツリー


少し前から店内にクリスマスツリーを飾っています。

ちょうど8年前にBar月読をOPENしてからずっと同じツリーです。


ツリーの電飾、昨今は単色のスタイリッシュなものが主流ですが、昔はそんなに何種類もなかったなあ。

オシャレ感はないけれど、僕は赤、青、燈、桃、緑などカラフルで昔ながらのベタな電飾が大好きなのです。



クリスマスの日にプレゼントを貰うよりも、ツリーの灯を見てる事の方が楽しみでした。

虹色の雪が舞い降りてくるようなクリスマスツリーのイルミネーション。たぶんバーテンダーになったルーツはここにあります。

・・・なんかカクテルみたいでしょ?(笑)


2012年12月9日日曜日

営業時間 臨時変更のお知らせ

2012年 12/09 (日)は祝事により営業開始時刻を20時よりとさせて頂きます。

ご迷惑をおかけ致しますがご了承くださいませ。

m(_ _)m

静寂に沈む月

★夕日の色を知らない人はいないと思いますが、同じように西の空に沈みゆく月(満月かそれに近い月齢)が何色になるのか知らない人は多いと思います。

稀にですがそれは金色に輝くように光ります。「金色のように見える」ではなくて、本当に黄金色になるのです。それもまわりの雲までも金箔のように染めながら。仕事の終わる時間の関係でよく目にするのですが、あの光景は神々しくさえ見えます。



★幼少の頃、今はもう亡くなった父の運転する車に乗っている時、いつも後部座席に座らせられていました。

夜、よく窓の外を見て月を探したものです。子供の質問の定番である「どうして月はずっと後をついてくるのやろう?」という問いかけをした記憶が確かにあります。ただ残念なことに両親がその問いにどう答えたのかは覚えてはいないのですが・・・


★幼少の頃といえば僕は躰が弱く、扁桃腺を腫らしたり風邪をひいて熱を出すのは日常茶飯事でした。

当時、バスで4つ先の停留所に評判のいい耳鼻咽喉科があって、そこが僕の”行着け”でした。そこの先生は優しかったし何より病気がすぐに治ったのでとてもいい病院だったのですが、たったひとつ大問題がありました。それは夜の診療しかしていなかったので、その時間、僕にとってはすごく大事な仮面ライダーの放送時間とかぶったのです。当時はビデオなんてありませんから録画はできません。しかも病院に行く日は往々にして『仮面ライダー1号、2号そろい踏みの回』とか前後編の後編を放映するスペシャルな日だったりするのです。

★病院への引率は父が当番を受け持つことが多かったように思います。たぶん夕食の後片付けを母がする関係だったからでしょう。父は自分が生まれてすぐに”自分の父”、(つまり僕にとっての祖父)を亡くしていて、父=子供という関係を経験したことがなかったので、自分が親になっても子供に対しては不器用で無口でした。


★ある日の夜、病院に行かねばならない日。その日は仮面ライダーの最終回でした。だからといって行かない訳にはいきませんから、泣いたか喚いたかをしたかも知れませんが、とにかく無理にでも連れて行かれたはずです。

診察が終わってバス停まで少し歩いてベンチに座る。通りの向こうにある市場はとっくに閉店していて、屋根にある大きな時計の針を見て「やっぱり間に合わなかった・・・」とガッカリ感満載で俯き、自分の靴に描かれていた何かのキャラクターを見ていたと思います。

バスの来る間隔は20分毎。運悪く少し前に行き過ぎた後だったようで、次が来るのを待たなければなりません。長く、たぶん感覚的に長く続いた沈黙のあと、突然、父が空を見上げて「・・・月が傘を被ってるから明日は雨やなあ」とポツリ。

有名な天気諺ですが、独り言だったのか、それともしょぼくれていた息子に向かって言ったのかはわかりません。ただそれを聞いて僕も同じように月を見て、そして「何で傘を被ったら雨になるの?」って聞き返しました。そこまでは覚えているのですが、やはり父がそれに対してなんと答えたのかは全く覚えてはいないのです。


★グレンモーレンジというシングルモルト・ウイスキーがあります。この蒸留所は熟成の仕上げに多彩な酒の空樽を使い、複雑な香り付けを施したウイスキー造りのパイオニアなのですが、その中の一本に『ネクタードール』というボトルがあります。

ネクタードールはデザートワインの空樽で仕上げを施した、蜂蜜のように甘く複雑な味と、その中に硝子の破片のように微細で鮮烈なレモンの香りを探し出すことが出来ます。


★グレンモーレンジの意味は『静寂なる渓谷』

そしてネクタードールは『黄金の果汁(もしくは神の酒)』

このウイスキーを飲む時、僕はあの日の夜のことを思い出します。特撮ヒーローの勇姿は観られなかったけれど、もしかしたら黄金の果汁を飲むような濃密で、かけがえのない時間だったのかも知れません。


★月の質問をしていた幼少の頃。

翻って現在、毎日のように店に行き、シャッターを開ける。

ふと脇の看板を見て、気付くとまだ月は追いかけて来ていた。

思い出せなくても、いつか自分の答えを見つけることが出来るのだろうか?





この歌が好きなのは多分、こんな理由で。

http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=hGuKoEAG5NQ

2012年12月5日水曜日

光を追って・・・


誰しも子供の頃にしゃぼん玉をつくって遊んだ記憶があるはずです。
あの頃、浮遊する虹色の光に包まれて何を思っていたのか、覚えているでしょうか?


★沖縄の紅型作家、縄トモコさんの個展に行ってきました。鳥取県です。普通ならまず行かないであろう距離の部類に入る京都=鳥取間。しかしながら今回は『行きたい!!』と強く思い立った理由があります。それは個展のテーマが『ヒカリの風で遊ぶ』、であったこと。自分の中で何処かカクテルやウイスキーの色彩と似通うところを感じたからです。


★店が終わり、徹夜明けで京都から着いた鳥取県の早朝、躰は冷えきっていました。しかしギャラリーの開場時間、フライング気味に入り込んだ瞬間、そこは寒さを感じない場所でした。





明るい森の中。
春でも秋でもない、ましてや夏でもない。
ただ、穏やかな季節と緩やかな時間の流れ。


時々、風が吹くと木々が囁き、木もれ陽が揺れる。


大きな木の幹にもたれながら、しゃぼん玉を飛ばす。


虹色の光が拡散し、ワルツを踊るように流れては消えていく。




★そんな光の森にいると自然に一杯のカクテルを思い出します。


★ジンと杏のブランデー、オレンジを使ったカクテルで名前は・・・桃源郷(パラダイス)。
本来は『パラダイス』というネーミングからは”楽園”、”エデン”とするべきなのでしょうが、杏を使っているところがこのカクテルのミソだと個人的に思っています。故に桃源郷。(笑)

ジンの銘柄は個展のイメージに合わせて、透明感のあるボトルでシトラスの風味が強調されて作られているタンカレーのラングプールを選びました。



虹色の光で遊ぶしゃぼん玉。

思いはどうあれ、どんな人でも必ず目線は上に向かう、光を追って空を見る。

きっと、これが大事なのだ。


★今回の個展、彼女の作品を観てギャラリーを出たとき、すべての人が空を見上げて光りの風を探すのではないだろうか。そんな想いを抱かせてくれる空間でした。

そういえば会場であるギャラリーの名前は・・・”そら”




☆文中の写真は絵ハガキや案内状を使わせて貰いました。展示作品とは異なりますことをご了承ください。また今回の強行ツアーに連れ出していただいた村上ご夫婦、昼食の案内をしてくださったギャラリーそらのオーナー様、あと勿論、縄さん他・・・多謝です。

m(_ _)m





御案内

縄トモコ 紅型展

「ヒカリの風で遊ぶ」

日時
2012年12月4日(火)~12月9日(日)
open→10:00~18:00  最終日17:00まで

場所
ギャラリーそら
鳥取県鳥取市栄町658-3
駅前サンロード
Tel:0857-29-1622
www.gallery-sora-kuu.com