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2013年3月8日金曜日

『おいしい』の仕組みを考える Ⅸ

☆オーダーの少ないカクテル、ありそうで無いカクテル

*―――* 太陽の果実と月の果実*―――*


ジントニック

おそらくはBarで最もよく飲まれるカクテルのひとつです。
でも、どうしてジンなのでしょう?
同じスピリッツにウオッカ、ラム、テキーラとあるのに、その中でもダントツにジントニックの人気は群を抜いています。


答えは簡単。同じ条件下であるひとつだけが抜きん出ている場合、それは『おいしい』からに他ならないのです。もちろん好みはありましょうが、それでも多くの人の総意としてジントニックが他のスピリッツで作る”~トニック”より美味しいと判断した結果の大差なのです。

ここにも『おいしい』の定義は当てはまります。
ジンは他のスピリッツに比べて、香の複雑さがあり、(使っているハーブの種類が多い。ウオッカは0、ラムはサトウキビの香、テキーラは竜舌蘭に由来する香。それに比べてジンはジェニパー、コリアンダー、レモン、ジンジャーなどなど多種)トニックウォーターの苦味、甘味、炭酸の刺激とよく和合するのです。


ジンの次に相性がいいのはテキーラで、ラムはサトウキビの甘い香とトニックの甘さがそれぞれ異質なので、合わさったときにアンバランスな甘さを感じてしまいます。

ジントニックの次に人気があるのはウオッカトニックですが、これは味、香がプレーンに近い分、スイートスポットが小さく、作り手の腕がより要求されます。



ジンライム

これもジントニックと同様に、たまにウオッカライムの注文があるくらいで、ラムライムやテキーラライムなんてオーダーはありません。カクテルブックにもジントニックやジンライムは載っていても他のものは記載されていません。

ところがジンライムが他のスピリッツよりも群を抜いて美味しいかというと、そうではありません。ここが重要なポイントですが、トニックウォーターと違って、ライムはどのスピリッツとも相性がよく、1+1を2+αにしてくれます。


ライムという果実はBarの中でも特によく使われる柑橘ですが、最も蒸留酒に程良く混ざり、甘さ、酸味、苦味のバランス具合がちょうどいいので、まるで月のように相手に合わせて、味の役割を様々に変え、相手の(お酒の)長所を引き出してくれます。



さて、ここで問題です。カクテルに(レシピ本なんかでも)ジンライムはあってもジンレモンが無いのは何故でしょう?

おそらくBarで「ジンレモンください!!」と注文したらバーテンダーは躊躇なく作ってくれると思います。でも、カクテルの本には載っていないし、バーテンダー自らが率先して作ることはありません。

何故か? 美味しくないからです。レモンそのものの味が好きな人は別ですが、スピリッツにレモンを混ぜると1+1は2に満たなくなってしまうのです。

バーテンダーは知っていて作らないのか?

バーテンダーが率先してジンレモンを作らないのはそれが美味しくないと知っているからですが、『何故、美味しくないか?』については経験則的、感覚的に解っているという理由が多数なのではないでしょうか?

この”『おいしい』の仕組みを考える”をまとめるにあたって、いちばん大事だったところはここで、”何となく解っている正しいこと”を”ちゃんと理由を解って理解している”に変えることはとても重要だと思うのです

さて、ジンレモン。どうして美味しくないか分かりますか?
とても簡単な答えです。そしてお酒に詳しくなくても分かる理由です。


レモンの特性

生牡蠣にレモンを搾ります。
何故か? 生臭さを消すためです。

レモンの強い酸味は香を消すのですね。これはお酒の最も大事な要素をなくしてしまうことなのです。だからジンレモンを作るとレモンの香に支配されて、ジンの複雑で繊細な香がなくなってしまうから美味しくはならないのです。

レモン果汁の使い道のひとつは少量だけ、香ではなく、味としての酸味をアクセントに加えるレシピがカクテルにも多くみられます。多く使うと香において危険なのです。例えるなら紫外線のようなものでしょうか。

ただ、レモンの最も優れた特性は他にあります。
それは多量の糖質と混ざると素晴らしく美味しい味に変化するというところです。
(蜂蜜レモンを考えてもらうといいと思います。)


この特性を利用したカクテルのレシピは数多く存在します。

ジンフィス(ジン+レモン+砂糖+ソーダ)

ホワイトレディー(ジン+コアントロー+レモン)

マルガリータ(テキーラ+コアントロー+レモン)

XYZ(ラム+コアントロー+レモン)

バラライカ(ウオッカ+コアントロー+レモン)

サイドカー(ブランデー+コアントロー+レモン)

*コアントローはオレンジ果皮のリキュールでかなり甘口。このスピリッツ+コアントロー、レモンというレシピはカクテルにおいての黄金配合です。


その他、
ニコラシカ(ブランデー+レモンスライス+砂糖)

ウイスキーサワー(ウイスキー+レモン+砂糖)


この強く濃い甘さに対しては、スピリッツに万能であったライムでは太刀打ち出来ないのです。

太陽には太陽の、月には月の相応しい空があるということでしょうか。














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