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2012年9月18日火曜日

注文の仕方、あれこれ Ⅲ


その3 《 避けることをお勧めしたい、とあるカクテルのご注文 》

☆本題に入る前にカクテルのレゾンデートル(存在価値)について。

☆カクテルは2種類以上の材料を合わせて作る飲み物です。
式にすると、1 + 1 = 2  です。

☆例えば、ウオッカ + オレンジジュース = スクリュードライバー ですね。

☆もしかしたらこんな風に考えている人がいらっしゃるかも知れません。
カクテルは1 + 1 = 3 (2<) だ!! と。

☆つまり、あるものとあるものを合わせてとてつもなく美味しい飲み物にするという意味です。でもこの式が成り立ったのは遠い昔の話です。


☆カクテルが大きく発展したのはアメリカの禁酒法時代でした。粗悪な密造酒が横行していて、これを何とか美味しく飲むために色々なものを混ぜて工夫した結果、現在にも残るスタンダードなレシピがいくつも生まれたのです。この時代のカクテルならば確かに1+1=3にも4にもなったのでしょうが、現代のお酒や副材料はそれだけで素晴らしく完成度の高いものばかりなので、どんなに腕の立つバーテンダーが究極のカクテルを作ったところでおそらくは1+1=2.5くらいが限界のはずです。

☆ただ、どちらにせよ2種類以上の素材を合わせて出来上がったものが、それ以前の個々の素材より味が劣るのであればカクテルにする意味がない・・・ということです。まずこれがレゾンデートルのひとつです。・・・①


☆そしてもうひとつあります。それは注文するとき、それを飲もうとする理由が『そのカクテルのことを”美味しいと思っていなくても”飲みたい』ということがありえる、ということです。

☆例えば、ある人のことを思い出して、その人が大好きだったカクテル(”私”は好きではない)を飲むという場面もあるでしょうし、ブルームーンの夜に(カクテルの)ブルームーンを飲むことだってあるでしょう。絵描きを生業にしている人がゴッホに憧れて(*1)アブサン(パスティス)を飲むことだってあるかも知れません。

(*1)ゴッホはアブサンという薬草系のリキュールを愛飲していました。

☆このようにカクテルは味だけでなく、その名前や逸話などから飲み手が自分だけの物語を紡ぎ出して注文する事があるのです。これは他のお酒でも同じですが、ネーミングの多様性を考えればカクテルの方がその可能性は広がります。

☆カクテルを注文するときは味を無視して、物語性やシュチュエーションを重視する場合がある、これがレゾンデートルのふたつ目です。 ・・・②


☆さて、ようやく本題です。これまで『注文の仕方 Ⅰ、Ⅱ』として主にお酒に詳しくない人がBARで注文する方法などを書いてきましたが、今回は『お酒に詳しくない人が、美味しいカクテルを飲みたい場合(つまりカクテルの存在価値①を求めて②はまったく考慮しない場合)、注文しないほうが無難なカクテルの種類があるという話です。そしてこれは企業広告の関係上、市販されているどのカクテルブックにも載ってはいないでしょうし、仕事内容を狭めてしまうので現職の人間が口にすることも多分、ないと思います。

☆だたし、何分にも話は”味”という客観性のないものですから、ここでの話はあくまでも私の個人的意見であって、内容の整合性は保証できませんので悪しからずご了承ください。


☆『注文の仕方 Ⅰ、Ⅱ』でカクテルには色が重要なポイントであると書いてきました。つまり注文時に例えば「赤いカクテルを!」という感じで、色のリクエストをするのもアリ、です。

☆だたし!! 『青いカクテル』、これは避けた方が無難なのです。(存在価値②のケースで『青が大好き』とか『青でなければいけない理由』がある場合は別です。あくまで①の美味しさ追求だけの時です)

☆青いカクテル・・・色を青にするにはいくつかのリキュールがありますが、ここではスタンダード・カクテルについて、それも『ブルーキュラソー』というリキュールを使ったカクテルについてだけに限定しています。

☆有名なカクテルに『青い珊瑚礁』とか『ブルームーン』という名前に”青”が入ったものがありますが、カクテルを青くするために使われているのは『GET27』という緑色のペパーミント・リキュールと『パルフェタムール』という紫色した匂いスミレのリキュールです。


☆キュラソーというのは『オレンジの果皮』のリキュールの総称です。一般的なものは『ホワイト・キュラソー』といって薄く白濁した色をしています。いくつものメーカーから製造されていますが中でも『コアントロー』というホワイト・キュラソーが断トツに有名です。お菓子作りに使われている方もいらっしゃると思います。


☆そのホワイト・キュラソーのカラー版に『オレンジ・キュラソー』『ブルー・キュラソー』『レッド・キュラソー』などがあります。オレンジ・キュラソーは他のものとはまた一線を画した味と使い方をするので例外的な存在ですが、ブルー&レッドの両キュラソーは味や香りに全くの意味がなく、ただカクテルの色付けだけのために存在しています。(レッド・キュラソーを使う有名なカクテルはなく、とてもマイナーなので、この話題中は除外して考えます)


☆ブルー・キュラソーの青、それは『青色一号』の着色料の青です。ただし他のリキュールの多くにも着色料は使われているのでそれをここで問題視するわけではありませんが(*2)、このリキュールに関していえば味も含めて他に何も語るべき内容がないのです。ただ単に何かと混ぜて青く染めるためだけに存在するリキュール、それがブルー・キュラソーです。

(*2)リキュールの問題についてはここで少し触れています。
http://bartsukuyomi.blogspot.jp/2012/05/blog-post_20.html


☆ブルー・キュラソーとコアントローを水で割って飲み比べてみるとコアントローの方は香りがたつのに比べて、ブルー・キュラソーの方は殆んど何も発せず(元々そうですが)、酒としての能力の脆弱さが明らかです。そしてブルー・キュラソーを使うとカクテルのレゾンデートル①で立てた式、
1 + ブルー・キュラソー =2 には成り立たないような味になってしまいます。

☆仮にブルー・キュラソーを使って『1+1=2』のカクテルが成立したとします。でも必ずブルー・キュラソーを使ったレシピのカクテルと殆んど同じタイプのコアントローを使った、もしくはキュラソーを使わない、『青でない、より美味しいカクテル』が存在しています。それらふたつを飲み比べると味の優劣の違いは一目瞭然です。(ここが難しいところです。味にはそれぞれ好みがあるので断定はできませんが、多数の方に同意してもらえると『個人的、独断的偏見』として信じています)

☆例をあげましょう。

ブルー・マルガリータ × ⇔ マルガリータ ◎


ブルーレディー × ⇔ ホワイトレディー ◎


チャイナ・ブルー × ⇔ ディタ・スプモーニ ◎


スカイダイヴィング × ⇔ XYZ ◎


シャンパン・ブルース × ⇔ シャンパン・カクテル △ ⇔ シャンパン ◎
(ちょっとこれは強引かもしれませんが、キュラソーで甘味をつける代わりに砂糖を使うということで・・・)


☆レシピはあえて書きません。ブルーキュラソーをコアントローに代える、もしくは使わないだけでレシピがそっくりであるのは味とは違い客観的事実ですから。(興味のある方は調べてください・・・手抜きか?(笑))

☆長くなりましたがまとめましょう。そのカクテルの名前や青色に意味を求めない時、ブルー・キュラソーを使って作るスタンダード・カクテルには、別にほぼ同じレシピの”青くない”、より美味しいカクテルが存在するので、青いカクテルは注文しない方が無難です・・・・と私は『個人的に』考えています。


☆念を押しておきますが、もし何処かのBARで『お任せ注文』をしたとき、ブルーキュラソーを使った青いカクテル(*3)が出されたからといって、「不味いカクテルを出された!!」って訳ではありませんよ。そのカクテルをバーテンダーが選んだ理由はレゾンデートル②もあるはずですから。それにもしかしたら『ブルー・キュラソー不味い説』は世界中で私だけかもしれませんからね。(笑)

(*3)ブルー・キュラソー以外に新興リキュールで青色をしたお酒は幾つかあります。ここではそれらの青色リキュールの味については述べてはいません。

☆最後に、月読でももちろんブルー・キュラソーを使ったカクテルのご注文を頂くことがあります。そんなときはできる限り『青い味』がしないように工夫して作ります。例えばチャイナ・ブルーなら全体に青を混ぜずに、底にブルーキュラソーを沈めてテキーラ・サンライズ(カクテル)のグレナデン・シロップのように。こうすれば半分以上は『ディタ・スプモーニ』の味で、色は青を楽しめます。まあ、賛否両論あるでしょうが・・・


☆今回は長さもさることながら、かなりマニアックな内容になってしまいました。お付き合い、ありがとうございます。この内容が正しいかどうかは別として、カクテルやお酒の世界の普段とは違う角度からの楽しみ方に興味を持っていただければ幸いです。




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