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2012年12月19日水曜日

見えざる遺産

★イーグルスの名曲、ホテルカリフォルニアを聞いたことがありますか? 哀愁漂うリフレインはまさに日本人の琴線に触れるようで、「洋楽のベスト10」なんかを集計すると1977年の楽曲であるにもかかわらず現在でも常に上位にランクインするほどの人気です。

★この曲の歌詞の中で、心の迷宮であるホテルカリフォルニアに迷い込んだ主人公が落ち着きを取り戻そうとホテルの支給に”酒”を頼むのですが「1969年以来、ここにはスピリッツはありません」と言われてしまいます。まあ、ここんとこの詳しい意味は書くとかなり長くなってしまいますので興味のある方はググッて頂くとして、私にある男性のお客様が「ホテルカリフォルニアの歌詞には”スピリッツ”という言葉が出てくるんだけど、”酒”という意味と”魂”という意味をダブらせて歌っているんだよ」と教えてくれたのは25年程前、私がまだバーテンダーのアルバイトだった頃です。



★最近、知人が悩んでいる案件があります。その彼女は仙台出身ですが現在は京都在住で仕事をしています。数年前にご両親が亡くなって、その住まわれていた家が空家になっていたらしいのですが、誰も住むことがなくなったその家は朽ち始めてきました。そして親戚会議の結果、取り壊して土地を売る事が決定しました。

★さてその彼女、楽しい思い出がいっぱいの家が失くなってしまうことが現実となり考えました。自分が京都の仕事を辞めて、仙台に帰ってその家で暮らせば”家”を残せるではないか、と。庭に植わっている柿の木も、小さな頃に落書きをした台所の柱も、父が日曜大工で作った棚も、自分が今の暮らしを犠牲にすれば残すことが出来るじゃないかと。いつも両親がいたリビング・ルーム。居心地がいいので兄弟が集まり、親戚が集まり、友人たちがいっぱい集まってきたあの部屋は何とか残したいのだ、と言います。


★けれど、彼女のその迷いはどちらかを選択する前に、ご兄弟の意思決定で既に売り払われてしまいました。そうなるとますます迷い、後悔するのが人の常です。「もっと早く決めて仙台に戻っていれば良かったのか・・・なあ・・・」と。

★でも、違うと思うのです。亡くなったご両親は今の生活を犠牲にして帰ってくることを望むでしょうか?(仕事だって探さなければならないし) 決して喜んではくれないはずです。

★場所や建物はいつかは無くなります。どんなに大事に使っていたとしても必ず使えなくなる日がやってきます。大事なのは皆が集まってきていた部屋を残すことではなく、そんな部屋を創ることが出来たご両親のスピリッツを受け継ぎ、遺すことなのです。

★イーグルスのホテルカリフォルニアは過去に執着し、後悔や失望から逃れられなくなり、未来が描けなくなった心の迷宮を歌っています。そこから抜け出すにはそのホテルのバーでは置かなくなった”スピリッツ”(魂)が必要なのですが、それは誰かが与えてくれるものではなく自分で探さねばなりません。

でも建物と違ってスピリッツは見つけにくいのです。
・・・何故なら蒸留酒も魂も透明ですからね。


 ★「大切なものは目に見えないんだよ」と言ったのは砂漠のキツネでしたが、見えないものを見定める”目”を持つことはなかなか難しいですね。だからこそ、それぞれが見えるものを見えない人に教え合うことが出来れば理想的なのですけれど。




★さて月読にはバーとしては珍しいのですが焼酎を置いています。これは決して焼酎ブームに感化された訳ではなく、日本の蒸留酒、つまりスピリッツとしてジンやウオッカと同等に扱っています。ただし粗悪で安く売れるものを置くことはなく、そういった意味では他国のどんなスピリッツよりも厳正にそのスピリッツ(魂)を吟味して揃えています。

★その中でも特に、今回ご紹介する種子島の『安納』はそういった”魂”を持ち合わせた、世界に出しても恥ずかしくないスピリッツなのです。


1、種子島の安納地区でしか栽培されない原材料

2、最も甘くて美味い安納芋を契約農家に依頼

3、仕込水は、世界赤十字社で高水準と評価された超軟水種子島甲山水を使用

4、黒麹菌を使い、一次仕込みも二次仕込みも昔ながらの製法である、かめ壷を使用




ワイン、日本酒、ウイスキーやカクテルもいいですが、たまには透明なスピリッツを飲んでみるのもいいものです。

透明なグラスのその向こうに何かを見つけることが出来るかも知れません。

BGMにはもちろん、ホテルカリフォルニア(http://www.youtube.com/watch?v=dUkxzkmJMzI)を聞きながら。








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