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2013年4月25日木曜日

Colorful Poison For Sale ~綺麗な毒を売り物にして~

★『パンドラの箱』の話は有名ですね。

決して開けてはならない箱をパンドラ(女性)が好奇心に負けて開けてしまう。
すると世界中にありとあらゆる災厄が光のつぶてになって飛び散ってしまい、慌ててパンドラは箱の蓋を閉じますが時すでに遅し。

取り返しのつかないことをしたと落胆するパンドラに箱の中から声が聞こえてきます。
恐る恐るもう一度箱を開けてみると、最後に残っていた希望という光が弱々しく出てきます…


★実はバーテンダーにも決して開けてはならないパンドラの箱が存在します。

カクテルコンテストで優勝し、何冊も酒の本を書いているような有名な人も、そして昨日今日、バーテンダーになった人でも、皆、等しくこのパンドラの箱を持っています。




「…開けてみましょうか?!」




★曰く、バーテンダーは神父のような存在なのだそうです。

自殺しようとする人が最後に行くところは教会かバーなのだそうで、「ご安心ください、バーテンダーは決してお客様を裏切りません、世界中があなたの敵でもバーテンダーだけはあなたの味方です。どうぞこの一杯で元気を取り戻して下さい」
…と、カウンター越しに笑顔で差し出した綺麗なカクテル。

しかしその綺麗な色には発癌性などの健康を害するであろうといわれる着色料や保存料、香料が盛りだくさん。

(主に)リキュールには化学物質がいっぱい入っています。
でも誰もバーテンダーはその危険性を口にすることはありません。

僕が子供の頃、1号、2号などと名前に付くものは仮面ライダーやサンダーバードであって、いずれも大好きであったけれど、赤色1号とか青色2号なんてものは絶対に好きにはなれないし、殆どの人がそう思っているはずなのです。


でも著名なバーテンダーにはスポンサーがつき、それ(リキュール)を使ったカクテルのコンテストがあり、レシピ本を書き、その危険性を口にすることは出来ません。

そもそも、どんなバーテンダーでさえ添加物を含んだリキュールは、存在するすべてのリキュールのうちで多分、99%以上を占め、それを否定して使わないことはカクテルの殆んどを作らないという、自分の存在自身をも否定する事になりかねないのです。

他の食品業界が原点回帰して昔ながらの製法や原料を厳選して作った場合、その”昔ながらのやり方”は味方になってくれるけれども、ことカクテルに至ってはそうはいきません。何故なら昔から色はその殆どが添加物であり、現在、どんどんと市場に出てくる新しいリキュールもまた添加物の使用された酒なのだから、”古き”も”新しき”も味方にはなってはくれません。


★リキュールだけが危ない訳ではなく…

例えば、アメリカ圏で造られる酒=バーボン、ライウイスキー、ウオッカ(実はアメリカでの生産が結構多い)などはすべて遺伝子組み換え原料が使われています。

日本でも、ビール、発泡酒、廉価品の焼酎などは遺伝子組み換え原料が使われていると言われています。


★食の安全が危惧され始め、一部の生産者や販売業者、そして飲食業務店などがより安全なものを提供しようという気運が高まりつつあるのに、バーだけはまったくそこに手つかずのまま今日に至っています。(少なくとも僕の知る限りでは)

そもそも日本人の気質は良くいえば売る側(企業であれ個人であれ)への信頼が強く、それはそれでいいのかもしれないけれど、悪く言えば危機管理がなく”ユルイ”のです。

例えばミスタードーナツなど過去2回も禁止されている添加物を使い営業停止になっているのに未だに多くの人が買って食べているし、有名な焼酎の魔王、これも混入だったか原料の偽装が発覚していた。なのに未だにプレミア価格で取引されています。

一度発覚して社会的制裁を加えられたらもう二度と同じ過ちは犯さないと信じる方が人としては良いのかも知れませんが、以前にモラルを欠いた会社の製品をプレミア価格で余分なお金まで支払って嬉しそうに飲むなどと僕には到底理解しがたいのですが…




★で、自分(Bar月読)はどうするのか?

さて、その方針を決める前に添加物(酒に使われている)がどの程度、危険なのか調べてみました。

…が、その前に、ネットでこの手のことを検索してみると面白いことが分かってきます。

食品添加物について書いている人は大きく分けて次の三通りに分類されます。

① 食品添加物に対して感情的、道徳的、宗教的に拒絶する人

② 化学的論証を用いて一応の安全性は認められるものの、それでも摂取したくない人

③ 捏造された、或いは間違った、誤解された、一見、化学的に見えるようなデータを感情的に嫌悪感を持って否定する人


①②③共に多かれ少なかれ添加物に対しては否定的なのですが、実は③が結構多いのにびっくりです。

③の人はもともとフラットな思考が出来ていなく、添加物=絶対悪という答えが初めから出来ているので、間違ったデータや意識的に捏造された実験などに騙されていたり、固定観念に囚われていて、およそ化学とは無関係な感情論を無理やり”化学的根拠”として書いている人が殆んどです。

例えばこれは当初、僕も誤解していたのですが、天然添加物と人口添加物だとどちらが安全か?

答えはどちらもそれぞれに危険性が憂慮されています。ものによっては天然添加物の方が危険な場合があります。でも③の人はよく「天然だからこちらが安全」という風に言っていたりします。

また、赤い色を付けるのによくコチニールという虫の色素が使われます。カンパリなどの赤色がそうです。
これはこれで実際、化学的に危険性が認められているのですが、③の人は「虫を使って色を付けているのですよ! 化学的に言って不衛生極まりなく危険だ!! 」と”感情的”に言っています。

何が言いたいのか? ③の人を馬鹿にしたい訳ではありません。
この手の問題を考えるとき、決してひとつの意見や書物(例え著名人が書いたものやベストセラーであっても)で判断したり、固定観念をもって足を踏み入れる事のないようにしなけれは、誤る可能性が非常に大きいということです。


★一旦の結論は出たのですが…(ここでは遺伝子組み換え原料については除外)

話を戻しましょう。

僕は②(=化学的論証を用いて安全性は認められるものの、それでも摂取したくない)の人の話にまず着目します。複数の化学に携わる人達の話で、客観性が認められる(と思える)ものです。

そうすると添加物は未知の危険性は残すものの、現状では安全ということになってしまいます。
現時点で憂慮されている危険性も例えば「駅に向かって歩いていくのに、大通りを歩いていくより、交通量の少ない裏道を歩いていった方が安全だ」というような具合に、まず歩いていて交通事故に遭う可能性はごく僅かであり、その上で更に安全を期す…というような差でしか添加物(ここでは酒に使われているものに限りますが)を摂取する、しないに殆んど違いがないのです。実際、添加物が原因で死亡した事例で明確なものはありません。


★こんな風に書くと添加物容認かと思われそうですが、そうではありません。

②の人達もこぞって出来るならば摂取しない方が望ましい(が、別段、摂取したからといって心配はしていない)との方針をお持ちのようです。

それに加えて僕は①(=食品添加物に対して感情的、道徳的に拒絶)の考え方も持ち合わせているので基本的に添加物はNOなのです。

基本概念はふたつあります。

1 自分や身内に飲ませたくないものをお客様に、それもお金を払っていただいてお出しする訳にはいかない。(感情)

2 僅かでも危険が指摘されているものを飲食物として扱っていいのか? (職業的倫理)




★では、添加物を使っていない酒(主にリキュール)だけを使ってBarが出来るか?

1 添加物を使っていない蒸留酒・ワインなどと、無農薬(もしくはそれに類する)フレッシュフルーツのジュースだけで出来るカクテルも幾つかある。

2 数は少ないが無添加のリキュールもある。

3 オーガニックのリキュールは概ね高価であり、例えば無添加の木苺リキュールなどを使ってソーダ割りを作るとすると単純な原価計算上、一杯あたり¥2000のフランボアーズ・ソーダになってしまう!? いったい誰がそんな高い木苺ソーダを飲むか?

4 原材料に危険性のある酒を排除するならビール(EU圏を除く)やバーボンをも取り除かなくてはならない。売るものが圧倒的に減ってしまう。

5許容範囲の原価でまったく新しい無添加カクテルを幾つも作ることは可能であるが、お客様の需要として味ではなく、伝統的なカクテルの、そのネーミングからくるイメージや雰囲気といったものが必要なときはどうするのか? しかもそのケースは往々にしてあるはず。


★以上、幾つかの解決すべき問題は残すものの、『安全な酒だけを使ったBar』として特化した店にすれば何とか出来そうだ。


でも…なんかおかしい… …? ?

何処かで何か大事なことを見落としている気がする…

どうも先のところで触れた③の過ちと同じ臭いがする。



★Barは廃業しなければ…

しばらく考えてとんでもない事実に気がつく。

パンドラは箱からすべての災厄を解き放ったあと、箱の隅に希望という小さな光を見つけるのでしたが、バーのパンドラの箱は最後に絶望的な闇が??

それはーーーーー

主にリキュールに使われている添加物。その危険性は歩いていて交通事故に遭って死亡するような可能性。それでも危険性のある化学物質であることには違いないのだから排除する…

でも、しかし、この考え方でいくと…

実はバーには添加物の何百倍にもおよび危険性のある化学物質が数多く存在します。
その化学物質の名はエチルアルコール。つまりは飲料アルコール全般。
『酒』が、アルコールの方が、添加物よりも格段に人体にリスクのある危険化学物質なのです。

アルコール中毒性、各消化器官、臓器疾患。

アルコールという化学物質は添加物では明らかでない死に繋がる因果関係が明確に証明されています。

人体に危険な化学物質を排除してバーを営業使用とすれば、まずエチルアルコールをなくさないといけなくなってしまいます。



★さあどうする? Bar月読 !!

明日からカフェに転向するのか?!




★箱の奥に希望の光はあるはず。

考え方を変えてみよう。

酒とは何か? バーとはどういった処か?

カクテルを作ることやそのレシピを”処方・処方する”と言います。

これは薬と同じですね。元来、リキュールは薬草を漬け込んだ薬として飲まれていました。今日、その意味はなくなってしまいましたが、精神的な部分を癒すという意味では今でも薬と考えてもよさそうです。

孤独を癒す。悲しみを紛らかす。雰囲気をつくる。心を開く。喜びを噛みしめる。内なる自分を省みる…

これらは酒という特効薬がもたらす効能の一部です。

酒が薬であり、嗜好品であるなら効能の他に副作用というリスクは付き物で、そういったことをすべて踏まえて、バーという日常を忘れた空間で効能を最大限に、リスクを最小限にしてお客様に提供するのがバーテンダーという職業の本質なのでしょう。

もちろんそこにはお客様によっては『酒を一切提供しない』という処方も含まれます。

”誰に”、”何を使って”、”どのくらい”作るのか。そこには”処方”の技術と経験が必要なのです。バーという異空間で酒という綺麗な毒を楽しんでもらうために。



★最後に箱から出てくるもうひとつの光を。

友人やお客様にも飲食物に関して無農薬やオーガニック、無添加など、しっかりとした知識を持っている人達がいます。

彼らにはある共通した”意外なこと”があるのです。


それが何かというと、彼らにこう質問したとします。

「あなたが無農薬や無添加にこだわるのは健康のためですか?」と。

普通、そう思うでしょ?

でも彼らは決まってこう言いますよ。例外なく全員が、です。

「いいえ、その方が美味しいからです!!」と。



何故こんな答えになるのかというと、感情的でなく、先入観や固定観念なく、ちゃんと学んでいるからだと思います。

現時点で公平な目で見た場合、添加物を科学的・化学的にリスクを踏まえて見れば否定できない事実があり、そこを突こうと思うとパラドクスに陥ってしまうことを知っているから。


そしてこれが今回の最大の答えでもあります。

飲食物を”つくる”という時、本当に美味しいものを作り、それを追求していくということは、その向こうに必ず『キレイなもの』『ヤサシイもの』が存在するということなのだと。





PS それにしても、やっぱりこの分野に関しては他の食品業に比べてバーは大幅に意識が遅れていると思いますね。














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